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    ヴァレリー公爵は大人しく引き下がって、ほっと息を吐き安堵の色を見せる。


   カールがゆっくりと立ち上がりエリーナの前まで歩み寄ってくる。


「カールさ、ま……」


    潤んだ瞳でカールを見上げると、カールが優しい笑みを見せた。


「よく頑張ったね、エリーナ」


    エリーナの頭をぽんと撫で甘いキスをしてくる。


「あとは私に任せなさい。君は思う存分、感じてくれればいい」


 「あっ……ん」


    カールの大きな手のひらが柔らかな乳房を包み込む。


    ヴァレリー公爵の少し乱暴な手つきとは違う、優しい手つきだ。


    乳首に吸いつかれると、エリーナの全身が震えた。


「あ、ふあ……」


「ここに吸い付いていいのは、私だけだ……ん」


    少し強めに吸い付かれエリーナの身体が仰け反る。


「あ、ああ、んっ」


    ヴァレリー公爵がいることも忘れて、甘ったるい声を漏らす。


「なるべく、そんな可愛い声をあいつに聞かせたくないな」


「ん、ふっ……」


    エリーナの声を唇が塞ぐ。


    貪るような口づけに必死に答えた。自分からも舌を絡めて吸い付く。


    キスをされながらカールの指が媚肉を押し開いた。


「ふっ、んっ……」


    びくっとエリーナの身体が痙攣する。二本の指が蜜口まで入ってきてぬるぬると動かされる。


「あ、んっ、カ、カールさまっ……」


    一番感じる場所を執拗に刺激されエリーナは身悶えた。


    ついさっきヴァレリー公爵にも触れられた花芽を撫でられると、エリーナはあまりの気持ち良さに腰を淫らに揺らす。


    もうそれだけでは物足りない。


    もっと太くて熱いものがほしい。


    卑猥な思いにエリーナは恥ずかしくなる。


    いつの間にこんなに淫乱になったのだろう。


    夫以外の男の人がいるのに。エリーナの痴態を見つめているのに。


    カールがほしいなんてもう思ってはいけない。


    この淫猥な時間が終わればどうなるか、考えただけで怖くなる。


「あ、あ、あん……、そ、そこ、あっ……」


     エリーナは我を忘れて、カールの与える愛撫に溺れていった。


    今だけは背徳感を忘れて愛されていたい。


    エリーナは堪えきれずに達した。


「あ、ああっー……」


    甲高い声を上げて陶酔した表情を浮かべるエリーナを、カールは優しく長椅子の上に寝かせた。


「俺の負け、か」


    ヴァレリー公爵が悔しそうに呟いたのを朦朧とする意識の中で聞く。


    カールは汗で顔に張り付いたエリーナの髪を丁寧に指で払いながら問いただした。


「どこまで、エリーナに触れた?」


     鼓動がどくんと高鳴り、口が渇く。


    ヴァレリー公爵が胸糞悪く言ってのけた。


「最後までしようかと思ったけど、気を失ったからそこで終わり」


    ヴァレリー公爵の言葉にエリーナは内心驚喜する。


    軽く肩を竦めて残念そうに吐き捨てるヴァレリー公爵に、カールは疑念の眼差しを向けた。


「本当か?」


    ヴァレリー公爵は歯噛みしながら、長椅子に横たわるエリーナを見遣り口にする。


「今までで一番悔しいよ。彼女をあんたから奪えなかったことが。最初は腹いせに彼女に手を出したけど、気づいたら俺も夢中になってたなんてな」


    笑えない冗談を口にしたヴァレリー公爵は、一つため息を吐いて驚くほど優しい視線をエリーナに向けた。


「……悪かったね、エリーナ」


    エリーナはどんな顔をしてヴァレリー公爵と向き合えばいいか分からず、わざと気づいていない振りをした。


    踵を返して出て行こうとするヴァレリー公爵を、カールが引き止める。


「どこへ行く?」


「邪魔者は大人しく消えるよ。隣にある客室使ったら? ここでしたいっていうならとめないけど」


 「偉そうなことが言える立場か?」


     カールが呆れ顔を見せながら言うと、ヴァレリー公爵はふっと笑みを見せて部屋を出ていった。


    

        


    


    


    


    


    


    


     


    


    


   

   


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