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28話 食事の誘い その1

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「姉さん、一応は帰ってくるようにお願いね? 屋敷に帰って来なかったら、そういうことだと判断するから」


「ラーナ……後で覚えていなさいよ……?」


「ふふふ、それじゃあ、ごゆっくり」



 全くあの子は……! 私とルークの二人は、ラーナとウイング王太子殿下に散々からかわれてから、ようやく解放されることになった。さっきまで、セドルとシャズナの件で大変だったというのが信じられない状況だわ……。


「まったく……ラーナってば調子に乗って。あの子が将来の王妃になるというのは、ちょっとだけ心配かも……」


「いや……確かに、先ほどの件は参ったけど、ラーナはとても顔が広いし、貴族間でも人気の高い人物だ。王妃として、魅力的だと思うよ」

「まあ、それはそうかもしれないけれど……」


 なんとなく、ルークのラーナに対する態度は癪に触ってしまう。


「ん? どうかしたかい、ウェルナ?」

「私はどうせ、ラーナ程、出来た姉ではありませんので……」


「ちょ……いや、別に君と比べたわけじゃないよ……!」


 慌てた様子でルークは行ってる来るけど、表向きの私の機嫌は収まらなかった。別に本気で怒ってたわけじゃないけどね。


「貴族街に行きましょう、ルーク。公爵令息様なら、一番高いお店でも余裕で支払えますわよね?」

「いや……公爵家の人間と言っても、家の資金を自由に使えるわけじゃないんだけど……」


 ルークはとても困った表情になっていた。まあ、ルークを弄り過ぎるのも可哀想なので、この辺りで終わりにするけど、どうせなら一番高いお店で優雅に食事と洒落こみたかった。私もルークも、普段は庶民的な傾向の強い貴族だけれど、偶には威厳というものを見せておかないといけないしね。


「まあいいわ、ルーク。食事についてはお任せしても良いかしら?」

「ああ、任せておいてくれ。せっかく、愛しい人からご要望があったんだ、どうせなら一番高いお店に行こうじゃないか」


「……大丈夫なの?」


「これでも、公爵の長男だからね。スーパーゴールデンポークと呼ばれる豚肉だけど……大丈夫かい?」

「ええ、とくに問題はないけれど」

「じゃあ、そのお店にしようか」

「ええ、わかったわ」


 スーパーゴールデンポーク……この国では牛や鹿といった動物より、豚は貴重とされている。その為に豚肉というのは相当な値段になる。そして、その中で最高級がスーパーゴールデンポーク。


 私はその豚肉を食べられることが嬉しくなり、足取りが軽やかになっていた。こうして、ルークとのデートが始まりを告げる。
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