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    身体が重かった。


    このところ昼夜関係なく抱かれているため、一日中ベッドの上にいることが多い。


    この小屋での生活も一月以上が過ぎた。


    カールは屋敷に帰ろうとしない。心配してそれとなく促そうとするけれど、すぐにキスで誤魔化されてしまう。


 「奥様、もうお食事はよろしいのですか?」


    マリエットに声をかけられてエリーナはほとんど手づかずな食事に目を向ける。


「ええ。ごめんなさい。食欲なくて」


「夜は何かスープでもお作りしましょうか?」


「ありがとう」


    申し訳ないと思いつつもエリーナはフォークを置いた。


「ねえ、マリエット」


「なんでしょうか?」


「お屋敷の方は大丈夫なのかしら」


    エリーナの問いに洗い物をしながら淡々と答えた。


「さあ、私はあまり詳しいことまでは分かりませんけれど、旦那様はいつも通りお仕事をこなしていらっしゃるようですね」


    何度か明け方に帰ってきたこともあった。エリーナはすでに眠ってしまって、朝目が覚めるとエリーナを抱いてまた仕事に行く。


    いくら丈夫なカールでもそんな生活が続けば体に負担がかかるのではないだろうか。


    その日の夜、エリーナはマリエットの作ってくれた温かいスープを飲んですぐに眠ってしまった。


 「お帰りなさいませ、旦那様」


「マリエット、まだいたのか?」


「ええ、実は旦那様にお伝えしたいことがありまして。奥様の体調があまりよろしくないように思います。一度医者に診せた方がよろしいかと」


「っ。そうか。分かった。明日、医者と一緒に来てくれ」


「承知致しました。失礼致します」


    二人の会話をエリーナはぼんやりと聞いていた。


    またカールに心配を掛けてしまう。


    これ以上カールに不安な思いをさせてはいけないと思い、エリーナは重い瞼を開いた。


「おかえりなさい、カール様」


「エリーナ!」


    カールがベッドまで駆け寄ってきて、エリーナの頬にキスをする。


「大丈夫か? 明日の朝一にでも医者に診てもらおう」


    いつも自信たっぷりなカールが不安げに瞳を揺らす。


 「カール様、私は大丈夫ですよ? いつもの事じゃないですか」


    元々病弱なエリーナだ。少しのことで体調を崩してしまうのは日常茶飯事。今回もただ疲れが出たのだろうとエリーナは思っている。


    自分の事は自分が一番よくわかるのだ。


    でもカールはまるで重病人を診ているかのような目でエリーナを見詰めている。


    どうすればいいか分からずに途方に暮れて、気鬱な表情をしていた。


    その夜、カールはエリーナに寄り添うようにして眠った。


    お互い衣服を身につけたまま眠るのは、この小屋に来てはじめてだ。


「エリーナ。私の愛は、重いだろうか?」


    カールの呟きはエリーナには聞こえなかった。


    すぐに睡魔が訪れて深い眠りについた。


    翌朝、マリエットが医者を連れて小屋にやってくる。


    医者の診察を終えて、カールは切羽詰まったように聞いた。


「どうなんだ? どこか悪いところでも」


「環境の変化と、精神的疲労が体に負担がかかっているのでしょう」


「それで? どうすればいい?」


「十分な栄養と睡眠、それから日差しを浴びる事ですね。ずっと閉じこもっていては衛生的にも悪い」


    ずばりと言い当てられてエリーナは返す言葉がない。


    カールは心痛な面持ちで医者の話しを聞くエリーナを見詰めていた。





    


    


    


    


    
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