婚約破棄令嬢ですが、公爵様が溺愛してくださいます!

安奈

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10話 開催 その1

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 ライジング公爵の別荘地で執り行われた、非公式の催し物。規模も小さく、身内でのお食事会に近い印象を与える。そもそも、呼ばれたのが私とメイサとシル、あとはザイル・マクレガー様の4人だけだし。なぜか、みんな私に近しい人たちだったのも気になった。

 もしかして、ライジング公爵……?


「では、早速はじめるとしようか。皆、グラスを持っていただけたかな?」

「はい」


 ライジング公爵がパーティー開催の音頭を取っている。珍しい光景というわけではないんだろうけど……なんか不思議な光景だった。おもわず笑みが零れてしまう。

「パーティーの成功を祈って……乾杯」

「かんぱ~~~い」


 ライジング公爵の宣言はとても軽く、親しみの持てるものだった。だからか、メイサやシル達も驚くほど肩の力を抜いている。仮にも公爵様の前で「かんぱ~~い」なんて言えるんだから。


 私達は乾杯の言葉のあと、目の前に出されていた豪華な食事を食べることにした。



--------------------------------------



「わあ、このジンギスカン美味しいですね! こんな高級素材が取れるなんて……」

「我が領地での特別経営の結果だ。魔法の技術によって長期保存も可能……さらに、専属の料理長の腕があって初めて、この食卓に並ぶ味になっている」


 ライジング公爵はどこか誇らしげに話している。料理長と思しき人も部屋の片隅で待機しており、ライジング公爵の言葉に反応しているようだった。


「……オルスト嬢、お味は如何かな?」


 その時、ライジング公爵は私の方向に目をやって、優しく問いかけて来た。少し戸惑ったけど、答えは決まっている。

「はい、とてもおいしいです」

「そうか、それは良かったよ」

「はい……」


 なんだが妙な空気が流れている。それはライジング公爵も感じられているみたいだけど……これはもしかして……


「ちょっと、なんで良い雰囲気になってるわけ?」

「うんうん」

「えっ……?」


 メイサとシルの二人が頬を膨らませて私を見ていた。冗談だとすぐにわかるんだけど、なんだか怒っているみたい。

「公爵様といい雰囲気……」

「これは許されないわね」

「ちょ、ちょっと……! 変なこと言わないで……! い、いえ、決してライジング公爵とそうなることが変と言っているわけではなくて……!」


 私は焦りから自分が何を言っているのか、わからなくなってしまっていた。メイサとシルからのからかい半分の言葉の否定と、ライジング公爵に対するお詫び……上手く言葉が回らない。

「はは、そんなに気にするなオルスト嬢。私と貴殿の仲だろう? わかっているさ」

「あ……はい……ありがとうございます」


 ライジング公爵の一言で私は正気に戻る。本当にこの方は不思議な人だわ……。メイサやシルも楽しそうにしている食卓場面……一人だけ、蚊帳の外になっている人物は黙々とジンギスカンの料理を食べていた。
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