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はじめてのケンカ? ※子供が産まれる前のエピソードです※

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    リアは怒っていた。


「……」


    目の前に座る夫は罰が悪そうな顔をしている。


「ひどいです、グリード様のバカっ!」


    ついには声を上げてリアは自室に引きこもってしまった。


(怒った顔もなかなか可愛いな)


    などとリアに言えば機嫌がますます悪くなりそうで、黙っていた。


    いつも出迎えに来る新妻の姿がないことに、執事のバディスが戸惑いつつも声を掛けてきた。


「あの、奥様はー」


「リ、リア様はご気分が優れないとかで寝ています」


「そうですか」


    気の利かない執事にメイドがすぐにフォローをする。


「行ってくる。リアの事頼んだぞ」


「畏まりました」


    ピリピリとした挨拶を終え、一同はホッとしたのだった。


「また今朝は怖い顔して、どうされたんですか?」


「別に。妻とケンカしただけだ」


「ケンカ!? め、めずらしいですねー。お二人でもケンカすることあるんですか」


    感心したように呟くライアンに、グリードは軽く肩をすくめて言った。


「いや、ケンカといってもリアが一方的に怒っているだけなんだがな」


「ますます気になります。温厚な性格のリア様が、グリード様に怒るなんてー」


    話すつもりもなかったが、グリードはつい話してしまった。


「朝から嫌がるリアを無理矢理抱いてしまっただけだ」


「あ、朝からですか。羨ましいです」


    ほう、とうっとりしながら呟くライアンにグリードは言い訳を口にした。


「愛しい女性が隣で眠っていたら、男は朝だろうが昼だろうが抱きたくなるものだ」


「はあ、そんなもんですかねー。確かにリア様みたいに可愛いお嫁さんが隣で眠っていたら俺だって……」


    うっとりとした顔をするライアンにグリードは眉根を吊り上げて叱責する。


「変な想像をするな」


「す、すみません……」


    しゅんと肩を落としたライアンに苦笑しつつ、もやもやとした気持ちを振り払おうとグリードは仕事に励むことにした。


    今夜になれば機嫌が直るだろう。


    一方、屋敷ではリアは一日中落ち込んでいた。


「リ、リア様、もう食べられないのですか?」


「え? あ。いえ、いただきます……」


    腑抜け状態で昼食を食べるリアにメイドが心配そうな顔をしている。


「リア様、そう言ってもう一時間近く経ってるけどー。大丈夫かしら?」


「きっと今朝のこと気にしているのよ。こんなに落ち込んだリア様みるのはじめてで、心配だわ」


    リアはただ恥ずかしかっただけだ。


    朝からあんなに激しく抱かれて。前夜も何度も求めあったばかりで、リアの体は敏感に反応していた。


    太陽の光が照らされた部屋で淫らに身悶えた姿を思い出すと、顔から火が出そうになる。


    つい恥ずかしさが勝ってグリードに馬鹿なんてー。


 「謝らなきゃー」


     リアは反省してぎゅっと拳を握る。


「リ、リア様?」


「ごめんなさい。すぐに食べ終わるわ」


    心配そうに様子を伺うメイドに大丈夫よ、と笑みをみせると一同はほっと安堵の息を吐いたのだった。



    仕事を終えて屋敷に帰ると、リアが少し気まずそうな顔で出迎えてくれた。


「お、お帰りなさいませ……」


    出迎えてくれたことにホッとして、抱きしめたくなる衝動を抑え込み冷静に返事をする。


「ただいま」


    しばらく気まずい沈黙が続いて、グリードがとりあえず場所を移動しようと踵を返した時。


 「……あ、あのっ」


    リアが緊張した面持ちでグリードに声をかけてきた。


 「さ、みなさん! 仕事をしましょう」


    メイドたちが気を利かせてそそくさと退散し、二人きりになる。


「ご、ごめんなさいっ! 私……グリード様に、失礼な態度をして……」


    がばっと勢いよく頭を下げて謝るリアに、グリードは柔らかい笑みを浮かべ頭をポンと撫でた。


「俺も、悪かったー。嫌がるお前を無理矢理ー」


「い、嫌がってなどいません!」


「え?」


    顔を赤くして否定するリアに、グリードは目を丸くする。


「た、ただ恥ずかしかっただけ、なんです……。朝から、あんな、ことして……。嫌だったわけじゃなくて、その、グリード様をばかって、言ったのも……」


    瞳に涙をためて恥ずかしそうに、だけど一生懸命言葉にしようとするリアに、グリードはどうしようもなく愛しさがこみ上げてきた。


「リアっ……」


    ぎゅっとリアの身体を抱きしめ、唇に軽くキスをする。


「俺はーリアが思っている以上に、リアのこと愛していて、朝だろうが昼だろうが、そばにいると触れたくなるんだ」


「グリード様……」


    驚くリアにグリードは余裕のない声で言った。


「節操がないと罵られるかもしれないが、それでも、俺はリアを求めてやまない。もしこの先、本当に嫌だと思う時があったらちゃんと拒否してくれ。リアが嫌がることだけはしたくないんだ」


    お互い同意の上でなければ、意味がない。リアの頬に涙が流れてグリードはその雫を指でそっと拭った。


「嫌だなんて、思ったこと、ありません。わ、私、グリード様に抱かれるの、好きです。ただ、何度抱かれても、恥ずかしさが消えなくてー」


「ふっ、まったく、お前はどこまで俺を翻弄するんだろうな。俺は恥ずかしがるところもなにもかも、全て愛しいんだ」


「っ……」


    ちゅ、と頬にキスをし、グリードはリアの耳元で甘く囁いた。


「今から仲直りをしよう」


    食事もそこそこに済ませてグリードはリアを抱いた。


「あ、んっ、はっ」


「っ、リアッ」


    リアの細い身体を壊さないように気遣いながら、グリードは猛りきった熱杭を穿った。


    いくら抱いても制御が効かないという経験を、グリードははじめてした。


「っ、リアのここ、熱くて、ぎゅうぎゅうに俺を、締め付けるっ、はっ」


「あんっ、だっ、て、き、気持ちよくて、ああっ」


    素直に気持ちいいと口にするリアが可愛くて、グリードはリアの唇に貪るようなキスをした。


    舌を絡め、吸い付くとまたぎゅっとそこが収縮する。


    それがどうしようもなく気持ちよくてグリードは、激しく腰を突いた。


「あ、ん、やっ、そ、そんなにっ」


「す、まない、とまらないんだ」


    最奥を抉るように突き上げると、リアは身を反らせて喘いだ。


「あ、はっ、も、もうっ、だ、めっ、そ、それ好きなのっ……」


    淫らな言葉を発するリアにグリードは身震いして、突き上げを加速させた。


「っつ、リア、リアっ……」


    もっと、もっと恥ずかしいところをみせてほしい。


    リアはまた怒るかもしれないけれど、グリードの欲求は尽きなかった。


「く、っ、だ、すぞ」


    抜き差しを繰り返し、最奥にたっぷりと熱い液を注ぐと、リアも同時に熱い飛沫を勢いよく放出した。


「あ、ああっー……」


    全身の力が抜けてベッドにぐったりと身体を預ける。


 「愛してる、リアー」


     ちゅ、とリアのおでこにキスをするとリアははにかみながら笑みを浮かべ、グリードの体にぴったりと身を寄せた。


「私も、愛してますー」


    そう呟いてリアは深い眠りに落ちた。


    グリードは愛しい新妻の寝顔を飽きることなくいつまでも、眺めていたのだったー。





    


    


    




    




     




































   




    


    


    

    
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