"何もない"はずの家〜毎日がお化け屋敷〜

加地 里緒

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5.居候設置

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 これは、いける。
 そう思った私は偶然「関東に就職決まったけど、社宅空いてない…」と言っている知り合いを社宅が空くまでの期間居候を設置することにした。

 居候がきてしばらくは、本当にラップ音がほぼ無くなった。
 たまに聞こえる程度で、終電で帰ってきて泥のように眠る生活に支障は出ないくらい。

 実家に帰省した際に実家では聞いたことのないバキッと何かを踏み潰すようなラップ音が聞こえ(ついてきてる…)と思ったが、その"やばめのなにか"は実家に置いてきてしまったようで今残っているのはおとなしい人見知りだけだと思う。

 しかし、しばらくすると居候に慣れたのか普通にラップ音がし始めた。
 盛り塩はずっとしているが、逆にキッチンの方から人の足音や物音が聞こえるようになった。
 そんな毎日を送っていくうちに、こっちも慣れてくるので気にしないようになっていった。

********

 体調を崩して休んだ日、ロフトで私は布団で横になっていた。
 すると、下から居候に「いない」と話しかけられた。
 いや、居候は今仕事に行っている時間帯だ。何故、いつ帰ってきたのか。帰ってきたら玄関のドアの音で気付く。気づかないうちに寝てた?
 ひとまず「どうした?」と下を覗くが、誰もいない。
 血の気が引いていくのが自分でもわかった。
 やばい。

 家にいるなにかが居候の声で話しかけてきた。
「いない」というのも、そう聞こえた気がしたがもしかして「痛い」と言っていたのかもしれない。それに私は返事をしてしまった。
 よくある、返事をしたら終わりのパターンでは?

 体調を崩しているものの、家の中にいたくない。落ち着こうと、とりあえずタバコを吸うために下に降りたが、ロフトにさえいなければ下から話しかけられることもないと思いそのまま下で過ごした。
 その後は特に何もなく、ただのラップ音だけで済んだので安心して夜は寝れた。

 ワクチンの副反応で寝込んでいるときも、ラップ音がバリエーション豊かなのか虫の羽音を出してきたこともあったが本当にそれだけは気持ち的に無理だったので死にそうな声で「虫だけはやめて……」と声に出してお願いをしたらその後は一切虫の羽音ラップ音はやめてくれた。怪異って話が通じる相手なんだ……

 それからはあまり怖がることもなく、怪異くんと安易な名前をつけて普通に過ごしていた。

 在宅勤務で仕事中に近くで大きめの音を出された際は注意すると離れたところに移動してくれるし、元気な時は部屋中を高速でラップ音を出しながら移動してるがはしゃぐなはしゃぐなと言ったりして、見えないがもう1人の居候のような感じだった。ペット的な。

 その後も居候の声で話しかけてきたことが2度ほどあったが、返事はしていないし本人に話しかけたか確認して否定され、怖…と思うだけだった。

 居候はラップ音だけ聞こえるようだった。
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