[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜

くみ

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新妻のお披露目

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    エリーナはドキドキしていた。


「お、おかしくないかしら、ユリア」


「とってもお綺麗ですわ。エリーナ夫人」


    鏡の前で何度もおかしなところがないか確かめる。


「さ、ホールへむかいましょう」


「え、ええ……」


    エリーナは白色に淡い水色を重ねたドレスを着ていた。裾には何重ものフリルがあしらわれていて、ふわりと広がっており少し歩きづらい。


    このドレスはカールがエリーナのために用意してくれたものだ。


    エリーナはつい先日の会話を思い出していた。


「パーティーですか?」


「ああ。君をお披露目するパーティーだ。ただ君は私の隣で笑っていてくれればいい」


    最初聞かされたときは自分に務まるか不安だったけれど、でも、ようやくカールの妻として役に立てる時が来たのだ。


「その日は私の友人や大勢の貴族仲間が来る」


「だ、大丈夫ですっ! カール様のご友人やお仲間に気に入られるように頑張ります」


    気合いを入れるエリーナに対して、カールはどこか不安そうな面持ちをしていた。


 (やっぱり私に務まるか不安に思ってるのよね)


    大勢の人の前に出るのははじめてのことだけれど、エリーナは隣にカールがいてくれるだけでも安心できる。


    ホールにたどり着くとそこにはすでに大勢の客人がいた。


    それぞれお酒を手に談笑をしている人々を眺め、エリーナはくらりと目眩がしそうになった。


 「来たか、エリーナ……」


    エリーナに気づいたカールがピタリと足を止め、驚きの眼差しでエリーナを見つめている。


「あ、あの? あ。ど、どこかおかしいところでもありますか?」


    エリーナは慌てて自分の姿をもう一度確認してみると、カールが慌てて否定した。


「ああ。違うんだ。すまない。ただ、私の想像以上によく似合っていて……綺麗だよ」


    褒められてエリーナはかっと頬を染める。


「あ、ありがとうございます……」


    数秒の沈黙の後やけに明るい声が割って入った。


「これはこれは。エリーナ夫人。ようやくあなたにお目にかかれて光栄です。期待を裏切らず、見目麗しい」


「あ、あの……」


    陽気に話しかけてくる男性にエリーナは戸惑っていると、カールが煩わしそうにため息を吐いた。


「近すぎだ、ライ」


    ぱっとエリーナから引き離されたライは、軽く肩をすくめた。


「これは失礼を。あなたに会えるのを楽しみにしておりました。カールの友人でライ・アレクサンドル公爵です。ライと気軽に呼んでくださいね」


    ニッコリと爽やかな笑みを見せ、握手を求められる。


    エリーナの心臓はバクバクとしていたが、気付かれないように深呼吸をして笑顔で握手をした。


「初めまして。この度はわざわざお越しくださりありがとうございます。ごゆっくり楽しんでいってくださいね」


    挨拶を終えると会場中の視線がエリーナに集中していた。


「ほー。あれが噂の夫人か? 綺麗だな」


「まぁ、あの方がフォード公爵様の夫人ですって?」


「噂では暗くて弱々しい夫人だと聞いていたがー」


    噂の的になっているわーみんなが見てる ー?


「エリーナ。大丈夫か?」


「え、ええ。平気です」


    いけない。よけいな心配をかけないようにしなければ。


    それからエリーナとカールはそれぞれ客人に挨拶をしていた。


    エリーナを物珍しい物でもみるかのような視線に怖気つきそうになるが、その度にカールの優しい眼差しが大丈夫だと言ってくれるような気がして、エリーナは終始笑顔で対応できた。


    これだけの人を集めるカールの人材にエリーナは改めて感心する。


「体調、大丈夫?」


「アレクサンドル公爵様」


    窓際に立ちぼーっとしていたらライに声をかけられた。


    カールは政治家だという男性と真剣にはなしをしているようで、エリーナは隅で控えていたのだ。


「え、ええ。大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」


「アレクサンドルなんて堅苦しく呼ばないでよ。ライでいいから」


    ぱちん、とウインクするライに、エリーナはどう返していいものか戸惑ってしまう。


「あ、あの……」


「あははっ、本当に可愛い反応」


    ライは声を上げて笑っている。カールとは正反対の性格のようだと思っていたら、ふとライの顔つきが真面目なものになる。


    声を潜めてエリーナに言った。


「色々と気をつけた方がいいよ。君はもう注目の的なんだから」


「えー?」


    どういうことだろうと疑問に思ってライを見上げると、その後ろでカールが怖い顔つきで睨んでいてエリーナはドキッとする。


「ライ。何してる?」


「あはは。やだなー。ボーッとしてたから気分でも悪いのかと心配したんだよ」


    大仰に肩をすくめるライにカールは嘆息してエリーナに向き直った。


「まったく。油断も隙もない。エリーナ。私はまだここにいるが、そろそろ戻るか?」


「え、ええ。そうね」


「ではユリアと戻るがいい」


    エリーナは頃合いを見計らってユリアとホールを後にした。


    廊下を少し歩いてエリーナはその場に倒れそうになる。


「エリーナ夫人!? 大丈夫ですか?」


「え、ええ。大丈夫。疲れがでただけですわ」


   ライの言葉が少し気になったけれど、とりあえず大きな役割を果たせることができてほっとした。

   

    


   

    


    




    


    
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