【完結】絶縁したはずの白ロリ美少女の元同級生に襲われたんだけど、いま草深い庭で迷い猫を探している最中なんですが!?(旧題【何かが、庭で。】)

今田ナイ

文字の大きさ
上 下
6 / 13
本編

離別に至る経緯①階段落ち*

しおりを挟む
 
 
    *****

 ごくごく普通の友達付き合いだったはずが、それはちょうど去年の今時分。
 もうすぐ冬服に衣替えかと思うと半袖解禁シャツが名残り惜しく感じる、まだ暑い九月下旬のことだった。

 体育祭は五月に終わっていたが、九月末に行われる文化祭の準備が急ピッチで進められており、学校内は埃っぽく急き立てられるような騒々しさに満ちていた。

 当時、クラスの文化祭運営委員になっていた雪子は、その日も小さな弁当――司ならひとくちだ――を食べ終わるなり大急ぎで教室を飛び出していった。ひとり教室に残された司は、三段重ねの弁当箱を開いたままぼんやりと窓の外を眺めていた。

 テニス部を引退した司は、夏休みの間も雪子と一緒に進学塾の夏期講習に通ったり買い物や映画に行くなどして、学校外でも行動を共にすることが多くなっていた。

 というより、気付いた時には司の周りから雪子以外の女子が消えていたのだ。

 特定の相手との付き合いが深ければ、ほかの相手とは浅くなるものである。そんなわけで司はさして気にもしなかったし、もともと大雑把な性分だった。
 また二人の成績も似たり寄ったりで、高校を選択する余地のない地方都市とあっては、進学先も一緒の腐れ縁になるだろう。そんな風に漠然と思っていたのである。


 五時限目の予鈴が鳴る前に用を足そうと席を立った司だが、聞き覚えのある甘いかすれ声に気付いて向きを変えた。
 トイレの前を素通りし、廊下の端にある階段へ行ってみた。

 階段を見上げれば、模造紙の束を詰め込んだダンボールを抱えた雪子達が、ちょうど踊り場を回って降りてくるところだった。
 目の前の荷物が邪魔で、雪子はこちらに気付いていないようだ。
 雪子が階段を降りようと足を踏み出し掛けた、まさに次の瞬間である。

「それで、司ちゃんったらねー、映画が始まったらもう爆睡で――――きゃっ!?」

 上の階段の手すりから誰かの手が伸びてきて、雪子の身体を押したのだ。

 バランスを崩し足を踏み外した雪子は、放り出したダンボールごと宙を落ちてくる。下に居た司は咄嗟にダンボールだけを避け、どうにか雪子の小さな身体を抱き止めることに成功した。しかし、まったくの無傷というわけにはいかなかった。

 雪子の身体を抱えたまま勢い余って後ろに倒れた司は受け身を取り損ない、後頭部を強く廊下に打ち付けてしまったのである。


 数秒から数十秒ほどなのか、ロストした意識が少しずつ甦ってくる。

 落ちてきたのが自分でなくて良かったと、司は夢うつつの中で思った。小柄な雪子が司を受け止める側に回ったりしたら、打ち身ぐらいじゃ済まないだろう。
 身体を預けてくる雪子の重みを、ぼんやりと感じていた司だったが、

 ――……ん、あ?

 司のはだけた開襟シャツの胸元に、形容しがたい面妖な感覚が走った。
 それは小さな頃にいたずらをしてアイロンで火傷をした時に似ていて、ぴりっともあちっともいうような、おかしな感覚だった。
 
 眼を開けると、自分の胸に顔を押し付けている雪子の小さな頭が見えた。まさに黒炭のような黒く長い髪が辺りに散って、その幻想的な光景に頭がくらくらする。

 弾かれたように頭を上げた雪子の小さな唇から、白い歯と赤い舌が覗いていた。

 一瞬、いたずらを見咎められた子供みたいな顔をした雪子だが、すぐにゴメンねと言いながら司の胸に頬をすり寄せたのだ。今度は逆に、胸元の辺りがすうすうし始める。熱く濡れた何かが胸元に触れ、そして離れて冷えた。すなわち、それは。

 ――なっ、……!?

