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3話 シンディの婚約破棄 その3

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 私はフリント様の睨みを怖がりながらも、はっきりとした口調でディエス様にお伝えした。だって、普通に考えれば100%向こうが悪いんだし……いくら伯爵令嬢で位がフリント様より下とは言っても、このまま泣き寝入りなんてしたくなかったから。

 それに加えて、公爵令息のでディエス様が味方になってくれていることが、私の背中を強く押してくれていた。


「お、おい……! シンディ……お前……!」

「なんでしょうか、フリント様? ディエス様に嘘を付くのは、それだけで不敬罪レベルかと存じますが……」

「くっ……!」


 正直、今後のフリント様からの復讐が怖かったけれど、私は行きつくところまで行こうという覚悟で言い放った。だって、彼は身勝手すぎる理由で私の気持ちを裏切ったんだから。確かに、現在まで身体の関係はなかったけれど、時がくればそういう関係になっても良いと本気で思っていたんだし。

 そういう意味では、早めにフリント様の本性が分かって良かったかもね。17年間の人生だけど、初めての相手はやっぱり生涯を共にする人が良いとは思ってたし……。


「勇気をもって良く言ってくれたシンディ殿。礼を言うぞ」

「いえ……お礼だなんて……勿体ないお言葉です」

 びっくりするくらい優しいディエス様の言葉……その口調に思わず恐縮してしまう。自然と赤面していた自分が居るけれどきっと気のせいよね……?


「……ディエス様、何かをされるおつもりですか? いくら公爵家の方とはいえ……職権乱用は議会が黙っていないと思いますよ?」


 強気なフリント様からの言葉……なんだか、先ほどまでの態度とは一変しているような……。ある意味、開き直っていると言えそうな、そんな態度だった。

「職権乱用か……まあ、確かに。私としては貴殿に罰を与える立場にはないな。そんなことは、微塵も考えてはいないよ」

「で、でしょうね……そんなことをすれば、由緒あるマローネ家にとっても不味いことでしょうし……」

 開き直ったフリント様だけれど、終始押されているように感じるのは多分気のせいじゃないわよね? 彼は多分、ディエス様がどのように動くのかを考えているはず。

「ただし、このまま全てが上手くいくとは思わないことだ、フリント殿。世の中には、因果応報、自業自得という言葉もあるくらいだからな……」

「……!」

 ディエス様からの静かな圧力と表現すれば伝わりやすいかしら……? フリント様はその後、一切反論することが出来なくなっていた。その後、フリント様は終始無言の状態で私とディエス様の元から去って行った……。
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