25 / 42
25話 絶縁のお話 その1
しおりを挟む
「こ、国王陛下の許可を……?」
「ああ、その通りだ。元々、シンディ殿は私の婚約者として家は出ることになるのだから、問題はないだろう?」
「それは、確かにそうですね……」
そっか、絶縁か……。いきなりのことで思考が追い付かなかったけれど、普通に考えれば、それが最も普通の対処方法なのよね。ディエス様すごいわ……。しかし、私はライラのことが心配になってしまった。もしも、私が家を完全に離れるのだとしたら、彼女の立場が心配になってしまう……。
「あの、ディエス様……ライラのことなんですが……」
「ああ、心配はいらない。彼女が望むのであれば、私の屋敷の使用人として迎え入れよう。二人は幼馴染と聞いているので、シンディ殿としても安心するだろう?」
「ディエス様……! ありがとうございます!」
自然にライラのことを気遣えるディエス様に、私は感嘆の涙を流していた。この人、本当に凄い……。隣に立っているライラも同じ気持ちなのか、口元に両手を当てて驚いているようだった。
「よろしいのですか? ディエス・マローネ様……私などをお招きいただいても……」
「こちらとしては、ちょうど何人かの使用人が欲しいと思っていたところだしな」
「ライラ、来てくれる?」
「はい、もちろんでございます!」
ライラは両目に大粒の涙を見せながら、私に笑顔で返してくれた。私も嬉しさの余り、貰い泣きをしてしまう……いえ、もう既に泣いていたけれどね……。私とライラは玄関先で固く抱き合った。
「話しは決まったようだな。詳細については、後程、ゆっくりと話すとして……」
ディエス様は話が上手く纏まったことは喜びながらも、その表情は真剣そのものだった。理由はなんとなく想像できるけど……。
ディエス様の訪問に気付いたお父様と妹のジニーが現れた。奥の方には意気消沈しているお母様の姿もあったけれど……。ディエス様の姿を見たお父様の表情が劇的に変化する。
「こ、これはディエス様……! 申し訳ありません、玄関先までご足労を……!」
「あ、ええと……ディエス様、こんにちわ……です……」
お父様の言葉に続けるように、ジニーも固い挨拶をしていた。お父様の両手の揉み手は相変わらずだけれど、ジニーはディエス様をどう思っているのかしら? 態度だけを見ると、フリント様との婚約を台無しにした仇……とまではいかないようね。
ジニーの中でもフリント様への熱が冷めてるってことかしら?
「ディエス様、本日のご用件はどういったことでしょうか? 我が愛娘、シンディのことですかな?」
「ええ……シンディ殿に関することではあります。それから、本日はエトワールは伯爵に、お伝えしなければならないことがあります」
「なんでございますか?」
揉み手をさらに強めたお父様は、とても期待している様子だ。でも、ディエス様からの言葉はそんな期待できる内容でないことは、私やライラは分かっていた。冷静に事の顛末を見守る……。
「シンディ殿との婚約をさせていただけること、心より御礼申し上げます。しかし、伯爵達の下ではシンディ殿は平穏が手に入れられないのも事実。我がマローネ家でお引き取りをさせていただきます」
「……? ディエス様……それはつまり……?」
「はい、絶縁、ということになりますな」
冷徹なディエス様の宣言が、玄関口で響いた瞬間だった……。
「ああ、その通りだ。元々、シンディ殿は私の婚約者として家は出ることになるのだから、問題はないだろう?」
「それは、確かにそうですね……」
そっか、絶縁か……。いきなりのことで思考が追い付かなかったけれど、普通に考えれば、それが最も普通の対処方法なのよね。ディエス様すごいわ……。しかし、私はライラのことが心配になってしまった。もしも、私が家を完全に離れるのだとしたら、彼女の立場が心配になってしまう……。
「あの、ディエス様……ライラのことなんですが……」
「ああ、心配はいらない。彼女が望むのであれば、私の屋敷の使用人として迎え入れよう。二人は幼馴染と聞いているので、シンディ殿としても安心するだろう?」
「ディエス様……! ありがとうございます!」
自然にライラのことを気遣えるディエス様に、私は感嘆の涙を流していた。この人、本当に凄い……。隣に立っているライラも同じ気持ちなのか、口元に両手を当てて驚いているようだった。
「よろしいのですか? ディエス・マローネ様……私などをお招きいただいても……」
「こちらとしては、ちょうど何人かの使用人が欲しいと思っていたところだしな」
「ライラ、来てくれる?」
「はい、もちろんでございます!」
ライラは両目に大粒の涙を見せながら、私に笑顔で返してくれた。私も嬉しさの余り、貰い泣きをしてしまう……いえ、もう既に泣いていたけれどね……。私とライラは玄関先で固く抱き合った。
「話しは決まったようだな。詳細については、後程、ゆっくりと話すとして……」
ディエス様は話が上手く纏まったことは喜びながらも、その表情は真剣そのものだった。理由はなんとなく想像できるけど……。
ディエス様の訪問に気付いたお父様と妹のジニーが現れた。奥の方には意気消沈しているお母様の姿もあったけれど……。ディエス様の姿を見たお父様の表情が劇的に変化する。
「こ、これはディエス様……! 申し訳ありません、玄関先までご足労を……!」
「あ、ええと……ディエス様、こんにちわ……です……」
お父様の言葉に続けるように、ジニーも固い挨拶をしていた。お父様の両手の揉み手は相変わらずだけれど、ジニーはディエス様をどう思っているのかしら? 態度だけを見ると、フリント様との婚約を台無しにした仇……とまではいかないようね。
ジニーの中でもフリント様への熱が冷めてるってことかしら?
「ディエス様、本日のご用件はどういったことでしょうか? 我が愛娘、シンディのことですかな?」
「ええ……シンディ殿に関することではあります。それから、本日はエトワールは伯爵に、お伝えしなければならないことがあります」
「なんでございますか?」
揉み手をさらに強めたお父様は、とても期待している様子だ。でも、ディエス様からの言葉はそんな期待できる内容でないことは、私やライラは分かっていた。冷静に事の顛末を見守る……。
「シンディ殿との婚約をさせていただけること、心より御礼申し上げます。しかし、伯爵達の下ではシンディ殿は平穏が手に入れられないのも事実。我がマローネ家でお引き取りをさせていただきます」
「……? ディエス様……それはつまり……?」
「はい、絶縁、ということになりますな」
冷徹なディエス様の宣言が、玄関口で響いた瞬間だった……。
2
お気に入りに追加
3,590
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!

妹に婚約者まで奪われました!~彼の本性を知って、なんとかしてと泣きつかれましたが、私は王子殿下と婚約中なので知りません~
ルイス
恋愛
伯爵令嬢のシャルナは、妹のメープルに婚約者である公爵を奪われてしまう。
妹は昔から甘やかされて育ち、その外見の良さと甘え上手な態度から守ってあげたくなるのだ。
シャルナの両親もメープルには甘く、彼女はずっと煮え湯を飲まされていた。
今回は婚約破棄までされ、とうとう彼女も我慢の限界を超えるが、その時に助けてくれたのが王子殿下だった。
シャルナは王子殿下と婚約を果たし、幸せな生活の一歩を踏み出すことになる。
対して妹のメープルは、婚約した公爵の欠点や本性が見え始め、婚約を取り消したいと泣きついてくるのだが……いまさらそんなこと言われても、遅すぎる。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる