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違和感 1
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カールはすぐに屋敷に戻らなかった。
この小屋に滞在してもう一週間になる。エリーナは昼夜問わずカールに抱かれていた。
「エリーナ。私は仕事に行くがすぐに戻る。大人しくしていられるか?」
「はい」
「マリエットがもうじきくるから、何かしてほしいことがあれば彼女に言うといい」
ベッドに横になったままのエリーナに一つキスをして、カールは小屋を出て行った。
エリーナの身の回りの世話を侍女のマリエットに頼んでいる。
彼女のことはフォード公爵の屋敷でも見かけたことがあった。齢六〇というが驚くほど元気だ。 シーツを替えたりエリーナの身体を拭いたり、家事全般をこなす。
カールがいない間退屈だろうと、たくさんの書物も渡された。
カールと二人きりで過ごせるのは嬉しいけれど、フォード公爵の主人が何日も屋敷を留守にしているのはまずいのではないだろうか。
エリーナの体調を気遣ってここで静養しているのなら、もう大丈夫だと言わなければ。
「いつまでもカール様に迷惑をかけられないわね」
二人きりの時間がなくなるのは寂しいが仕方がない。
一仕事終えたマリエットが帰り、一人でカールの帰りをまつ。
ふと窓の外を見ると、窓を叩きつけるような大粒の雨が降り注いでいた。
暗闇に青い稲妻が光り、エリーナは身を小さくする。
雷鳴が聞こえ嵐になった。エリーナは雷が苦手だ。
「きゃっ……」
布団を深くかぶり身を震わせて雷雨が去るのを待つ。
(カール様、大丈夫かしら……)
早く帰ってきてほしいけれど、こんな嵐の中馬車を走らせるのは危険だ。
嵐はおさまるどころか激しさが増す。
一際大きな雷鳴が轟いて耳を塞いでいると、扉が勢いよく開く。
「エリーナ、すまない、遅くなって……、エリーナ?」
布団をかぶったままのエリーナに、カールが訝しげな顔をして近づいてくる。
「カ、カールさま……?」
「エリーナ? どうした? どこか気分でも」
雨に濡れてびしょ濡れになっているカールを見て、エリーナが安堵の息を吐いているとまた雷鳴が響き悲鳴を上げてカールにしがみついた。
「きゃあーっ」
カールが驚きに目を見張ったが、すぐに状況を察した。
「ふっ、エリーナは雷が怖いのか?」
優しく背中を撫でながら言われて少し恥ずかしくなる。
「ごめんなさい……」
「いや、可愛いよ。こんな嵐の夜に君を一人にさせたくないと思って慌てて帰ってきたが正解だったな」
濡れたままのカールにエリーナは慌ててタオルを渡す。
「カール様、今すぐ拭いてください。風邪を引いてしまいます」
「ああ。私はこれくらいで風邪を引いたりはしない。それよりも一緒に湯浴みをしようか」
ちゅ、と唇にキスをされてエリーナの身体が熱くなる。
ここに来て何度抱かれたか数えきれないほどだ。
行為を終える頃には雷も雨も止んでいて、闇夜だった空に太陽が登り始めていた。
「カール様、屋敷の方は大丈夫ですか?」
「ん? ああ。大丈夫だ。お前は何も気にせずにここでゆっくりすればいい」
「私のことなら、もう大丈夫です。いつまでもカール様にご迷惑をお掛けするわけにはいきません。そろそろ屋敷に戻ってもーんっ」
エリーナの言葉を途中で遮り、キスをされる。
覆いかぶさってきたカールはどこか思い詰めた表情でエリーナを見つめてきた。
「カ、カール様……?」
「私はまだエリーナと二人きりでいたい。君はそうじゃないのか?」
「わ、私もカール様と二人きりで、いたいです。でも」
また強引に唇を塞がれて、エリーナは身体の力が抜けていく。
「……ん、ふっ」
「私はもう、君を誰の目にも触れさせたくない。私だけのものだー」
掴まれた両手首が痛い。悲しみに満ちた面持ちで見詰められて、エリーナは動揺した。
この小屋に滞在してもう一週間になる。エリーナは昼夜問わずカールに抱かれていた。
「エリーナ。私は仕事に行くがすぐに戻る。大人しくしていられるか?」
「はい」
「マリエットがもうじきくるから、何かしてほしいことがあれば彼女に言うといい」
ベッドに横になったままのエリーナに一つキスをして、カールは小屋を出て行った。
エリーナの身の回りの世話を侍女のマリエットに頼んでいる。
彼女のことはフォード公爵の屋敷でも見かけたことがあった。齢六〇というが驚くほど元気だ。 シーツを替えたりエリーナの身体を拭いたり、家事全般をこなす。
カールがいない間退屈だろうと、たくさんの書物も渡された。
カールと二人きりで過ごせるのは嬉しいけれど、フォード公爵の主人が何日も屋敷を留守にしているのはまずいのではないだろうか。
エリーナの体調を気遣ってここで静養しているのなら、もう大丈夫だと言わなければ。
「いつまでもカール様に迷惑をかけられないわね」
二人きりの時間がなくなるのは寂しいが仕方がない。
一仕事終えたマリエットが帰り、一人でカールの帰りをまつ。
ふと窓の外を見ると、窓を叩きつけるような大粒の雨が降り注いでいた。
暗闇に青い稲妻が光り、エリーナは身を小さくする。
雷鳴が聞こえ嵐になった。エリーナは雷が苦手だ。
「きゃっ……」
布団を深くかぶり身を震わせて雷雨が去るのを待つ。
(カール様、大丈夫かしら……)
早く帰ってきてほしいけれど、こんな嵐の中馬車を走らせるのは危険だ。
嵐はおさまるどころか激しさが増す。
一際大きな雷鳴が轟いて耳を塞いでいると、扉が勢いよく開く。
「エリーナ、すまない、遅くなって……、エリーナ?」
布団をかぶったままのエリーナに、カールが訝しげな顔をして近づいてくる。
「カ、カールさま……?」
「エリーナ? どうした? どこか気分でも」
雨に濡れてびしょ濡れになっているカールを見て、エリーナが安堵の息を吐いているとまた雷鳴が響き悲鳴を上げてカールにしがみついた。
「きゃあーっ」
カールが驚きに目を見張ったが、すぐに状況を察した。
「ふっ、エリーナは雷が怖いのか?」
優しく背中を撫でながら言われて少し恥ずかしくなる。
「ごめんなさい……」
「いや、可愛いよ。こんな嵐の夜に君を一人にさせたくないと思って慌てて帰ってきたが正解だったな」
濡れたままのカールにエリーナは慌ててタオルを渡す。
「カール様、今すぐ拭いてください。風邪を引いてしまいます」
「ああ。私はこれくらいで風邪を引いたりはしない。それよりも一緒に湯浴みをしようか」
ちゅ、と唇にキスをされてエリーナの身体が熱くなる。
ここに来て何度抱かれたか数えきれないほどだ。
行為を終える頃には雷も雨も止んでいて、闇夜だった空に太陽が登り始めていた。
「カール様、屋敷の方は大丈夫ですか?」
「ん? ああ。大丈夫だ。お前は何も気にせずにここでゆっくりすればいい」
「私のことなら、もう大丈夫です。いつまでもカール様にご迷惑をお掛けするわけにはいきません。そろそろ屋敷に戻ってもーんっ」
エリーナの言葉を途中で遮り、キスをされる。
覆いかぶさってきたカールはどこか思い詰めた表情でエリーナを見つめてきた。
「カ、カール様……?」
「私はまだエリーナと二人きりでいたい。君はそうじゃないのか?」
「わ、私もカール様と二人きりで、いたいです。でも」
また強引に唇を塞がれて、エリーナは身体の力が抜けていく。
「……ん、ふっ」
「私はもう、君を誰の目にも触れさせたくない。私だけのものだー」
掴まれた両手首が痛い。悲しみに満ちた面持ちで見詰められて、エリーナは動揺した。
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