【Ｒ１８】囚われの姫巫女ですが、なぜか国王に寵愛されています

プロローグ

　儀式に集中していた姫巫女イレーナは、外の異変に気づくことができなかった。


　神殿に響き渡る轟音と地響きで、ようやく事の事態に気づく。


「姫巫女様！！ ここはもう持ちません。隠し扉から避難を！」


  重厚な扉が破かれ、外から大勢の男が駆け寄ってくる。
　
　
「っつ……」


　イレーナは怖くて何もできなかった。
　
　
　イレーナを守っていた騎士は次々に倒れる。
　
　
　逃げなきゃーと思うのに腰が抜けて動けない。
　
　
「いたぞっ姫巫女はあそこだっ！　捉えろ！！」


　一人の騎士がイレーナに向かって駆け寄り、細い腕を力いっぱい掴んだ。
　
　
「きゃっ……！！」


　ぎりっと音がしそうなほど掴まれて、イレーナは顔を顰めた。
　
　
「ほらっ、立てよ。お姫様」


　乱暴に引っ張られイレーナは無理やり立ち上がらされる。
　
　
「乱暴に扱うなと言ったはずだが？」


　ふいに聞こえてきた低い声。すぐ側に来るまで男の気配に全く気付かなかった。


　その声は静かで落ち着いていたが、騒ぎを一瞬で止めるほどの迫力が満ちていた。
　
　
「も、申し訳ありません」


　イレーナの腕を掴んでいた男が慌てて離す。
　
　
　自由になったはずなのに、イレーナは恐怖で一歩も動くことができなかった。
　
　
　ゆっくりとした足取りでイレーナの前に歩み寄る。
　
　
　眩いほど煌々と輝く金髪の髪に、氷のように冷たい金色の瞳がイレーナを見下ろす。
　
　
　甲冑を身に纏っているが、それでも屈強な男だということは見て取れた。
　
　
　野生の狼のような迫力に、イレーナは息をのむ。
　
　
　男がイレーナに手を伸ばして不遜に笑った。
　
　
「俺と共に来てもらうぞ。姫巫女様？」


　放心状態のイレーナに手を伸ばし、あっという間に男の肩に担がれた。
　
　
　ぐんと身体が宙をまい、床が遠くにみえる。
　
　
「やっ、離してっ」


「後は任せたぞ」


「はっ」


　イレーナの抵抗などおかまいなしに、あっという間に男に連れ去られたのだったー。