【R18】シスコンな伯爵様が愛に目覚めたら、いちゃラブがとまりません。

くみ

文字の大きさ
上 下
3 / 13

2

しおりを挟む
 グリードの親友だというジル。


  リアのことになるとグリードと同等か、それ以上に過剰に反応するがそれ以外は普通だった。


「ねえ、リアお姉様」


「なに?」


  男二人で飲んでいる間、サーラとリアはデザートに紅茶と甘い焼き菓子を食べていた。


「ジル様って、屋敷でもあんな感じなの?」


「ええ、そうね。私が舞踏会に行くのもとめられていたもの」


「信じられないわ。父親がそうならまだしも」


  サーラは呆気に取られる。サーラは逆に舞踏会に行け、結婚しろと口酸っぱく言われているのに。


「私、小さい頃に母を亡くして父も海外暮らしなの。ルード家を支える伯爵家として、私のことも親代わりに育ててくれたわ」


   確かに少し度が過ぎているけど、とリアは微苦笑を零す。

  
  同じ女性なのにサーラはなぜかドキッとしてしまった。


(お兄様が夢中になるのもわかるわ)


  サーラはため息を吐いて紅茶を口に含む。


「でも、とっても優しいお兄様よ。グリード様もサーラのことをとても大切に思っているでしょ?」


「そうかしら。私は公爵家にとってわがままな娘でしかないわ。きっと厄介者よ」


 男ならグリードみたいに仕事して生きていけるけど、女は所詮分布相応の相手と結婚するしか道はない。

 
 分かってはいても、素直に受けいられない。


「サーラ……」


 不安そうな顔をする義姉に、サーラは明るく笑ってみせた。


「なんてね、冗談よ」


 幸せそうな二人をサーラは羨ましく思った。抵抗してはいるけど、サーラにはあの年上の男と結婚するしか道はないのだから。


 夜中、サーラは目が覚めてダイニングに降りてきた。


 喉が渇いて水を飲み、一息ついて自室に戻ろうとしたとき。


「サーラちゃん?」


「きゃっ」


 いきなり声をかけられてサーラは飛び上がりそうなほど驚いた。


「ごめん、驚かせたかな」


「ジ、ジル様……まだ飲んでらしたのですか?」


 ソファにもたれて一人でジルはくつろいでいた。テーブルの上には空になった瓶がいくつもある。


 相変わらず酒豪な兄だと呆れつつ、その兄についていけるジルも相当酒豪だ。


「お兄様は?」


「グリードはもう寝たよ。リアと一緒にね」


 どこか面白くなさげに吐き捨てジルはまたグラスを煽った。


「隣、座ってもいいですか?」


 なんとなくジルが寂しそうに見えつい口にしてしまったけれど、男の人と二人きりという状況に今さら気付いてドキドキしてきた。


 ジルは何でもないことのように承諾してくれて、緊張しつつ長椅子の一番端に遠慮がちに座ると、ジルにくすりと笑われてしまった。


「そんな端に座らないでこっちに来て?」


 ぽんぽんとすぐ隣に座るように言われ、サーラは小さく頷きながら移動した。


「お酒、飲めないんだっけ? ジュースのほうがいいかな」


「いえ、大丈夫です」


「え」


 きっぱりと言い切るサーラにジルは意外そうに目を瞬かせたが、楽し気な笑みを浮かべて空いているグラスにお酒を注いだ。

 

  


 









    
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...