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パーティーは大変!! 1

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   朝からグリードは気分が悪かった。


   今夜は政治家主催のパーティーに夫婦同伴でと誘いがあった。


   結婚して以来、公の場にリアを連れて行くのは初めてで何度もため息を吐いたり、部屋をウロウロとして落ち着かない素振りをみせている。


   グリードの一存で断れるわけもなく、渋々参加することになったのだが。


「着替え終わりました」


   別室でドレスに着替えていたリアが顔をだした。


   今日のリアのドレスはグリードが選んだ。


(やはり、この色だとリアには似合わない)


   群青色にゴールドの刺繍が施された暖色系のドレスをわざと着させた。


   花やレース、リボンと言った飾りも極力抑えたものだが、リアの可愛らしい顔つきと背丈には不釣り合いだ。


   そんなことを口にすればリアが怒りそうだから、胸の奥にしまっておく。


「グリード様に貰ったピンクのドレスが着たかったです」


   また可愛いことを言って、とグリードは軽く肩をすくめてリアの唇にキスをした。


「あのドレスは俺と二人きりで出かける時に着るんだ。今夜あのドレスを着て行ったら俺は仕事どころではなくなる」


「今夜のパーティーは相当大きなものなんですよね。どんな方がいらっしゃるんですか?」


「政治家の集まりだ」


「せ、政治家!?」


   驚くリアにグリードは渋々と答える。


「大物政治家の主催でな。断れなかった。俺の妻にぜひ会いたいというんでな」


   いつもパーティーには顔を出してもリアを連れて行ったことはなかった。


   だが、今回の主催はグリードがよくしてもらっている人で、政治の中でもトップクラスに入る大物だ。


   独身の政治家や貴族が集まり、そこで嫁探しをすることもある。


 (若い男の中にリアを連れて行ったらどうなるか……)


   もちろんグリードの妻ということは知れ渡っているが、手を出そうと考える輩もいるかもしれない。


   考えすぎだとわかっている。できることならリアを屋敷の中に囲いたいほど、独占欲が日に日に高まっているのだ。


   当の本人は自分がどれだけ人目を惹くか未だに理解していないところも、グリードの心配の種を増やしている原因だ。


   リア自身が他の男に見向くことはないという確信はあるが、男の方がほうっておかないだろう。


(今になって、ジルの過保護ぶりが理解できるな)


   あの時は大げさな兄妹だと半分揶揄していたが、今のグリードはあの時のジル以上にリアが心配でならない。


「グリード様?   どうかされましたか?」


   リアが思い悩むグリードの顔を心配そうに見つめてくる。


「いや、なんでもない。そろそろ行くぞ」


「はい」


   グリードはリアの後ろ姿を見つめながらふと、思った。


(やはり、もう少し目立つところに跡をつければよかったか)


   先日、グリードはリアの身体中に紅い跡を散らした。


   首筋や鎖骨にしたが遠目からでは気付きにくいかもしれない。


   馬車の中でつけるかと、またリアに怒られそうなことを本気で考えながら屋敷をあとにした。


   馬車に揺られ目的の屋敷に着いた頃。


   リアは顔を真っ赤にしてグリードを睨みつけている。


「ひどいです、グリード様っ」


   嫌がるリアに際どい愛撫を繰り返し、一番目立つところに鬱血の後を残した。


   リア自身、それに気づいていないようだがまた狭い馬車の中であられもない声を上げさせられたことに怒っていた。


「すまない」


   さすがにグリードも反省をした。このままでは本当にリアに嫌われるかもしれない。


「ようこそ、いらっしゃいました。グリード様、奥様」


   門の前で来客の手伝いをしている若い男性が会釈をした。


   グリードは名前を書いて屋敷にはいる。


   大きなパーティーホールに案内されると、そこにはすでに大勢の人が談笑をしたり、酒を飲んだりして楽しんでいた。


「すごい、ですね……」


   リアがきゅっとグリードのタキシードの裾を握りしめた。グリードは柔らかく微笑み、大丈夫だと安心させるように頷く。


「どうぞ、お好きなグラスを」


「ああ」


   トレーに載ったグラスには色々な酒が注がれていて、グリードはビールを、リアにはシャンパンを渡した。


「グリード公爵様」


   リアにグラスを渡したところで、今回の主催主である政治家ーローランが挨拶に来た。


「ローラン様。今夜はお招きいただき、ありがとうございました」


「いや、私の方こそ。グリード公爵様にも色々とお世話になっておりますし、せめてものお礼ですよ。 そちらが噂の奥様でいらっしゃいますか?」


   ローランがリアに目を向けて挨拶を交わす。


「はじめまして。ローラン・シュデールでございます」


「は、はじめまして。リアと申します」


   ドレスの裾を持ち、恭しく会釈をするとローランが納得したように大仰に頷いた。


「これはこれは。お噂通り可憐な方だ。グリード様、お気をつけくださいませ。若い貴族や政治家もたくさんおりますゆえ」


「……ご忠告ありがとうございます」


   ホールには男女合わせて百人近くの人が集まっている。これもローランの人脈だろう。


   もちろん夫婦できている人の方が半数近いが、こういうパーティーは身分に相応しい相手を見つけるには打って付けの社交場だ。


   グリードもこの界隈では顔が広い。目で見ただけでも三割ほどの独身男性が混じっていた。


「グリード様、こんばんは」


   一人の男性が挨拶をしにきた。仕事の関係でもよく会う政治家の一人だ。


   ただ談笑しているだけではなく、仕事の話もある。


   リアがそっと後ろに引いて小さく頷く。


   一人にしてしまうことに心許ないが、グリードはしばらく仕事に集中することにした。


   

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