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30話 ラウドとマリアンヌ その1
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「ラウド大臣とマリアンヌ様が親子だったなんて……初耳でした……」
私は衝撃の事実に目を丸くしていた。マリアンヌ様やヨハン様、ラウド大臣はさも当然のような様子だけれど。
「いかんなマリア・テオドア。自らの姉……実際、姉ではないが、これから密な関係になる正室の出生くらいは勉強しておかねば」
「も、申し訳ありません……ラウド大臣」
しまった……確かに側室になる身としては浅はかだったわね。私は咄嗟にラウド大臣に謝った。
「うむ、まあよかろう。お主は運が良いからな」
ラウド大臣も怒っているわけではなく、普段通りの掛け合いに戻っていた。でも、こんな楽しげ? な人でもマリアンヌ様を「商品」扱いした経歴があるのね……本当なのかしら? 私はその辺りの出来事が気になっていた。
「ちょっと、ラウド大臣? わたくしのマリアを虐めないでいただけませんこと?」
「む、仮にも実の親に向かって、お前は……!」
「……わたくしの?」
マリアンヌ様とラウド大臣は何やら言い争いを開始したけれど、私は「わたくしの」とおっしゃったマリアンヌ様の言葉がずっと気になっていた……だ、大丈夫よね? マリアンヌ様、女性に興味があるとかそういうのは……ないわよね?
私はヨハン様に視線を合わせた。
「ふふ、嫉妬してしまうかもな……はははははっ」
「ヨハン様……」
そういえば、以前にヨハン様はおっしゃっていたわね……マリアンヌ様には、そっちの気があるかもしれないって……。
「こ、これが王族の方々……なんだか、とっても楽しそうですわね、おほほほほ」
「ああ、確かに。マリアにとっても幸せな婚約になりそうだ」
お父様とお母様は少し引いているみたいだけれど、私の門出を祝ってくれているようにも見えた。私もなんだか、ほんの数十分前までの気持ちとは全然違う……とても晴れやかな気分になっているわ!
-------------------------------------
その後、側室としての挨拶を終えたヨハン様たちはピエトロ宮殿へと帰ることになった。なぜか、私も付いてくることになったのだけれど。
「またご招待いただけるなんて……本当によろしいのですか?」
「当たり前だろう? 私の側室なのだから……むしろ、遠慮する方がおかしいというものだぞ?」
「その通りですわよ、マリア。全く遠慮する必要なんてありませんわ」
ヨハン様もマリアンヌ様も、心から私を迎え入れてくれている。その一言だけで、それを理解することが出来た。
「ありがとうございます。あの、ところで……お聞きしたいことがあるのですが……」
「なんだ?」
私はこの際だから、気になっていたことを伺ってみようと思う。ラウド大臣も居るから聞きづらいけれど……。
「ラウド大臣がマリアンヌ様のことを……その、商品のように扱っていたことについて……」
「ああ、そのことか」
ラウド大臣は少し声のトーンが下がっているようだった。
私は衝撃の事実に目を丸くしていた。マリアンヌ様やヨハン様、ラウド大臣はさも当然のような様子だけれど。
「いかんなマリア・テオドア。自らの姉……実際、姉ではないが、これから密な関係になる正室の出生くらいは勉強しておかねば」
「も、申し訳ありません……ラウド大臣」
しまった……確かに側室になる身としては浅はかだったわね。私は咄嗟にラウド大臣に謝った。
「うむ、まあよかろう。お主は運が良いからな」
ラウド大臣も怒っているわけではなく、普段通りの掛け合いに戻っていた。でも、こんな楽しげ? な人でもマリアンヌ様を「商品」扱いした経歴があるのね……本当なのかしら? 私はその辺りの出来事が気になっていた。
「ちょっと、ラウド大臣? わたくしのマリアを虐めないでいただけませんこと?」
「む、仮にも実の親に向かって、お前は……!」
「……わたくしの?」
マリアンヌ様とラウド大臣は何やら言い争いを開始したけれど、私は「わたくしの」とおっしゃったマリアンヌ様の言葉がずっと気になっていた……だ、大丈夫よね? マリアンヌ様、女性に興味があるとかそういうのは……ないわよね?
私はヨハン様に視線を合わせた。
「ふふ、嫉妬してしまうかもな……はははははっ」
「ヨハン様……」
そういえば、以前にヨハン様はおっしゃっていたわね……マリアンヌ様には、そっちの気があるかもしれないって……。
「こ、これが王族の方々……なんだか、とっても楽しそうですわね、おほほほほ」
「ああ、確かに。マリアにとっても幸せな婚約になりそうだ」
お父様とお母様は少し引いているみたいだけれど、私の門出を祝ってくれているようにも見えた。私もなんだか、ほんの数十分前までの気持ちとは全然違う……とても晴れやかな気分になっているわ!
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その後、側室としての挨拶を終えたヨハン様たちはピエトロ宮殿へと帰ることになった。なぜか、私も付いてくることになったのだけれど。
「またご招待いただけるなんて……本当によろしいのですか?」
「当たり前だろう? 私の側室なのだから……むしろ、遠慮する方がおかしいというものだぞ?」
「その通りですわよ、マリア。全く遠慮する必要なんてありませんわ」
ヨハン様もマリアンヌ様も、心から私を迎え入れてくれている。その一言だけで、それを理解することが出来た。
「ありがとうございます。あの、ところで……お聞きしたいことがあるのですが……」
「なんだ?」
私はこの際だから、気になっていたことを伺ってみようと思う。ラウド大臣も居るから聞きづらいけれど……。
「ラウド大臣がマリアンヌ様のことを……その、商品のように扱っていたことについて……」
「ああ、そのことか」
ラウド大臣は少し声のトーンが下がっているようだった。
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