私の婚約者はお姉さまが好きなようです~私は国王陛下に愛でられました~

安奈

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34話 側室の心得 その3

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「マリア、あなたは想像以上に初心のようね……それでこそだわ」

「あ、あの、マリアンヌ様……本当に不味いのでは……」


 私はマリアンヌ様に迫られて、自分の感情がどこにあるのかわからなくなってしまった。マリアンヌ様ほどの方に抱かれるなら……いやいやいや、何を考えているのよ、私は! 思考回路までおかしくなりつつあるわ!


「マリアンヌ様……こういうことは、本当に……私はまだ、ヨハン様とも、その、そておりませんし……」

「あら、していないというのは、具体的には何を指すのかしら?」

「ええっ……!! そ、それは……その……」


「良く聞こえないわ、マリア。大きな声で言ってくださる?」



 マリアンヌ様は完全にセクハラ発言を連発している気がする……女性同士でも、そういうのは成立するのよね? 違うかったかしら……。と、いうよりはからかわれているような。


「さて、冗談はこのくらいにしておこうかしら」


「あ……」


 そう言って、マリアンヌ様はすぐに私から身体を離した。やっぱり冗談だったのね……それはそれで、名残惜しい気もするけれど……て、何を言ってるのよ、私は!


「マリア、わたくしの伝えたかったことは理解できたかしら?」

「ええと……マリアンヌ様には逆らえない、ということでしょうか?」

「それもそうなのだけれど……わたくしが伝えたいのは、側室になると色々な要求が増えてくると言うことですわ」


「色々な要求……でしょうか?」


「ええ、その通りよ」


 マリアンヌ様のおっしゃった、色々な要求の具体例は分からなかったけれど、伝えたいことはなんとなく理解できた。つまりは、先ほどのような理不尽な要求も出て来るということね。


「あなたがこれから関わる、王族や上級貴族は必ずしも全てが味方というわけではありません。側室として、どの要求を呑むべきか、否定すべきかの取捨選択も増えてくると思うわ」


「なるほど……そういうことですか……」


 否定するべき状況では、キッパリと否定する……マリアンヌ様はきっと、そのことを伝えたかったんだと思う。確かに、側室として日が浅い私なんて、格好の的だと思うし……側室っていう無駄に高い立場を利用される可能性も考慮しないとね。


 ……王国は決して一枚岩ではないんだから。


「取捨選択を明確に……そういうことでしょうか?」

「ええ、そういうことよ。選択に困った時は、即決せずにすぐに相談するように。わかったわね?」

「は、はい……畏まりました」

「よろしい」


 マリアンヌ様はどこまでも私のことを考えてくれている。それだけで非常に嬉しい気持ちで満たされてしまった。ユリカお姉さまに虐げられてた分、反動が大きいわね……これくらいのことでも涙が出そうになっているわ。


「ただし、正妃であるわたくしの命令に背くことは許されませんけどね」

「え、マリアンヌ様……? ひゃあああああああ!」

「観念しなさい」

「や、やめ……はあああああああああ!!」



 私はその日、そっちの気もあるマリアンヌ様に手籠めにされてしまいました……一線は越えなかったけどね……。

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