妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!

安奈

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26話 絶縁のお話 その2

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「でぃ、ディエス様……今、なんと?」


 突然のディエス様の発言に、お父様は聞き返していた。おそらく、考えが追い付いていないのね。お父様の顔はおおよそ、皆が想像するであろう伯爵という立場の人のそれではなかった。なんとも情けない雰囲気を醸し出している……。

 妹のジニーも似たような表情になっているわね……。


「言葉の通りだ。国王陛下からの許可は既に頂いているが、シンディ殿は私と婚約を結ぶに当たり、エトワール家とは断絶という形を取らせてもらう。彼女の面倒は、今後はマローネ家が責任を持って見るので、安心してくれ」


 有無を言わさないディエス様からの答え……国王陛下からの許可状まで見せながら、お父様やジニーに反論の余地を与えていなかった。傍らに立つ私とライラは静かに事の成り行きを見守る。


「いくらディエス様とはいえ、そのような振る舞いは……」

「貴殿らのシンディ殿への態度が招いた結果だろう? エトワール伯爵とジニー殿は、彼女に行った振る舞いをもう一度最初から見つめ直すんだな」


 ディエス様は静かに言っているけれど、表情的にはとても怒っている印象があった。私にしか分からない変化かもしれないけれど……。


「あの、ディエス様……」

「なにかな? ジニー殿?」


 そんな時、お父様の隣に立っていたジニーがディエス様に話しかけた。

「私が姉さまにしたことについては、謝ります……謝罪をいたします」

「……」


 心が籠っているのか不明な適当な言葉と言えるのか……まさか、ジニーがこの場で「謝罪」なんて言葉を使ってくるなんてね……。何が狙いなのかしら?


「謝罪か……ふむ、それで?」

「そこでお願いがあるんです……私も、マローネ家に行かせてください! もう、こんな家、嫌なんです……! お父様やお母様は私のことを商品としか見ていないし、このままでは私、フリント様と別れた挙句、他国に売り飛ばされてしまうんです……! どこの馬の骨とも分からない、最低貴族と縁談が成立しちゃうかも……」


「最低貴族……君がそれを言うか……」


「ジニー、貴様、親に向かってなんという口の利き方だ!」

「だって、本当のことじゃない!!」


 完璧に被害者目線のジニーだけれど、あなた完全な加害者だから。それを忘れるんじゃないわよ? 謝罪もまだしてないし……。まさか、ここに来てジニーがマローネ家に行きたいなんて言うとはね……ジニーが泣いてた時は、一瞬は可哀想なんて考えてしまったけれど……前言撤回ね。


「本当に面白く、面倒な家族だな」

「否定できません……」


 ディエス様と私の視線が交錯する。ディエス様の表情は「受け入れるわけはない」という強い意志が働いているようだった。
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