上 下
35 / 43

35話 側室の心得 その4

しおりを挟む
「なるほど、そのようなことがあったのか……」

「は、はい、申し訳ありません、ヨハン様……」


 マリアンヌ様に手籠めに……ではなく、マリアンヌ様の私室に泊めてもらってからの翌日、私はヨハン国王陛下と会っていた。彼の私室に向かい、昨日のことについて謝罪しているのだけれど。


 ヨハン様は冷静に聞いていたけれど、隣に立っていたラウド大臣はそうでもなかった。


「マリアンヌ殿……ではなかった、マリアンヌめ……。まさか、側室になったばかりのマリアを襲うとは……!」


 ラウド大臣は眉間にしわを寄せて怒っているみたいだった。やっぱり不味いことだったのかな? 正妃様であるマリアンヌ様の趣味……みたいなものだと思うけれど。私は不思議とそこまで嫌ではなかった。


 その要因としては、ユリカお姉さまの存在があるんだとは思うけれど。やっぱり、ユリカお姉さまとは違い、優しく接してくれることに飢えているんだと思う。


「ラウド、落ち着くんだ。マリアンヌのそっちの気はまあ……私も理解していたところではあるしな」

「陛下……では、マリアンヌは彼女以外にも?」


「マリアンヌは、それなりに面食いでもあるらしい。メイドの何名かが餌食になったという噂もあるが……真実は闇の中だな」


 マリアンヌ様は結構本気でそっち方面の趣味を持っているみたいね……。昨日はまあ、そこまで大したことはされてないけれど。


「マリア、マリアンヌとはその……どこまでした、のだ……?」


 少し照れたような表情でヨハン様は質問してくる。ヨハン様はマリアンヌ様と夜の営みはしているはずだから、別に照れる必要はないのに。私への遠慮なのかしら?


「え、ええと、その……キスとか、色々身体をその……。最後の一線は越えていませんけれど……」

「なるほど……マリアンヌには後で仕置きが必要だな」

「陛下の楽しみを奪うとは……正妃としてあるまじき行為。しっかりと躾をしなければなりませんな」


「仕置き……躾……」


 なんとなくエッチな響きに感じてしまうような……実際にエッチなことで仕置きをするのかもしれないけれど。ヨハン様も言う時は言うお方なのね、私は少し安心していた。


「陛下、マリア……? いらっしゃいますの?」


 そんな時、扉をノックする音が聞こえた。どうやら、マリアンヌ様が起きて来られたみたいね。なんだか眠そうな声だけれど。


「マリアンヌか? 入れ」

「失礼いたしますわ……」


 マリアンヌ様は豪華なバスローブ姿で部屋へと入って来た。いくら宮殿内とはいえ、ラフ過ぎるような……マリアンヌ様は低血圧なのかしら? なんだかボーっとしていらっしゃるわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある婚約破棄の顛末

瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。 あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。 まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。

パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜

雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。 だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。 平民ごときでは釣り合わないらしい。 笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。 何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。

伯爵様の子供を身篭ったの…子供を生むから奥様には消えてほしいと言う若い浮気相手の女には…消えてほしい

白崎アイド
ファンタジー
若い女は私の前にツカツカと歩いてくると、「わたくし、伯爵様の子供を身篭りましたの。だから、奥様には消えてほしいんです」 伯爵様の浮気相手の女は、迷いもなく私の前にくると、キッと私を睨みつけながらそう言った。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】ああ……婚約破棄なんて計画するんじゃなかった

岡崎 剛柔
恋愛
【あらすじ】 「シンシア・バートン。今日この場を借りてお前に告げる。お前との婚約は破棄だ。もちろん異論は認めない。お前はそれほどの重罪を犯したのだから」  シンシア・バートンは、父親が勝手に決めた伯爵令息のアール・ホリックに公衆の面前で婚約破棄される。  そしてシンシアが平然としていると、そこにシンシアの実妹であるソフィアが現れた。  アールはシンシアと婚約破棄した理由として、シンシアが婚約していながら別の男と逢瀬をしていたのが理由だと大広間に集まっていた貴族たちに説明した。  それだけではない。  アールはシンシアが不貞を働いていたことを証明する証人を呼んだり、そんなシンシアに嫌気が差してソフィアと新たに婚約することを宣言するなど好き勝手なことを始めた。  だが、一方の婚約破棄をされたシンシアは動じなかった。  そう、シンシアは驚きも悲しみもせずにまったく平然としていた。  なぜなら、この婚約破棄の騒動の裏には……。

無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後

柚木ゆず
恋愛
 ※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。  聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。  ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。  そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。  ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――

【完結】悪役令嬢のお父様。

❄️冬は つとめて
恋愛
厳格な父は、虐めをした娘を諭す。そして、 「其れでは、次の話に入ろうではないか。」 コッペリウスは淡々と言った。

屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。

夜桜
恋愛
【正式タイトル】  屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。  ~婚約破棄ですか? 構いません!  田舎令嬢は後に憧れの公爵様に拾われ、幸せに生きるようです~

処理中です...