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疑念 1

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    夜中、カールは喉の渇きを覚え目を覚ました。


    気持ち良さそうに眠るエリーナのおでこにキスをして、ベッドから起き上がる。


    冷たい水を飲みバルコニーに出て夜風に当たろうと外に出た。


     真夏の暑さも少し和らいで、夜風が気持ちいい。


     暗闇の中、ふと門のところに人影が見えた気がしてカールは瞳を細める。


(こんな夜中に、誰だ?)


   侵入者だろうかー。注意深くその人影を観察して、カールは驚き入る。


    侍女の格好をした女。ついこの間雇い入れたばかりのメリサだ。門の外にいる誰かと話しをしているようだった。


    誰と話しているかまでは認識できないけれど、ヒソヒソと辺りを伺うように話し込んでいる。


    注意深くその様子を観察していると、ふと後ろから声がかかった。


「カール様? ここにいらしたんですか」


 「エリーナ。どうした? 目が覚めたのかな」


    ほっとするエリーナにカールは優しく声をかけて、中に入るように促す。


「少し夜風に当たっていただけだよ。私の姿が見えなくて、心配したのかい?」


「はい……」


    素直に頷くエリーナに、カールの顔が綻ぶ。


    ふと庭に目を向ければメリサが話しを終えたらしく、屋敷に向かって歩いてくるところだった。


「カール様?」


「いや、なんでもないよ」


    ポン、とエリーナの頭を撫でて部屋に入る。


    一度メリサについて調べることがありそうだなー、と思いながらカールも眠りについた。


    朝になり、カールはメリサの様子を注意深く観察する。


    ユリアと一緒にシーツを替えたり、エリーナの着替えを手伝ったりとテキパキと仕事をこなしていた。


 「……公爵様?」


「ん?」


    あからさまにメリサをみていたことに気づいたのか、不意にメリサが困り顔で聞いてきた。


「あの、私に何かご用でしょうか?」


    じっとメリサの心の内を暴こうとするかのように視線を投げかけると、メリサはどこか気まずそうに俯いた。


「いや、なんでもない」


「……」

    
    メリサは不思議に思いながらも、手を動かした。


    メリサが何か企みを持ってこの屋敷に侵入したとなれば、ほっておくことはできない。


    目的は分からないが、万が一エリーナに対して何か危害を加えようとしているのであればー。


 「カール様、どうかされたんですか?」


    ドレスに着替え終えたエリーナが心配そうに声をかけてきた。


「え」


「難しい顔してずっと考え込んでますけど……」


    不安な顔をするエリーナに、カールはふっと苦笑を零した。


「なんでもないよ、妻に心配かけるなんて駄目な夫だな」


    ちゅ、とエリーナの唇にキスを落とすと、エリーナは顔を赤くして俯く。


 「今日は一緒に外出しよう」


「えっ」


    カールの言葉にエリーナは驚く。今まで一緒に外出したことはなかったけれど、今、エリーナを屋敷に置いておくことは不安に思えた。


「すぐに出かける。馬車を用意してくれ」


「かしこまりました」


    執事に声をかけて、カールはエリーナの手を引き屋敷を後にした。
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