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16話 ユリカお姉さまとカンザスの処遇 その2

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「ユリカ・テオドア、カンザス・オリヴェイラの処遇……だな、ふむ。ラウド、私が出来ることは何かあるのか?」

 立っているラウド大臣に、ヨハン様が話しかけた。ラウド大臣は、険しい顔つきで返答する。
 

「婚約破棄の件そのものについては、直接的には難しいかと。ただし、アルバータ公爵や陛下への不敬発言と合わせ、議会に報告することは可能でしょう。陛下からの進言を真摯に受け止めるかは、議会次第ということになりますが……」


 ラウド大臣は真面目に話しているように見えて、明らかに冗談も取り入れていた。議会の方々が、陛下の言葉を無下にするはずはないし。事実である以上、ユリカお姉さまとカンザスは議会での審判にかけられるわね。


「へ、陛下……何卒、ご容赦を……! 私は反省し、二度とこのようなことは致しません!」

「あ、カンザス……わ、私も反省致します! 申し訳ありませんでした……!」


 二人は事態の重さを理解できたのか、ヨハン様に謝りだした。きっと、上辺だけでしょうけれど、この場の二人は本気で謝っているようには見えるわ。でも、ヨハン様は首を横に振っている。許す気はないみたいね。私自身も二人にやられたことを考えると、罰を受けて欲しいって思うし。

 ラウド大臣は無言だったけれど、立った状態で頷いていた。なんだか、その光景も嬉しくなる。


「上位貴族や私に対する不敬罪、マリア嬢に対する態度と婚約破棄……ユリカ嬢の浮気という行為。どれも、貴族という地位を著しく低下させる行為だ。罰金はもちろん、最悪の場合は貴族としての地位を失うことも覚悟しておけ」


「そ、そんな……!」

「こ、国王陛下……! 何卒、お許しを……!」


 ユリカお姉さまとカンザスはソファから離れ、地面で土下座までしている。しかし、ヨハン様の態度は変わることはなかった。

「用件は以上だ。お帰り願おうか」

「ま、待ってください……! もう、側室にしてくださいなんて言いませんから……! マリアに対しても優しくいたします……!」


 この期に及んで、お姉さまはとても見苦しかった。お願いだから、テオドア家の為に静かにしていてくれないかしら? 私まで恥ずかしくなってくるし……。

「お姉さま……そういうことは、罰を受けた後に、ゆっくりと考えれば良いことだと思いますよ?」

「マリア、あなた……!」


 私の庇おうとしない淡々とした口調に、ユリカお姉さまは心底怒っているように睨んでいた。でも、観念もしたのか、カンザスと共に応接室に居た護衛の人に連れて行かれた。


「やれやれ……最後にまさか、側室は諦めるなどという言葉が出て来るとは……」

「姉が大変失礼いたしました……」

「いやいや、マリア嬢が謝ることではないさ。君は被害者だからな。それに、最後の言葉はなかなか格好良かったぞ?」

「ヨハン様……。ありがとうございます……!」


「そんなに感極まって言われると、照れてしまうな……ははは」


 感極まったのは事実だけれど、照れてるヨハン様は珍しかったから良しとしようかな?


 少しだけ、私とヨハン様の間に甘酸っぱい空気が流れた瞬間だった。ラウド大臣や、他の使用人もそれを感じ取っていたのか、どこか態度が微妙だった。


「さて、陛下。そろそろ、側室のお話しを……」

「そうだったな、元々はそれが本題なのだし……」


「わたくしも参加いたしますわ」


 ユリカお姉さまとカンザスが応接室から出て行き、これから側室の話に移行しようとなった時、聞き覚えのない人の声が聞こえて来た。


「マリアンヌか」


「え……?」


 応接室の入り口のドアから入って来た人物……それは、ヨハン国王陛下の正室に当たる、マリアンヌ様だった。私は一瞬、夢かと思ってしまったけれど……よく考えたら、ここはピエトロ宮殿だったわね。
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