 そうする間にもギャラリーはどんどん増え、倒れている二人を取り巻いた。
 後頭部が割れるようにズキズキと痛み出し、通りすがりの教師までやってきて大丈夫かと声を掛ける。混乱する思考に、状況が追い打ちを掛け――
 果たして、司の脳内処理能力がパンクした。

「――だっ、大丈夫です平気です、このぐらい、なんてことないですっ!」
「つ、司ちゃんっ!?」

 そう言いながら雪子の柔らかな身体を乱暴に押し退け、そのまま上履きをバタバタ鳴らして一階の保健室まで全速力で走った。
  
  
しおりを挟む
☆拙作をお読み頂き誠にありがとうございます。よかったら以下の作品ものぞいてみて下さい。

第18回恋愛小説大賞にエントリーしておりますので、お気に召しましたら投票・お気に入り登録宜しくお願い致します。動乱によって故国を追われ、飛竜に乗って異界の双竜町へ逃れて来た幼い姫君の現代ファンタジー(逆異世界転移)です。異界に逃れて十数年、戦が終わったから戻ってこいとか今さら許嫁(王子)に言われても、もうお姫様じゃなくてただの女子高生なんですけど!?

田舎の道具屋兼薬草師の少女と駆け出し少年勇者のガール・ミーツ・ボーイ的じれもだ異世界恋愛ファンタジーです。(長編/R15)少年勇者の面倒を見ていたら何かが芽生えてしまったみたい。でも私はただの田舎の道具屋兼薬草師に過ぎないのですが。~私の勇者さま、NPCの祈り~

おさんどん女子高生とひとならざるものの、重めでちょっと切ない現代ファンタジー(異類婚姻譚もどき)です。(中編/R15)中学生の時に火葬場で見初めてきた人外イケメンが、三年後に現れて私を地獄に連れて行くそうなのですが、家事育児が忙しいのでお断りします。(旧題【さよならのタイミング】)

どうみても幼女にしか見えない用務員の長谷川さん♀を中心としたリアル中二病な男子中学生他が騒ぐだけの肩肘張らない青春ストーリーです。(短編/R15)ちっちゃな用務員の長谷川さんは、とにかくちっちゃ可愛い。※○○ではない(たぶん)(旧題【ちっちゃな用務員☆長谷川さん】)
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪夢

ちゃっぷ
ホラー
後味の悪い話、何となく思いついた話、昔見た夢の話などをポツポツと思いついた時に書いていきます。

バベル病院の怪

中岡 始
ホラー
地方都市の市街地に、70年前に建設された円柱形の奇妙な廃病院がある。かつては最先端のモダンなデザインとして話題になったが、今では心霊スポットとして知られ、地元の若者が肝試しに訪れる場所となっていた。 大学生の 森川悠斗 は都市伝説をテーマにした卒業研究のため、この病院の調査を始める。そして、彼はX(旧Twitter)アカウント @babel_report を開設し、廃病院での探索をリアルタイムで投稿しながらフォロワーと情報を共有していった。 最初は何の変哲もない探索だったが、次第に不審な現象が彼の投稿に現れ始める。「背景に知らない人が写っている」「投稿の時間が巻き戻っている」「彼が知らないはずの情報を、誰かが先に投稿している」。フォロワーたちは不安を募らせるが、悠斗本人は気づかない。 そして、ある日を境に @babel_report の投稿が途絶える。 その後、彼のフォロワーの元に、不気味なメッセージが届き始める—— 「次は、君の番だよ」

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

心霊都市の大学生

はるさめ☀️
ホラー
心霊現象が多発し、人々が恐れを抱く都市――うらめ市。 不吉な噂だらけのこの街にある大学に、受験に失敗した脳筋・銀崎誠二は晴れて入学することに。 銀崎は仲間たちと共にホラーなキャンパスライフを満喫する。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...