私の婚約者はお姉さまが好きなようです~私は国王陛下に愛でられました~

安奈

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26話 側室 その3

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「インヴァル・テオドア殿、ルシア・テオドア殿……本日はお招きいただき感謝する」

「とんでもないことでございます、ヨハン国王陛下。この度はお越しいただき、ありがとうございます」


 インヴァル・テオドアとルシア・テオドア……紛れもない私の両親は、ヨハン国王陛下に向けて、深々と挨拶をしていた。そして、ヨハン様の近くに居たラウド大臣とマリアンヌ様にも視線を送る。


「ラウド大臣と、マリアンヌ様も、ようこそお出でいただきました」


「私のことは気にしないでもらいたい。陛下の向かう所には、私も同伴するようにしているだけだからな」

「わたくしもラウド大臣と同意見ですわ。わたくしは、可愛いマリアの父君と母君のご様子を見に来たに過ぎませんので……」


「さ、左様でございましたか……」


 お父様もお母様も、ラウド大臣とマリアンヌ様の丁寧な応対に気が引けているようだった。逆にラウド大臣やマリアンヌ様は、ほとんど緊張している様子を見せていない。もう慣れてしまっているようね。


 応接室で対応しているお父様とお母様は、相当に緊張しているようで、それは私にもひしひしと伝わって来た。ユリカお姉さまはこの場には居ないけれど、メイドのトトリも緊張しているのか、なかなか飲み物を出すタイミングが分かっていないみたいね。


 私はとりあえず、トトリに助け船を出すことにした。


「トトリ、ヨハン様たちにお飲み物を」

「あ、か、畏まりました……!」


 私の言葉に反応するように、トトリはヨハン様たちに飲み物を進呈していく。


「ありがとう、あまり固くならないでも大丈夫だ」

「は、はい……承知いたしました……」


 以前に訪れている時に、ヨハン様とは顔を合わせているはずだけれど、隣にはマリアンヌ様もいらっしゃるし、あの時とは違った緊張を持っているんでしょうね。

 お父様もお母様も表情が固いけれど、私だけは普通に対応が可能だった。


「ええっと……それでは、お座りください。ヨハン様、ラウド様、マリアンヌ様」

「うむ」

「ありがとう、マリア」


 私の言葉に合わせるように3人は、応接室のソファに腰を掛ける。彼らの護衛の人達はその背後で微動だにしていないけれど。

 それを見計らうようにして、対面に立っているお父様とお母様も腰を掛けた。私自身はお母様の近くで立っているんだけれど、どうして私がこの場を先導しているのかしら……。


 まあ、ヨハン様の側室になるのは私だし、私が先導しても問題はないと思うけれど。ヨハン様やラウド大臣、マリアンヌ様を前にしているお父様やお母様の様子が、想像以上に固かったのはなんだかおかしかった。
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