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警鐘 1

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    ヴァレリー公爵が帰ってからもカールはブランデーを飲んでいた。


「カール様、大丈夫ですか? だいぶ飲んでますけど」


「ん? ああ。大丈夫だよ。エリーナもう遅いから先に寝なさい」


    エリーナは小さくため息を吐いた。やっぱり今夜も一人かと自室に引き上げようとした時。


「エリーナ」


「はい?」


    呼び止められて振り返ると、いきなり腕を掴まれてソファーの上に押し倒された。


    突然のことにエリーナは目を丸くする。


「カ、カール様!? なにをっ、んっ」


    いきなり深く口付けをされてエリーナは戸惑う。ブランデーの味なのかほんのりと甘い味がする。キスをされながら性急な仕草でドレスを脱がされ、エリーナは目を剥いた。


「ま、待ってくださいっ、こ、こんなところでっ」


「待てない。私は今苛ついているんだ」


    コルセットも脱がされて乳房が外気に晒される。明るく照らされたままの状態で肌を晒すのはどうしようもなく恥ずかしかった。


    手で隠そうとするけれど、あっさりとその手は剥がされてしまう。


「んっ、ふっ」


    貪るようなキスをされ、乳房を揉まれエリーナは身悶えた。


「エリーナ。私が不在の時はヴァレリー公爵を屋敷に入れないでくれ」


「え、ど、どうしてですか? ヴァレリー公爵様は、カール様のお知り合いなんですよね?」


    きょとんと目を丸くするとカールは唖然とした眼差しを向けてくる。


「君はー男というものがどういう生き物か分かっていない」


    いきなり何を言い出すのだろう。困惑の眼差しを向けるとカールは劉備を寄せて、ギュッとエリーナの両手首を掴み身動きが取れない状態にされた。


「い、いたっ……」


 「私を払いのけることができるか?」


    いつもよりも冷たい口調で言われて、エリーナは怖くなりふるふると頭を振った。


    力を入れてもがいてみても、がっしりとした大人の男の人に細身のエリーナでは太刀打ちできるはずがない。


    今までもこうしてカールに押し倒されることはあったけれど、怖いと思ったことはなかった。


 「私が本気をだせば君のことを簡単に力でどうとでもできる」


    掴まれていた手首が離れる。そこはうっすらと赤くなっていた。


「私のような男ばかりではない。無理矢理力でどうにかしようというのも中にはいる。分かったか? よく知りもしない男と二人きりになるな」


「は、はい……」


 「ーすまない。君を怖らがせるつもりはなかったがー」


    思わずエリーナの瞳からポロポロと涙が溢れてしまい、カールがはっと我に返り慌てて弁解した。


「い、いえ。すみません。私が、何も、知らないばかりに……」


    エリーナにとって男の人というのはカールだけだった。


    他の男の人との交流などなくて、初めてがカールだった。


    優しくて紳士的。


    ヴァレリー公爵も優しそうな人だった。カールに言われなければエリーナは警戒心も持たずにいただろう。


    疑ってはいけないだろうけれど、もし、ヴァレリー公爵に同じことをされたらー。


    想像してしまいエリーナは身を震わせた。


    頬に軽くキスをしてカールはコルセットをとり、もう一度着せようとする。


「カ、カール様……?」


「部屋に戻ろう。今夜はもう休んだほうがいい」


    エリーナは考えるより先に手が伸びていた。


「い、嫌ですっ」


「っ、エリーナ?」


    驚くカールにエリーナは顔を真っ赤にしながら縋った。


「こ、このまま、抱いて、ください」


「っつー……たった今、君を怖がらせたばかりだろう? だから私はー」


「それは、カール様が男の人とはどういう人か、教えてくれただけで、だから、あのっ……」


    必死で気持ちを伝えようとするエリーナの唇を、カールは堪えきれずに塞いだ。


「ん、ふっ……」


    濃厚なキスをされて、全身の力が抜けていく。


「怖がらせた分、とことん、優しくするー」


    耳元で囁かれて、甘い痺れが全身に駆け巡った。





    


    


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