妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!

安奈

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24話 エトワール家の者達 その5

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「まったく、お前はエトワール家の面汚しだ……! フリント・アラベスクみたいな軟派な男に引っかかりおって!」

「そんな……! お父様だって、フリント様との婚約は喜んでいらしてたじゃないですかっ!」


 私室を出た私とライラは、廊下を足早に歩いていたのだけれど……聞き覚えのある怒号が室内から飛んでいるのが聞こえた。この部屋は、ジニーの私室ね……どうやらお父様と口論になっているみたい。


「シンディ様……」

「うん……」


 私はしたくはなかったけれど、ジニーの部屋から漏れて来る口論の内容に聞き耳を立てる。


「お前がフリントなんぞと婚約しなければ……! 今まで可愛がってやったのに、本当に親不孝者だ、お前は!」

「お父様……! 酷い、酷過ぎます……! うわぁぁぁぁぁ……!」


 どうやらジニーは泣き崩れてしまったようね……。


 他の貴族たちにとっては良い晒しものを見たような舞踏会……ジニーは意気揚々と主催したんでしょうけど、それが本当に仇になった感じね。でも、あれでは流石にジニーが可哀想だわ……。


「シンディ様……ジニー様を助けるのですか?」

「いいえ、そんなことはしないわ。これはジニーの問題……私が口を挟む事柄ではないし」



 私はジニーにされたことを思い返し、彼女の私室に入るのを踏みとどまった。そう、お父様もそうだけれど、ジニーだってとても酷いことをしていたんだから……。


「あの、シンディ様……よろしいでしょうか?」

「なにかしら?」


 ライラとは違う使用人の一人が私に声を掛けて来た。少し慌てている様子だ。多分、ジニーとお父様との口論が聞こえているからでしょうね。


「あの……ディエス・マローネ様がお越しでございますが……如何いたしましょうか?」


 使用人の言葉を聞いた時、私は無意識の内に心が明るくなった。お母様を振り切って、ジニーとお父様との醜い口論を聞いた後でのディエス様なのだから当然なんだけど。



------------------------------------



「シンディ殿、急に押しかけてしまって済まない」

「ディエス様、とんでもないことでございます」


 私は訪ねてくれたディエス様に出来る限りの笑顔で返した。


「本日は如何なされましたか……?」

「ああ、そのことなんだがな」

「……?」


 ディエス様はなんだか言いにくそうな表情をしている。まさか、婚約破棄をする、なんて言わないわよね? 私はあり得ない想像を膨らませていたけれど……。


「君を正式にマローネ家に迎え入れる。今後のことを考えれば、エトワール家とは完全に関係を断つのが賢明だろう。既に陛下にも話しは通している」

「!!」


 ディエス様から出て来た言葉は、ある意味では婚約破棄よりも衝撃的な言葉だった。もちろん嬉しいことではあるけれど、ディエス様行動力あり過ぎ……。
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