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束縛?

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    ライと仕事の話をするため、さすがにエリーナを膝の上から降ろして部屋で待っているように言った。


「カール。お前、エリーナ夫人を束縛してるのか?」


    コーヒーを飲みながら怪訝な表情で苦言してきたライに、カールは涼しい顔つきでさらりと言った。


「束縛? まさか。どんなときでも側においておきたいだけだよ」


「それを束縛っていうんじゃないか? エリーナ夫人の負担になってなきゃいいけどな」


「お前には関係ないことだろう」


    書類にサインをしながらライは苦笑して軽く肩を竦める。


「まあ、親友の俺としてはお前が幸せそうで何よりだよ。これでも色々と心配してたんだからな」


    意味深な口調で言われ、カールの眉根がかすかに動く。


    カールはエリーナに対しての愛情が大きすぎると自負している。


    性欲も愛情も自分で制御できないくらいに。


    そばにいないと寂しいー。まるで子供のよう感情だ。


    エリーナは純粋で何も知らないから、よけいに依存し暴走してしまう。


    カールははじめて幸せな人生だと思えている。


    エリーナという女性と出会い、愛したから。


「俺はただエリーナ夫人に何かあったとき、お前のことが心配だ。あの時のようにー」


「大丈夫だ。過去のことは関係ない」

    
    言葉を遮って、真っ直ぐにライの顔を見ながらはっきりと口にした。


    ライはまだ納得のいかない顔つきをしていたが、話を無理矢理終わらせた。


    カールの過去は笑って話せるものではなかった。


    まだエリーナにも過去のことは話していない。


    エリーナがどうしても聞きたいといえば話すかもしれないが、それまでは話す気もなかった。


    ライの心配している通り、エリーナを失ったらカールはきっと壊れてしまうだろう。


    だから過剰にエリーナの体調を気遣うし、極力人目には晒したくない。


    叶うならカールの腕の中にずっといてほしい。


    外出するときは仕方ないと諦めているが、今後も屋敷にいるときはそうするつもりだ。


    とくにヴァレリー公爵が尋ねてきて以来、カールの心が燻っている。


    ライのいう通り束縛しているのだろう。


    エリーナ自身がそう思っていないだけで、ついさっきも普通の人からみればおかしな光景だが、エリーナは恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうな顔でカールの膝の上に座っていた。


    カールの中にある独占欲に気づいたら、エリーナはどう思うだろうか。


    怖いと思われるかも知れない。


    それでも、カールはカールのやり方でエリーナを愛していく。


「話変わるけど、この前どうだった? エリーナ夫人が酒飲んだ後」


    ニヤリと口元に笑みを浮かべたライがいつものふざけた口調に戻って、カールも頭を切り替える。


「……さんざん煽られて朝までぐっすり眠っていたよ」


「あ、はは。相当強い酒だったからなー」


    そういえばライにエリーナがキスする可愛い姿を見せてしまったのだ。今更ながらふつふつと怒りが湧き上がった。


「いきなりそんなものを飲ませる奴があるか。いいか? 二度と私のいないところでエリーナに酒を飲ませないでくれ」 


「はいはい、わかりましたよ」


    少しも反省していないような素振りをみせるライを睨め付け、カールはすっかり覚めきったコーヒーを口に含んだ。   


    


    

    


    

        




    


    


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