私の婚約者はお姉さまが好きなようです~私は国王陛下に愛でられました~

安奈

文字の大きさ
上 下
25 / 43

25話 側室 その2

しおりを挟む
 お母様は有頂天になっているようだけれど、私はイマイチ乗り気にはなれなかった。勿論、ヨハン様たちがいらしてくれるのは非常に楽しみなんだけれど……。


 私の悩みの種はユリカお姉さまと能天気なお母様の件。ユリカお姉さまは色々と粗相をしてしまったんだし、反省してくれればいいとして……。


「ユリカのことはあれだけれど……うふふふふ、まさか、マリアがヨハン国王陛下の側室になれるだなんて……! こんなに素晴らしいことはないわ! 私の言いつけを守り、強く前進していった結果ね!」


「あ、あはははは……」


 やっぱり釈然としないわね……お母様やお父様には育てていただいて感謝しているけれど。それに、ヨハン様の側室になれたのは偶然も大きいだろうから、私だけの能力だなんて思っていない。でも、目の前のお母様はいままでユリカお姉さまを認めていたはずなのに、お姉さまが塞ぎ込んでしまうと手の平を返してしまっている。

 今までのような姉と妹を争わせようとする気概は感じられなかった。結局のところ、権力に弱いのよね……貴族としては、ある意味正しい生き方なのかもしれないけれど。


「それで? ヨハン国王陛下はいつ来られるんだ?」

「お父様……」

「あらあなた……」


 私とお母様のところに、お父様もいつの間にかやって来ていた。立派な髭を生やした厳格なイメージはラウド大臣にも似ている気がするけど……口元は明らかに緩んでいる。


「ふふふ……我が家に国王陛下が来るのか……。マリア、よくやってくれた! 本日はお前の大好きな料理でもてなすとしよう! 私から料理長に命じよう、好きな物を申し付けるがいいぞ!」


 普段は厳格で格好いいお父様なのに……現在のお父様は、お母様にも負けず劣らず大喜びしていた。う~ん、釈然としない気持ちは残っているけれど、私が気にしすぎなだけかしら? 

 悪い意味での放任主義……私とお姉さまに必要以上に関わらないのは良いことだったのかもしれないけれど、責任逃れとも言えるかもしれない……。だからユリカお姉さまはわがままに育ってしまったんだと思うんだけれど。


「お父様、ありがとうございます。それでは料理長には、家庭の味……お味噌汁を作っていただくようにお願いできますか?」

「味噌汁だと……? そんな庶民の料理でいいのか……?」


 お父様は首を傾げて私に聞いて来た。私は黙って頷く……なんだか今は、無性に温かい家庭に飢えていた私でした。


「あ、それから……ヨハン様は予定通りだと2日後にお越しになるようです。難しい場合は連絡するとおっしゃってました」

「了解したぞ、マリア!」


 どこまでも有頂天なお父様に私は溜息をついて私室へと向かった。少しだけ休みたい気分になったから……。


しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

最後に笑うのは

りのりん
恋愛
『だって、姉妹でしょ お姉様〰︎』 ずるい 私の方が可愛いでしょ 性格も良いし 高貴だし お姉様に負ける所なんて ありませんわ 『妹?私に妹なんていませんよ』

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

順番を待たなくなった側室と、順番を待つようになった皇帝のお話 〜陛下!どうか私のことは思い出さないで〜

白猫
恋愛
主人公のレーナマリアは、西の小国エルトネイル王国の第1王女。エルトネイル王国の国王であるレーナマリアの父は、アヴァンジェル帝国との争いを避けるため、皇帝ルクスフィードの元へ娘を側室として差し出すことにした。「側室なら食べるに困るわけでもないし、痛ぶられるわけでもないわ!」と特別な悲観もせず帝国へ渡ったレーナマリアだが、到着してすぐに己の甘さに気付かされることになる。皇帝ルクスフィードには、既に49人もの側室がいたのだ。自分が50番目の側室であると知ったレーナマリアは呆然としたが、「自分で変えられる状況でもないのだから、悩んでも仕方ないわ!」と今度は割り切る。明るい性格で毎日を楽しくぐうたらに過ごしていくが、ある日…側室たちが期待する皇帝との「閨の儀」の話を聞いてしまう。レーナマリアは、すっかり忘れていた皇帝の存在と、その皇帝と男女として交わることへの想像以上の拒絶感に苛まれ…そんな「望んでもいない順番待ちの列」に加わる気はない!と宣言すると、すぐに自分の人生のために生きる道を模索し始める。そして月日が流れ…いつの日か、逆に皇帝が彼女の列に並ぶことになってしまったのだ。立場逆転の恋愛劇、はたして二人の心は結ばれるのか? ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」 本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?

処理中です...