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28話 マリアンヌの想い その1
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「インヴァル殿、ルシア殿……これからマリアは、陛下の側室として迎え入れられます」
「は、はい……マリアンヌ様……それはとても喜ばしいと……」
「ええ、喜ばしいことでしょうね。わたくしも自分のお父様にそのように言われましたから。まるで、トロフィーでも授けるかのように、ヨハン様に娘を進呈いたしますと……」
「……そ、そうでしたか」
マリアンヌ様はどこか悲し気な瞳でお父様とお母様に話していた。その言葉はお父様達にはもちろん、私にも説得力を持って飛来した。思わず真顔になってしまう。
「陛下はそんなわたくしを大切にしてくださいましたわ。ですので、マリアが幸せになることは間違いないと断言できます。ただし……」
「ただし……?」
マリアンヌ様はそこで一旦、言葉を遮った。そして、一呼吸おいてから、再び話し始める。ヨハン様やラウド大臣を含め、みんなが彼女に注目していた。
「王室に入るということは、今までの貴族生活とは一変いたします。位も上がるし、責任感も増す。贅沢な暮らしが待っているという意味合いでは確かにそうかもしれませんが。王族やその親戚に大公一族の全てがマリアに対して友好的ではないでしょうから」
「マリアンヌ」
「……ラウド大臣?」
マリアンヌ様がそこまで話し終えた段階で、ラウド大臣が彼女を制止するように口を開いた。今日は敬称を付けていないのね。
「一方的に話し過ぎだ、インヴァル殿とルシア殿に失礼であろう? 正妃であるお前ほどの地位にはなくとも、側室であるマリア・テオドアの父君と母君にあたるのだぞ?」
「そうでしたわね……申し訳ございませんでしたわ」
マリアンヌ様は話し過ぎたことを理解したのか、お父様とお母様に頭を下げた。それにしても、ラウド大臣って一体何者なんだろう……? 国王陛下の正妃であるマリアンヌ様にここまで言えるなんて……いくら大臣参謀でもそんなこと出来るのかしら?
「い、いえ! お顔を上げてくださいマリアンヌ様……! 私どもが間違っておりました……自分たちの娘をまるで道具のように扱ってしまうなんて……確かに、親として反省しなければなりませんっ!」
「ええ……すっかり忘れていましたわ……マリアが生まれた時のことを。あの時は、出産の苦痛など忘れて喜んでいましたのに……」
「わかっていただけましたのね? わたくしとしても、とても嬉しいことですわ」
お父様とお母様は一斉に立ち上がり、マリアンヌ様を気遣った。そして各々、反省の言葉を呟いしている。とても久しぶりな気がする……お父様とお母様の言葉で心が動かされたのは。二人の言葉に嘘はないと、私の中で確信を持てた瞬間だった。
「は、はい……マリアンヌ様……それはとても喜ばしいと……」
「ええ、喜ばしいことでしょうね。わたくしも自分のお父様にそのように言われましたから。まるで、トロフィーでも授けるかのように、ヨハン様に娘を進呈いたしますと……」
「……そ、そうでしたか」
マリアンヌ様はどこか悲し気な瞳でお父様とお母様に話していた。その言葉はお父様達にはもちろん、私にも説得力を持って飛来した。思わず真顔になってしまう。
「陛下はそんなわたくしを大切にしてくださいましたわ。ですので、マリアが幸せになることは間違いないと断言できます。ただし……」
「ただし……?」
マリアンヌ様はそこで一旦、言葉を遮った。そして、一呼吸おいてから、再び話し始める。ヨハン様やラウド大臣を含め、みんなが彼女に注目していた。
「王室に入るということは、今までの貴族生活とは一変いたします。位も上がるし、責任感も増す。贅沢な暮らしが待っているという意味合いでは確かにそうかもしれませんが。王族やその親戚に大公一族の全てがマリアに対して友好的ではないでしょうから」
「マリアンヌ」
「……ラウド大臣?」
マリアンヌ様がそこまで話し終えた段階で、ラウド大臣が彼女を制止するように口を開いた。今日は敬称を付けていないのね。
「一方的に話し過ぎだ、インヴァル殿とルシア殿に失礼であろう? 正妃であるお前ほどの地位にはなくとも、側室であるマリア・テオドアの父君と母君にあたるのだぞ?」
「そうでしたわね……申し訳ございませんでしたわ」
マリアンヌ様は話し過ぎたことを理解したのか、お父様とお母様に頭を下げた。それにしても、ラウド大臣って一体何者なんだろう……? 国王陛下の正妃であるマリアンヌ様にここまで言えるなんて……いくら大臣参謀でもそんなこと出来るのかしら?
「い、いえ! お顔を上げてくださいマリアンヌ様……! 私どもが間違っておりました……自分たちの娘をまるで道具のように扱ってしまうなんて……確かに、親として反省しなければなりませんっ!」
「ええ……すっかり忘れていましたわ……マリアが生まれた時のことを。あの時は、出産の苦痛など忘れて喜んでいましたのに……」
「わかっていただけましたのね? わたくしとしても、とても嬉しいことですわ」
お父様とお母様は一斉に立ち上がり、マリアンヌ様を気遣った。そして各々、反省の言葉を呟いしている。とても久しぶりな気がする……お父様とお母様の言葉で心が動かされたのは。二人の言葉に嘘はないと、私の中で確信を持てた瞬間だった。
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