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41話 レディアとマルクス その5
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「怪しい関係か……」
「ええ、そうね。マリアンヌとそちらの側室であるマリア……まさかとは思うけど」
不味い……私とマリアンヌ様が怪しい関係にあることを、完全にレディア様は見抜いている様子だ。それに輪を掛けるように、マルクス様が乗ってくる……。
「ほほう、兄上……これは聞き捨てならんことのようだな?」
マルクス大公は、あわよくば国王の座を自分に譲ってもらう腹積もりのようね……というより、表情に既に出ているし。私でなくてもすぐに分かるくらいに……。
「まあ、こちらにいるマリアは色々と家族から酷い仕打ちに遭っていてな。まあ、マリアンヌとは本当の姉妹のように仲が良いのだよ」
「姉妹のように……?」
「ああ、そういうことだ。それに関して、何か問題があるのかな?」
今度はヨハン様からの攻勢だった。レディア様とマルクス大公に、有無を言わせない発言と視線を送っていた。二人とも、その迫力に一瞬、たじろいでしまう。
「失礼いたしますわ」
「……!」
「マリアンヌ様……!」
そんな時、新たな助け船とばかりに、マリアンヌ様がお越しになった。その背後には父親であるラウド大臣の姿もある。
「レディア様、マルクス大公……ごきげんよう。こうして会えることに、感謝したい気分でございます」
マリアンヌ様は、ロングスカートの裾を軽く持ち上げ、儀礼的な挨拶を二人にした。口調は明らかに棒読みというか……適当さが滲み出ているけれど。レディア様とマルクス大公にも、それは伝わっているでしょうね。
「レディア様、マルクス大公……お元気そうで何よりでございます」
「ラウド大臣か……其方もな」
マルクス大公が、ラウド大臣にそう返した。なんとなくこの時点で、この方々の序列が分かった気がする。ヨハン様がトップなのは普通として、その下にレディア様とマルクス大公、それからラウド大臣で最後にマリアンヌ様といったところね。
本来なら正妃と大臣では、正妃の方が上の気がするけれど、この二人は親子だし。そして……この方々は、大きな枠組みで言うと家族、親族になるわけだけれど……なんというか、あんまり仲が良くないわね……。まあ、マリアンヌ様から聞いてはいたけれど。
「本人が来たのだし、兄さまよりも本人の口から聞きましょうか。マリアンヌ?」
「はい、なんでしょうか?」
「あなた……側室のマリアとはどういう関係なの?」
「マリアとの関係……でございますか?」
「ええ、そうよ」
直球なレディア様からの質問に、マリアンヌ様は少々戸惑っている様子だった。彼女がどう答えるのか……その答えによって、この場の雰囲気は大きく変化するだろうと予見出来る……私は、神様に祈るように心の中で叫び続けていた。
どうか上手くいきますように、と……。
「ええ、そうね。マリアンヌとそちらの側室であるマリア……まさかとは思うけど」
不味い……私とマリアンヌ様が怪しい関係にあることを、完全にレディア様は見抜いている様子だ。それに輪を掛けるように、マルクス様が乗ってくる……。
「ほほう、兄上……これは聞き捨てならんことのようだな?」
マルクス大公は、あわよくば国王の座を自分に譲ってもらう腹積もりのようね……というより、表情に既に出ているし。私でなくてもすぐに分かるくらいに……。
「まあ、こちらにいるマリアは色々と家族から酷い仕打ちに遭っていてな。まあ、マリアンヌとは本当の姉妹のように仲が良いのだよ」
「姉妹のように……?」
「ああ、そういうことだ。それに関して、何か問題があるのかな?」
今度はヨハン様からの攻勢だった。レディア様とマルクス大公に、有無を言わせない発言と視線を送っていた。二人とも、その迫力に一瞬、たじろいでしまう。
「失礼いたしますわ」
「……!」
「マリアンヌ様……!」
そんな時、新たな助け船とばかりに、マリアンヌ様がお越しになった。その背後には父親であるラウド大臣の姿もある。
「レディア様、マルクス大公……ごきげんよう。こうして会えることに、感謝したい気分でございます」
マリアンヌ様は、ロングスカートの裾を軽く持ち上げ、儀礼的な挨拶を二人にした。口調は明らかに棒読みというか……適当さが滲み出ているけれど。レディア様とマルクス大公にも、それは伝わっているでしょうね。
「レディア様、マルクス大公……お元気そうで何よりでございます」
「ラウド大臣か……其方もな」
マルクス大公が、ラウド大臣にそう返した。なんとなくこの時点で、この方々の序列が分かった気がする。ヨハン様がトップなのは普通として、その下にレディア様とマルクス大公、それからラウド大臣で最後にマリアンヌ様といったところね。
本来なら正妃と大臣では、正妃の方が上の気がするけれど、この二人は親子だし。そして……この方々は、大きな枠組みで言うと家族、親族になるわけだけれど……なんというか、あんまり仲が良くないわね……。まあ、マリアンヌ様から聞いてはいたけれど。
「本人が来たのだし、兄さまよりも本人の口から聞きましょうか。マリアンヌ?」
「はい、なんでしょうか?」
「あなた……側室のマリアとはどういう関係なの?」
「マリアとの関係……でございますか?」
「ええ、そうよ」
直球なレディア様からの質問に、マリアンヌ様は少々戸惑っている様子だった。彼女がどう答えるのか……その答えによって、この場の雰囲気は大きく変化するだろうと予見出来る……私は、神様に祈るように心の中で叫び続けていた。
どうか上手くいきますように、と……。
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