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第二章
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ダザーナ国の王子リュード・アイザックが国賓として来日してきた。
「これはこれは。噂通りに可憐な女性ですね。お会いできて光栄です」
恭しく首をたれるアイザックに、イレーナも緊張しながら挨拶をした。
「遠いところをようこそお越しくださいました。イレーナと申します」
会釈をして頭を上げると、アイザックはキラキラとした眼差しを向けてきた。
(……綺麗な顔)
男の人に綺麗という形容詞はおかしいかもしれないけれど、第一印象でそう思った。
北国らしく肌は透明感があってつるつる。サラサラと凪いでいる金色の髪は太陽の輝き以上に輝いていて、アイスブルーの瞳は大きくにっこりと微笑まれると思わずドキッとしてしまった。
「本当に可愛いね。君を連れてこのまま国に帰りたいくらいだ」
「え」
ぎゅっと手を握られて甘い声でそんなことを言われる。
どう対象すればいいのか分からず、曖昧に笑って返すとオーランの手が伸びてきてアイザックの手首を掴んで離した。
「いたた、ちょ、相変わらず馬鹿力だね」
「気軽に姫巫女に触れるな」
鋭い眼光でアイザックを睨むオーランの声はいつも以上に低く、怒気を含ませていた。
オーランの反応にアイザックはニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべる。
「ふーん。これは僕の想像以上、かな?」
独り言のように呟いて、怖い顔をしたままのオーランを楽しげに見つめ返している。
その後二人は公式の対談をし、夜には歓迎会が盛大に開かれその宴席にイレーナも参加するよう告げられていた。
オーランとアイザックの他に臣下や騎士、ダザーナ国の騎士や警備のものも思い思いに酒の席を楽しむ。
賑やかな楽団の演奏に、豪勢な食事とたくさんの酒。
「さ、陛下お飲みになってください」
「ああ、いただこう」
ダザーナ国の酒だと、ダザーナの騎士が杯に注ぐ。
「北国の酒はやはりうまいな」
「ありがとうございます。姫巫女様もぜひ」
「ありがとうございます」
オーランの隣に玉座しているイレーナにも酒が注がれた。
一口口に含む。お酒独特の匂いもなく飲みやすい味だった。お酒のことはよく知らないけれどこれなら飲めそうだと安堵する。
「姫巫女様、どうぞ」
こちらも飲んでくださいと、一人の男性が酒の瓶を持ってきた。
城内で何度か見かけたことのある男性だ。今日は階級関係なく、城内の関係者など大勢の人が宴会を楽しんでいる。
男性は笑顔を見せているが、イレーナは思わず身構えてしまう。
実は相当身体が熱かった。北国のお酒が思いの外美味しくて、すでに結構な量を飲んでいる。
これ以上飲めそうになかったがせっかく注いでくれると言ってくれているのに、この場で断るのは気が引けた。
「あ、ありがとうございます」
男性は酔っているのだろう。頬が赤い。
「いや、今夜はめでたいですな。ダザーナ国とは今後も親交を深めてー」
酒が注ぎ終わりそれを口に含もうとしたところで、横からオーランが杯を奪った。
「オ……陛下?」
「この酒はお前には強すぎる」
オーランが勢いよくその酒を口に含んだ。
その様子に男性は驚いて目を見開く。
「なかなか味の効いた酒だな」
「あ、ありがとうございます」
男性は引きつった笑顔を見せ、逃げるようにその場を去った。
ふっとオーランはほくそ笑み、空になった杯をすぐ側で控えていたユーグに黙って渡した。
ユーグはそれを受け取り、すぐに席を外す。
「オーラン、お前ー」
アイザックが怪訝な眼差しを向け口を開きかけたが、オーランは目線で制する。
イレーナは二人の様子がおかしいことに気づいたが、その後何事もなく宴会は続いた。
「これはこれは。噂通りに可憐な女性ですね。お会いできて光栄です」
恭しく首をたれるアイザックに、イレーナも緊張しながら挨拶をした。
「遠いところをようこそお越しくださいました。イレーナと申します」
会釈をして頭を上げると、アイザックはキラキラとした眼差しを向けてきた。
(……綺麗な顔)
男の人に綺麗という形容詞はおかしいかもしれないけれど、第一印象でそう思った。
北国らしく肌は透明感があってつるつる。サラサラと凪いでいる金色の髪は太陽の輝き以上に輝いていて、アイスブルーの瞳は大きくにっこりと微笑まれると思わずドキッとしてしまった。
「本当に可愛いね。君を連れてこのまま国に帰りたいくらいだ」
「え」
ぎゅっと手を握られて甘い声でそんなことを言われる。
どう対象すればいいのか分からず、曖昧に笑って返すとオーランの手が伸びてきてアイザックの手首を掴んで離した。
「いたた、ちょ、相変わらず馬鹿力だね」
「気軽に姫巫女に触れるな」
鋭い眼光でアイザックを睨むオーランの声はいつも以上に低く、怒気を含ませていた。
オーランの反応にアイザックはニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべる。
「ふーん。これは僕の想像以上、かな?」
独り言のように呟いて、怖い顔をしたままのオーランを楽しげに見つめ返している。
その後二人は公式の対談をし、夜には歓迎会が盛大に開かれその宴席にイレーナも参加するよう告げられていた。
オーランとアイザックの他に臣下や騎士、ダザーナ国の騎士や警備のものも思い思いに酒の席を楽しむ。
賑やかな楽団の演奏に、豪勢な食事とたくさんの酒。
「さ、陛下お飲みになってください」
「ああ、いただこう」
ダザーナ国の酒だと、ダザーナの騎士が杯に注ぐ。
「北国の酒はやはりうまいな」
「ありがとうございます。姫巫女様もぜひ」
「ありがとうございます」
オーランの隣に玉座しているイレーナにも酒が注がれた。
一口口に含む。お酒独特の匂いもなく飲みやすい味だった。お酒のことはよく知らないけれどこれなら飲めそうだと安堵する。
「姫巫女様、どうぞ」
こちらも飲んでくださいと、一人の男性が酒の瓶を持ってきた。
城内で何度か見かけたことのある男性だ。今日は階級関係なく、城内の関係者など大勢の人が宴会を楽しんでいる。
男性は笑顔を見せているが、イレーナは思わず身構えてしまう。
実は相当身体が熱かった。北国のお酒が思いの外美味しくて、すでに結構な量を飲んでいる。
これ以上飲めそうになかったがせっかく注いでくれると言ってくれているのに、この場で断るのは気が引けた。
「あ、ありがとうございます」
男性は酔っているのだろう。頬が赤い。
「いや、今夜はめでたいですな。ダザーナ国とは今後も親交を深めてー」
酒が注ぎ終わりそれを口に含もうとしたところで、横からオーランが杯を奪った。
「オ……陛下?」
「この酒はお前には強すぎる」
オーランが勢いよくその酒を口に含んだ。
その様子に男性は驚いて目を見開く。
「なかなか味の効いた酒だな」
「あ、ありがとうございます」
男性は引きつった笑顔を見せ、逃げるようにその場を去った。
ふっとオーランはほくそ笑み、空になった杯をすぐ側で控えていたユーグに黙って渡した。
ユーグはそれを受け取り、すぐに席を外す。
「オーラン、お前ー」
アイザックが怪訝な眼差しを向け口を開きかけたが、オーランは目線で制する。
イレーナは二人の様子がおかしいことに気づいたが、その後何事もなく宴会は続いた。
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