[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜

くみ

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 エリーナの乱れた姿を見たカールは、血相を変えてライの胸倉を掴んだ。


「お前、何をしている―?」


 怒りを露にしたカールに対し、ライは掴まれた手を放して平常心のまま冷めた声音で言った。


「何って、カールこそ邪魔しないでほしいね。僕とエリーナは逢引の最中なんだけど」


「なん、だと?」


 ライは尚もエリーナの乳房を愛撫してきて、エリーナは泣きながら懇願した。


「や、いやっ、もうっ、あんっ」


 両乳房を激しく揉まれ、エリーナは声を上げた。


 ピクピクと身体が小刻みに痙攣し、シーツの上で身をよじらせる。


(ああ、どうして、こんなー)


 また、あのときと同じ。


 ヴァレリー公爵にされたことと。


 他の男の手で乱れるエリーナをカールはどんな思いで見詰めているのだろう。


 怖くてカールの顔をみることができなかった。


 カールは拳を握りしめ、エリーナの上に乗りかかるライの顔面を勢いよく殴った。


「つ……」


 いとも簡単にライがベッドから投げ飛ばされ床に転げ落ちて、エリーナは真っ青になって震えあがる。


「あ……」


「ひどいな、いきなり殴りかかることないだろ?」


 唇から赤い血が流れ、ライはそれを指で拭いながら挑戦的な視線をカールに向けた。


 カールは自分がした行動に瞠目する。


「僕が彼女と何をしてようが関係ないだろ? 何しにきたのさ、いいところだったのに」


 カールの癇に障るようなことをわざと言ってのけ、ライは小さく笑みを零した。


「いい、ところ―?」


「そ。いくら屋敷の主だからって、そういう最中に入り込んでくるのはどうかな。ねえ?」


 同意を求められて答えられないでいるエリーナを、カールは悲し気な瞳で見詰めていた。


「ということだから、早く部屋を出ていってくれない?」


「あっ……」


 ライに引き寄せられ顎をくい、と持ち上げられる。ライの顔が近づいてきてエリーナは身をすくませた。


「ま、待ってください、も、もう」


「何今さら恥ずかしがってんの? 何度もしたでしょ?」


「や、う、うそ、してないっ……してませんから、カール、さまっ」


 頭を振って否定するエリーナをライは容赦なく攻めていく。


 唇が今にも触れそうな距離まで迫った刹那。


「……め、ろ―」


 カールが頭を押さえて蹲って苦しみ始めた。尋常ではない様子にエリーナはありったけの力を振り絞ってライを突き放し、カールの元に駆け寄る。


「カール様っ!? 大丈夫ですか!?」


「くっ、あっ……」


 顔中に大量の汗をかき、もがき苦しむカールの背をエリーナは支えるしかできない。


「オズワルド様っ、早く、お医者様をっ……、オズワルド様!!」


 エリーナの必死の呼びかけに、ライは苦笑を零して言った。


「大丈夫。今、カールは戦っているんだ。君のことを思い出そうとしている」


「え……?」


 エリーナは苦しむカールを不安げに見詰める。


「っつ、はっ」


「カール様っ……大丈夫、私はずっと、あなたの側にいます、だからっ……」


「―エ、リー、ナは私の、つ、まだっ……くっ」


 苦し気ながらもはっきりと聞こえた。


 エリーナは満ち足りた気持ちになり、震えて苦しむカールの大きな体を包み込むようにそっと抱きしめる。


 今までどこか虚ろだったカールの瞳に、生気が戻った。

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