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第一章
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街の視察から戻ってしばらくの間は穏やかな日々が続いていた。
「姫巫女様、どうかされました? どこか具合でも……」
「え」
ふいに心配そうな顔つきをした侍女に声をかけられて、イレーナははっと我にかえる。
「何度かお声をかけたのですが」
「ご、ごめんなさい。少しぼーっとしてただけよ」
笑顔でそう返すと侍女はそうですかと頷くけれど、イレーナの顔色を観察するようにじっと見つめてくる。
「陛下に言われてますから。姫巫女様のご様子にはくれぐれも注視してほしいと」
侍女の言葉にイレーナは首を傾げた。
「姫巫女様のことをとても大事に思ってらっしゃいますわ。街に視察に出て疲れているだろうから休ませてほしいと」
疲れているのはオーランの方だ。視察から戻ってからもオーランは売春宿の処理や薬のことについて調べたりと精力的に働いていた。
近いうちに交友関係のある北国の国、タザーナ国から王子が国賓として来日することになっているらしく、その準備にも追われている。
今日も朝からオーランは議会に出ていた。
議会に出ると深夜近くまでかかることもあって、本当にいつ休んでいるのか心配になってくる。
このところ気付けばオーランのことばかり考えてしまうのはなぜだろう。
どんなに忙しくてもイレーナの様子をみにくることはかかさず、深夜近くになってオーランはイレーナの寝室に顔を出した。
イレーナを起こさないようにそっと入ってきたようだけれど、イレーナは心配で眠れずオーランが来るのをまっていた。
「まだ起きていたのか」
驚くオーランにイレーナはこくりと頷いた。
オーランは深いため息を吐いて、イレーナが眠るベッドに深く腰をかける。
「大丈夫……? だいぶ疲れているみたいだけど」
遠慮がちにイレーナが聞くと、オーランが不敵に笑みを深めからかってくる。
「俺の心配してるのか?」
ふっと可笑しそうに笑われて、イレーナは恥ずかしくなりそっぽを向いた。
「そ、そんなこと……」
オーランの手がのびてきて顎を持ち上げられ、唇を奪われる。不意打ちにキスをされてイレーナは顔を真っ赤に染めた。
「あ……」
そのままベッドに押し倒され、熱をもった視線がイレーナを見下ろす。身動きできずに固まっていると、怯えていると勘違いしたのか遠慮がちに問われた。
「怖いか?」
「ち、違うわ。ただ、急で驚いただけよ」
「へー」
ニヤリとオーランが不遜に笑う。
心の奥底まで覗き込まれているような強い視線から逸らせない。
なぜ、弁解したのだろう。
つい最近までオーランに組み敷かれて、怖いと思っていたはずなのに。
「んっ……」
いきなり歯列を割って舌が侵入し、イレーナは目を剥く。
舌を絡め取られて吸うように誘われ、イレーナは慣れないしぐさで舌を吸った。
「ん、ふっ……」
何度も深いキスを繰り返され、それだけでイレーナの体は熱く火照っていく。
とろんとした瞳でオーランを見つめると、オーランは吐息を漏らし余裕のない態度を見せる。
「……お預けが長かったからな。そんなに俺が欲しかったのか?」
「そ、そんなわけっ……」
否定の言葉は激しいキスで遮られた。
「姫巫女様、どうかされました? どこか具合でも……」
「え」
ふいに心配そうな顔つきをした侍女に声をかけられて、イレーナははっと我にかえる。
「何度かお声をかけたのですが」
「ご、ごめんなさい。少しぼーっとしてただけよ」
笑顔でそう返すと侍女はそうですかと頷くけれど、イレーナの顔色を観察するようにじっと見つめてくる。
「陛下に言われてますから。姫巫女様のご様子にはくれぐれも注視してほしいと」
侍女の言葉にイレーナは首を傾げた。
「姫巫女様のことをとても大事に思ってらっしゃいますわ。街に視察に出て疲れているだろうから休ませてほしいと」
疲れているのはオーランの方だ。視察から戻ってからもオーランは売春宿の処理や薬のことについて調べたりと精力的に働いていた。
近いうちに交友関係のある北国の国、タザーナ国から王子が国賓として来日することになっているらしく、その準備にも追われている。
今日も朝からオーランは議会に出ていた。
議会に出ると深夜近くまでかかることもあって、本当にいつ休んでいるのか心配になってくる。
このところ気付けばオーランのことばかり考えてしまうのはなぜだろう。
どんなに忙しくてもイレーナの様子をみにくることはかかさず、深夜近くになってオーランはイレーナの寝室に顔を出した。
イレーナを起こさないようにそっと入ってきたようだけれど、イレーナは心配で眠れずオーランが来るのをまっていた。
「まだ起きていたのか」
驚くオーランにイレーナはこくりと頷いた。
オーランは深いため息を吐いて、イレーナが眠るベッドに深く腰をかける。
「大丈夫……? だいぶ疲れているみたいだけど」
遠慮がちにイレーナが聞くと、オーランが不敵に笑みを深めからかってくる。
「俺の心配してるのか?」
ふっと可笑しそうに笑われて、イレーナは恥ずかしくなりそっぽを向いた。
「そ、そんなこと……」
オーランの手がのびてきて顎を持ち上げられ、唇を奪われる。不意打ちにキスをされてイレーナは顔を真っ赤に染めた。
「あ……」
そのままベッドに押し倒され、熱をもった視線がイレーナを見下ろす。身動きできずに固まっていると、怯えていると勘違いしたのか遠慮がちに問われた。
「怖いか?」
「ち、違うわ。ただ、急で驚いただけよ」
「へー」
ニヤリとオーランが不遜に笑う。
心の奥底まで覗き込まれているような強い視線から逸らせない。
なぜ、弁解したのだろう。
つい最近までオーランに組み敷かれて、怖いと思っていたはずなのに。
「んっ……」
いきなり歯列を割って舌が侵入し、イレーナは目を剥く。
舌を絡め取られて吸うように誘われ、イレーナは慣れないしぐさで舌を吸った。
「ん、ふっ……」
何度も深いキスを繰り返され、それだけでイレーナの体は熱く火照っていく。
とろんとした瞳でオーランを見つめると、オーランは吐息を漏らし余裕のない態度を見せる。
「……お預けが長かったからな。そんなに俺が欲しかったのか?」
「そ、そんなわけっ……」
否定の言葉は激しいキスで遮られた。
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