妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!

安奈

文字の大きさ
上 下
9 / 42

9話 婚約破棄と婚約発表 その3

しおりを挟む
 時間は経つのが早いのか遅いのか、本当にわからない……気付けば、エトワール家の本邸で行われるパーティの当日になっていた。私は王国の南東に位置しているエトワールの領地、サンナバール地方に戻ってきていた。幼馴染メイドのライラを連れて……。


 ディエス様とは流石に同じ馬車では向かっていない。日程なども合わせられないし、現地での合流と非常にアバウトな約束をしたっきりだ。妹のジニーが催すパーティ……その面子がどういう人たちなのかは、非常に気になるところではあった。

 馬車の隣に座っているライラも、とても心配した様子で私を見てくれているし……婚約破棄と婚約発表がメインだろうから、私の不利になるような人選で来るんじゃないかしら……。

 まあ、フリント様が来るのは当然として……軽く思い出すだけでも、私と仲の良くない令嬢は数人はいる。まさか、全員来たりしないわよね? そうなったら、精神を保てる気がしないんだけど……。


「シンディ様、お気持ちはお察しいたしますが、まずは落ち着かれた方がよろしいかと思います」


 私の顔色に気づいたライラが優しく声を掛けてくれた。その声はとても心配してくれているのだと、一目でわかるほどだ。


「わ、わかってるけどさ……すーはーすーはー……」

「そうですそうです。深呼吸は身体を落ち着けるには最適でございますから……」


 私は何度か深呼吸をして、意外にも落ち着くことができた。ライラには感謝しないといけないわね、ジニーの時にも助けてくれたんだし。


「シンディ様にはディエス・マローネ公爵令息様がいらっしゃるのですから……大船に乗ったお気持ちで臨まれるのが、よろしいかと存じます」

「まあ、確かにそうかもしれないけどさ……」


 確かに、ディエス様の存在は私にとっても心の拠り所みたいなものかもしれない。でもあの方だけに頼ったりするのは申し訳ないという気持ちも強かった。それに……合流地点やタイミングもかなりアバウトなものだったし……。


 だから、自分でできることは自分でやって、可能な限りジニーに抗ってやろうとは考えていた。少なくとも、ジニーだけが得をする婚約発表なんかにさせるつもりはないわ! できれば私の婚約破棄の暴露も阻止してやりたいけれど、それは私一人では難しいかもしれないわね……。


------------------------------------------------------------------



「……いよいよですね、シンディ様……なるべく、落ち着いてまいりましょう」

「ええ、そうね、ライラ」


 程なくして、私たちはエトワール家の本邸へと入った。当たり前かもしれないけれど、庭や建物の大きさは、別邸とは比べ物にならない。まあ、あっちはあくまでも宮殿へすぐに向かう為の仮住まいでしかないわけだし……。私とライラを出迎えてくれたのは……本邸の使用人や、ましてやジニー本人ではなく……お父様とお母さまだった。


 ギルデ・エトワール伯爵とマイラ・エトワール伯爵夫人……紛れもなく、私の両親なんだけれど、私の気持ちとしては感動的なものとはいかなかった。だって二人の表情は、どこかジニーを連想させるものだったから……。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

妹に婚約者まで奪われました!~彼の本性を知って、なんとかしてと泣きつかれましたが、私は王子殿下と婚約中なので知りません~

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のシャルナは、妹のメープルに婚約者である公爵を奪われてしまう。 妹は昔から甘やかされて育ち、その外見の良さと甘え上手な態度から守ってあげたくなるのだ。 シャルナの両親もメープルには甘く、彼女はずっと煮え湯を飲まされていた。 今回は婚約破棄までされ、とうとう彼女も我慢の限界を超えるが、その時に助けてくれたのが王子殿下だった。 シャルナは王子殿下と婚約を果たし、幸せな生活の一歩を踏み出すことになる。 対して妹のメープルは、婚約した公爵の欠点や本性が見え始め、婚約を取り消したいと泣きついてくるのだが……いまさらそんなこと言われても、遅すぎる。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

処理中です...