妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!

安奈

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1話 シンディの婚約破棄 その1

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「どうしても……お気持ちは変わらないのですか?」

「ああ。俺はお前の妹、ジニーが好きだ」


 フリント様にそう言われた時、私は思わず倒れそうになってしまった。フリント・アラベスク侯爵令息……私の婚約者であるお方。まさか、彼から妹が好きだという言葉が出て来ることになるなんて……。

「そんな……」

「シンディ、お前は真面目過ぎるのが欠点だった。俺の隣にはふさわしくない」

「ふ、フリント様……」

「シンディ・エトワール……済まないが、俺との婚約はなかったことにしてもらおう。なに、心配するな……ジニーとは婚約するのだから、我がアラベスク家とエトワール家との関係性が強化されることに違いはないさ」


「……!」


 フリント様は政略的な意味合いでの繋がりは保持されると言っている。違う……私はフリント様を信じていたのに、妹のジニーとの方に行ってしまうなんて……それが信じられなかった。悲しみで言葉が上手く出て来ない……。


「ジニーはお前よりも、はるかに性に関して身軽だったぞ? それに引き換えお前は……」


 フリント様は臆面もなくいやらしい言葉を話している。ジニーとはもう、そんな関係になったと言うの? これでは……彼は、完全に浮気をしていた……? そんな……水面下ではそんなに進んでいたなんて。ジニーのほくそ笑んでいる顔が、私の中で思い浮かんでいた。

 ここはモナド王国の都、ストフェスにある貴族街の一画……こんな話を誰かに聞かれたら、アラベスクの家系に傷がついてしまいそうだけれど……フリント様は全く気にしている様子はない。

「身体を許さないお前は少し疎ましかった。これでせいせいするよ、はははははっ!」

「フリント様……そんな……。こんなことって……」


 フリント様は勝ち誇ったように笑っている。エトワール家よりも位の高い侯爵家に属するアラベスク家……私から直接なにかをすることは難しいと思う。彼は妹と婚約をすると言っているのだから、エトワール全体としては、そこまで大きな問題はない。

 ジニーはきっと両手を上げて喜んでいるはず……あの子の勝ち誇った表情も、私の中では容易に連想できていた。


「……あまり、穏やかな話ではないようだな」


 そんな時だった。私とフリント様の傍に、一人の男性が現れたのは。私は自然とそちらの方向に目をやっていた。

「あ、あなた様は……!」


 私はその場に居た人物を見て驚いた。フリント様も驚いている。私達の前に現れた人物は……モナド王国の公爵令息、ディエス・マローネ様だったから……。非常に地位の高い大貴族の出現に私もフリント様も言葉を失っていた。
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