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第一章

~姫巫女の証~

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 陸地に降りて馬車に揺られ、華やかな王都が見えてきた。
 
 
 オレンジ色の屋根に白い外観をした住宅が連なり、少し行くと野菜や果物、衣服を売る市があった。
 
 
 大勢の人が売り買いし王の馬車が通ると、手をとめ頭を下げた。
 
 
 男性は笑顔をみせ手を振る。傲慢な男性だと思っていたけれど、意外と市民に慕われているらしい。
 
 
 市街地を駆け巡り、山道を登った先に王城があった。
 
 
 荘厳な建物にイレーナは首を上げて美しい城を眺める。
 
 
 神殿の天井も高かったけれど、それ以上の高さはあるだろう。
 
 
 男性は帰還を喜ぶ騎士たちに軽く手を振り、城に入り長い回廊を通ってまっすぐに玉座の間へと向かった。
 
 
 人払いをし玉座の間には男性と、その側近であろう人物に、騎士が数名側で控えていた。
 
 
 男性は玉座に腰を掛け、足を組み膝たちの恰好を命じられたイレーナに向き直った。
 
 
「こうして改めて見ると、美しいな姫巫女」


 イレーナは怯えた瞳で男性を見上げた。
 
 
「俺はこのザフラ国の王、オーラン・ド・フェラルドだ。手荒な招待で悪かったな」


 とても悪いとは思っていない口ぶりに、イレーナは震える声で言った。
 
 
「私を攫った目的は、なんですか?」


 本当は聞かなくても分かっていた。姫巫女としての力を欲しているのだろう。
 
 
 オーランが立ち上がり、イレーナの前まで歩み寄ってきて懐から小刀を取り出し、いきなりイレーナの白いワンピースの胸元を引き裂いた。
 
 
 あまりの俊敏さにイレーナは驚く間もなかった。
 
 
 さらにオーランは身に着けていた上衣の下着も的確に引き裂き、胸が外気に晒されてしまう。
 
 
「やっ……」


 いきなり肌を他人に晒されて、イレーナは恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
 
 
 胸元を隠そうにも両手を縛られていてはそれも叶わない。
 
 
 複数人の男に乳房を露わにされるという、信じられない羞恥にイレーナは顔を真っ赤にした。
 
 
 オーランの金色の瞳がじっ、と胸元に注がれる。顔をそらしていても鋭い眼光が突き刺さった。
 
 
 震えるイレーナに手を伸ばしたオーランが、そっと乳房に触れる。
 
 
「っ……!!」


 抵抗しようと声を上げたが怖くて言葉がでてこなかった。
 
 
「これが……姫巫女の証ーか」


 そっとオーランは右胸に記された姫巫女である証、黒色のダイヤのような形をした幾可模様をなぞった。
 
 
 ゆっくりと形を確かめるように撫でられて、イレーナは戸惑った。
 
 
 男性の指がこんなにごつくて大きなものだとは知らなかった。イレーナの乳房などすっぽりとはまりそうな手だ。
 
 
 この手で乱暴に掴まれたら痛いだろうと身を構えたが、オーランは感慨深げになぞり興味津々といった風にその模様を眺めている。
 
 
「っつ……」


 ただなぞられているだけなのに、どういうわけか身体がぴくんと跳ねた。
 
 
 イレーナのかすかな反応にオーランがふっとひそかに笑み、指を離した。
 
 
 イレーナはほっと安堵して肩の力を抜く。
 
 
「今日からお前はこの国で姫巫女として力を使うんだ」


「ど、どうして」


「我が国は戦に長けている。だがこのところ続いた戦で大勢の騎士が傷を負った。重傷者をお前に診てもらいたい」


 イフラー国を奪った国の手助けをしろということ?
 
 
「あ、なたは私の国を武力で奪った。どうしてそんな乱暴なことをするあなたの国を助けないといけないの?」


 何もしていない。戦争もしかけていなし、したこともない小さな国の無力な人々を大国ザフラが傷つけたー。
 
 
「自分の国さえよければ、どうでもいいのっ……?」


 大きな瞳に涙が零れる。悔しくて仕方がなかった。
 
 
「いやっ、絶対に、あなたのために力は使わないわっ!!」


 イレーナは泣き叫んだ。抵抗したところでどうにもならないことくらいイレーナにも分かっていたが、どうしても許せなかった。
 
 
 泣き喚いたイレーナに、オーランは煩わしいというようにため息を吐いて、視線を合わせるように片膝を床につけしゃがんだ。
 
 
「なかなかいい身体つきをしているな、姫巫女?」


「っつ……」


 まだ開いたままの胸元に、厭らしい視線が注がれる。
 
 
 さっきとはあきらかに様子が違う視線に、イレーナはびくっと身を震わせた。
 
 
「姫巫女-ゆうことを聞かなければ、その身体を使って聞かせるまでだー」


 オーランの金色の瞳が炎のように揺らめく。
 
 
 イレーナは金縛りにでもあったかのように動くことができなかったー。  
 
      



 
   
 
 
  

  
 
 
 
 
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