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グリードからジルが噂を流したのではないかと聞いて、サーラはいてもたってもいられずにすぐにジルの屋敷に向かった。
ジルの屋敷に尋ねるとジルはいつもと変わらない笑みで出迎えてくれる。
「やあ、いらっしゃい」
「……ジル様。突然の訪問お許しください」
「いや? グリードから聞いていたから問題ないよ」
カウチに座り、執事が持ってきてくれた紅茶を一口飲んで喉の渇きを潤す。
「ローランド公爵様から婚約破棄されました。私は今までに何人もの男と夜を共にしている女だとー」
ジルは何も言わずに話を聞いている。
「その噂を流したのはジル様ではないかとお兄様に聞きました。本当なんですか?」
真意を探るようにじっとジルを見詰めながら聞くと、ジルは困ったように笑みを見せた。
「ったく。相変わらずグリードは鋭いな」
やれやれと肩を竦めてジルはカウチにもたれ掛かった。
「君が結婚するという相手のことを少し調べてみたんだ。そうしたらよくない噂が次々と出てきてね。気に入った女は奴隷のように扱う。全てを自分色に染めなければ気が済まない」
話を聞いただけでゾッとする。婚約破棄されてよかったと心底思った。
「君はあの男と結婚することを嫌がっていたし、このまま嫁がせるのは僕も許せなくてね」
「どうしてですか?」
「君のことが気になって仕方ないから」
間髪入れずにそう返されてサーラは目を見開く。
「どうしてだろうね。君のことが気になって仕方がないんだ。あんな男の元に君を嫁がせることは絶対に嫌だった」
あの男の性格を把握してどうすれば自らこの結婚を諦めるか考え、出た答えがあの噂を流すことだった。
「僕も伯爵の身分とはいえグリードのおかげで色々な公爵家とは親しくしていてね」
ローランド公爵と親しい人間を割り出し、噂を耳にするようにする。あっという間にその噂がローランドの耳に入り、思惑通り婚約破棄をさせたということらしい。
「君には汚名を着せられた形になって申し訳なかったけれど、相手が単純で助かったよ。グリードだったらこうはいかないだろうからね」
サーラの知らないところでジルが動いていてくれたことは嬉しいけれど、どうしてそこまでしてくれるのだろう。
ジルも同じ気持ちを抱いているのではないかと淡い期待をしてしまう。
「本当はかっこ良く君をあの男の前で奪い去りたかったけど、残念ながら僕にそんなこと出来る力はなかった」
だからこんな手の込んだことをするしかなかったんだと、ジルは自嘲気味に言う。
「情けない男だね」
「そんなこと……」
サーラの瞳からはぽろぽろと涙が溢れる。
「ずっと思っていたんです。ジル様助けてって。願ってもどうしようもないことだと分かっていたのに。それでも心の中でずっとジル様を思ってました」
このままあの男と結婚したら、本当に鳥籠に囚われたただの人形になってしまうー。
「ずっと怖かった」
とうとう嗚咽が漏れてサーラは泣きじゃくった。
「サーラちゃん」
ジルがサーラの隣に腰をかけてそっと頭を撫で、ぎゅっと抱きしめてくる。
びっくりしてサーラは息が詰まり、困惑した面持ちでジルを見かえした。
「ジル、さま……」
「僕はいけない男だね。君を今すぐ抱きたいと思っている」
頬に流れた涙を拭って優しい眼差しで見つめられると、胸が熱くなった。
このままジルの優しい腕に包まれたい。
「この間の続き、してください……」
こんなことを自分からお願いするのは恥ずかしかったけど、今夜はずっと一緒にいたいと思った。
ジルの屋敷に尋ねるとジルはいつもと変わらない笑みで出迎えてくれる。
「やあ、いらっしゃい」
「……ジル様。突然の訪問お許しください」
「いや? グリードから聞いていたから問題ないよ」
カウチに座り、執事が持ってきてくれた紅茶を一口飲んで喉の渇きを潤す。
「ローランド公爵様から婚約破棄されました。私は今までに何人もの男と夜を共にしている女だとー」
ジルは何も言わずに話を聞いている。
「その噂を流したのはジル様ではないかとお兄様に聞きました。本当なんですか?」
真意を探るようにじっとジルを見詰めながら聞くと、ジルは困ったように笑みを見せた。
「ったく。相変わらずグリードは鋭いな」
やれやれと肩を竦めてジルはカウチにもたれ掛かった。
「君が結婚するという相手のことを少し調べてみたんだ。そうしたらよくない噂が次々と出てきてね。気に入った女は奴隷のように扱う。全てを自分色に染めなければ気が済まない」
話を聞いただけでゾッとする。婚約破棄されてよかったと心底思った。
「君はあの男と結婚することを嫌がっていたし、このまま嫁がせるのは僕も許せなくてね」
「どうしてですか?」
「君のことが気になって仕方ないから」
間髪入れずにそう返されてサーラは目を見開く。
「どうしてだろうね。君のことが気になって仕方がないんだ。あんな男の元に君を嫁がせることは絶対に嫌だった」
あの男の性格を把握してどうすれば自らこの結婚を諦めるか考え、出た答えがあの噂を流すことだった。
「僕も伯爵の身分とはいえグリードのおかげで色々な公爵家とは親しくしていてね」
ローランド公爵と親しい人間を割り出し、噂を耳にするようにする。あっという間にその噂がローランドの耳に入り、思惑通り婚約破棄をさせたということらしい。
「君には汚名を着せられた形になって申し訳なかったけれど、相手が単純で助かったよ。グリードだったらこうはいかないだろうからね」
サーラの知らないところでジルが動いていてくれたことは嬉しいけれど、どうしてそこまでしてくれるのだろう。
ジルも同じ気持ちを抱いているのではないかと淡い期待をしてしまう。
「本当はかっこ良く君をあの男の前で奪い去りたかったけど、残念ながら僕にそんなこと出来る力はなかった」
だからこんな手の込んだことをするしかなかったんだと、ジルは自嘲気味に言う。
「情けない男だね」
「そんなこと……」
サーラの瞳からはぽろぽろと涙が溢れる。
「ずっと思っていたんです。ジル様助けてって。願ってもどうしようもないことだと分かっていたのに。それでも心の中でずっとジル様を思ってました」
このままあの男と結婚したら、本当に鳥籠に囚われたただの人形になってしまうー。
「ずっと怖かった」
とうとう嗚咽が漏れてサーラは泣きじゃくった。
「サーラちゃん」
ジルがサーラの隣に腰をかけてそっと頭を撫で、ぎゅっと抱きしめてくる。
びっくりしてサーラは息が詰まり、困惑した面持ちでジルを見かえした。
「ジル、さま……」
「僕はいけない男だね。君を今すぐ抱きたいと思っている」
頬に流れた涙を拭って優しい眼差しで見つめられると、胸が熱くなった。
このままジルの優しい腕に包まれたい。
「この間の続き、してください……」
こんなことを自分からお願いするのは恥ずかしかったけど、今夜はずっと一緒にいたいと思った。
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