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5話 ジニー・エトワール その1
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ディエス様にペントハウスに送ってもらって3日が経過していた。私は私室でのんびりとしている。
「シンディ様……体調は大丈夫でございますか?」
使用人の一人であるライラから言われた言葉……昔から私に仕えてくれている忍者みたいな存在だけれど、私の心境には誰よりも敏感だった。そんな彼女が私の顔色を伺いながら話していた。
「フリント侯爵令息からの不当な婚約破棄……シンディ様が黙っていらっしゃる事態ではないかと思われますが。それ相応の訴えを起こすべきかと……」
「そ、それはそうかもしれないけれど……」
ディエス様の助けがあり、フリント様に一泡吹かせた形はなんとか取れたのだと思う。でも、アラベスク家に喧嘩を売るような真似はしたくないとは考えている。なぜなら、妹のジニーの件もあるのだし……。
「ジニーの件もあるし……なかなか難しいところね……」
「シンディ様の心中はお察し致します……」
ライラは多分、私の考えをかなり分かってくれていると思う。昔馴染みだし、以前から私が口にする前に必要な物を用意してくれたりしていたから。もしかしたら、今回も……?
「姉さまはいらっしゃるの?」
「……! あの声は……」
そんな時、廊下から聞こえて来る女性の声……その声は間違いなく、妹のジニーのものだった。そして、間もなくして私の部屋へと彼女は入って来た。……本邸に居るはずなのに、どうしてここに……? 自然と私の表情はキツイものに変わっていく。
「あら、姉さま。やはりいらっしゃいましたのね」
「ジニー……」
私のキツクなった表情にも、ジニーはしっかりと気付いている。それでいて、勝ち誇ったような顔を彼女は見せていた。わざわざここに来た目的は聞かなくても想像できるわね……。ジニーは不敵な笑みを浮かべながら、話し出した。
「姉さま……先日、婚約破棄されたと伺いましたよ。心中お察しいたします」
そう言いながら、ジニーはロングスカートの裾を持ち上げながら、深々と頭を下げだした。とても憎たらしい……。「心中お察しします」という言葉の深みがライラとは桁違いだし……。ほんの、3日前に起こった婚約破棄についても、全て知っているような表情だ。
やっぱり、フリント様との浮気は真実のようね……私は彼女にどう接したらいいのか迷っていた。
「そうね、非常に残念だわ……あの、フリント様が浮気なんてする卑劣漢だとは思わなかったし」
出来るだけ、フリント様を蔑んだ言葉遣いでジニーに話してみる。彼女は特に気にしている様子はない。失敗だったか……。
「ふふふ、フリント様に振られたからって随分な言い草ですね、姉さま? やっぱり、負け犬令嬢はそんなことしか言えないのかしら……」
「ジニー、あなた……」
昔からジニーとの仲は良かったとは言えないけれど、流石に聞き捨てならない言葉が飛んで来たことは見過ごせない。私は座っていた椅子から立ち上がり、真っすぐに彼女を見据えていた。
「シンディ様……体調は大丈夫でございますか?」
使用人の一人であるライラから言われた言葉……昔から私に仕えてくれている忍者みたいな存在だけれど、私の心境には誰よりも敏感だった。そんな彼女が私の顔色を伺いながら話していた。
「フリント侯爵令息からの不当な婚約破棄……シンディ様が黙っていらっしゃる事態ではないかと思われますが。それ相応の訴えを起こすべきかと……」
「そ、それはそうかもしれないけれど……」
ディエス様の助けがあり、フリント様に一泡吹かせた形はなんとか取れたのだと思う。でも、アラベスク家に喧嘩を売るような真似はしたくないとは考えている。なぜなら、妹のジニーの件もあるのだし……。
「ジニーの件もあるし……なかなか難しいところね……」
「シンディ様の心中はお察し致します……」
ライラは多分、私の考えをかなり分かってくれていると思う。昔馴染みだし、以前から私が口にする前に必要な物を用意してくれたりしていたから。もしかしたら、今回も……?
「姉さまはいらっしゃるの?」
「……! あの声は……」
そんな時、廊下から聞こえて来る女性の声……その声は間違いなく、妹のジニーのものだった。そして、間もなくして私の部屋へと彼女は入って来た。……本邸に居るはずなのに、どうしてここに……? 自然と私の表情はキツイものに変わっていく。
「あら、姉さま。やはりいらっしゃいましたのね」
「ジニー……」
私のキツクなった表情にも、ジニーはしっかりと気付いている。それでいて、勝ち誇ったような顔を彼女は見せていた。わざわざここに来た目的は聞かなくても想像できるわね……。ジニーは不敵な笑みを浮かべながら、話し出した。
「姉さま……先日、婚約破棄されたと伺いましたよ。心中お察しいたします」
そう言いながら、ジニーはロングスカートの裾を持ち上げながら、深々と頭を下げだした。とても憎たらしい……。「心中お察しします」という言葉の深みがライラとは桁違いだし……。ほんの、3日前に起こった婚約破棄についても、全て知っているような表情だ。
やっぱり、フリント様との浮気は真実のようね……私は彼女にどう接したらいいのか迷っていた。
「そうね、非常に残念だわ……あの、フリント様が浮気なんてする卑劣漢だとは思わなかったし」
出来るだけ、フリント様を蔑んだ言葉遣いでジニーに話してみる。彼女は特に気にしている様子はない。失敗だったか……。
「ふふふ、フリント様に振られたからって随分な言い草ですね、姉さま? やっぱり、負け犬令嬢はそんなことしか言えないのかしら……」
「ジニー、あなた……」
昔からジニーとの仲は良かったとは言えないけれど、流石に聞き捨てならない言葉が飛んで来たことは見過ごせない。私は座っていた椅子から立ち上がり、真っすぐに彼女を見据えていた。
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