妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!

安奈

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18話 フリント様は終わりです その1

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「フリント様! 先ほどの婚約発表は嘘だったんですか!?」

「身体の関係になれなかったからって、シンディ殿との婚約を破棄するなんて……!」



 先ほどまでは私と、ディエス様の婚約発表でざわついていた会場。今は、フリント様への敵意の視線で埋め尽くされていた。視線だけでなく、怒号も飛び交ってるんだけれどね……。


「ち、違う……誤解だ……! 確かに、性格の不一致はあったが……私とシンディとの婚約解消はそんな下賤な理由ではない……」


「さっきのディエス様のご報告と随分、違うわ……」


 周囲の貴族達は戸惑いを見せている。そりゃあ、そうよね……彼らの中には、正確な目撃者なんて居ないんだから。みんな疑心暗鬼になり始めているわ。


「シンディ殿……後は、君の仕事だ」

「はい、ディエス様」


 慌てふためきながら、必死で弁明をしているフリント様……私は歩いて行き、その隣へと立つことにした。


「お久しぶりですね、フリント様」

「や、やあ……シンディ……元気そうで何よりだ……!」


 顔は引きつっているけれど、口調は優しくなっている。でも、そんなんじゃ誤魔化されないけれどね……。

 私は深呼吸をして、ゆっくりと真実を話していく……。


「私はフリント様に婚約破棄を言い渡されました。理由としては彼の浮気……」


 内容的には、ディエス様とそう変わらないものになったけれど、私は出来るだけ悲劇のヒロインを演じてみせた。フリント様の浮気で始まり、身体を許さない上にお堅いだの言われたことも付け加え、なるべく隣の彼に後悔を与える為に……。

 そういえば、ジニーはフリント様に身体を許したと聞いていたけれど……やめてよね、ほんとにあの子は……。


「し、シンディ……お前……!」


「きゃ、きゃああ……! フリント様、お止めください……!」


 フリント様は逆上したのか、私の腕を激しく掴んで来た。最早、言い逃れはできないと悟り、私を攻撃対象にしたんだろうけど……。そんな彼の腕を、ディエス様がさらに上から掴んでいた。

「フリント・アラベスク……私の大切な婚約者に何をするんだ?」

「でぃ、ディエス……お前も……!」


 相手が格上の人物だということを忘れているのか、フリント様の口調はより強くなっている。


「言葉遣いに関しては感情が高ぶったからだということにしておこう。しかし、今回の一件が許されるはずはない。近々、アラベスク家へ訪問させていただき、しかるべき処罰の検討に入るとするか」

「う、ううう……!!」


 ジニーは完全に逆らう気力がなくなっているのか、いつの間にか部屋の片隅に行っていた。フリント様もその場で力なく座り込んでしまった。それからすぐに、私のお父様やお母様、護衛の執事たちが現れた。


 ……これはもう、フリント様個人の問題だけでなく、アラベスク家全体へと波及していくでしょうね。もう少し、謙虚な振る舞いをしていれば、違っていたんでしょうけど……フリント様、ご愁傷様。
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