許されない恋の果てに

朧月夜

文字の大きさ
上 下
2 / 3
1章 出会い

2話 過去

しおりを挟む
あれは、10歳になったばかりの頃である。


~~~
「お兄さん、どこまで行くの?お母様はどこ?」

『お母様はこの先だよ』


ゆっくり歩いていくと、横たわる人影が見えてくる。視界に映る母親は、顔こそ母親そのものだったがその体には血の気がなかった。


「お母様!お母様!」


呼びかけるも、応答がない。
そんな母親の亡骸に夢中で、優那は後ろから漂う殺気に気づかなかった。


ーザシュッ


斬撃の音が響く。しかし、優那の身には傷一つついていない。代わりに優那に噛みつこうとした吸血鬼が斬られていた。


『……何……くっ貴様……』

「子供なんて襲うんじゃねーよ。しかも、子供の母親を殺害して油断させるとか…やり口が汚ねーんだよ」


吸血鬼の姿が木っ端微塵に消え去る。怯える優那に1人の少年がゆっくりと歩み寄る。


「大丈夫……じゃないよな。お母さん救えなくてごめんな。君……名前は?」

「……柊優那……お母様、狙われる日が来るっていつも言ってた……私、守れなかった……お兄さん、助けてくれてありがとう」

「柊か……この辺りは吸血鬼の奴らが沢山いるからすぐ離れた方が良い。安全なとこまで案内するから」


少年に連れられ、優那は涙を拭いゆっくりと歩みを進める。この間に、色々な会話をした。名前を颯斗《ハヤト》といい、15歳であること。
たわいもないをしていると、やがて優那が見知った道へと出た。


「こっから先は俺は行けないから…後は帰れるか?」

「ありがとう…また会える?」

「……きっと会えるよ。いつか」


そう言い残し、颯斗は姿を消した。

~~~

あれから、5年。
颯斗には会えずにいる。子供の頃の約束であって、今思えば不安がらせない為の優しい気遣いだったんだろうと成長した優那は思っていた。


「でも…会ってもう一度お礼言いたいなあ」


ボソッと呟きながら、河川を眺めていると2つの人影が目に入った。


「あの気配……吸血鬼の気配…!!」


優那は、気づくと同時にレイピアの柄を握りしめ2つの人影の元に向かった。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

処理中です...