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新妻のお披露目
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エリーナはドキドキしていた。
「お、おかしくないかしら、ユリア」
「とってもお綺麗ですわ。エリーナ夫人」
鏡の前で何度もおかしなところがないか確かめる。
「さ、ホールへむかいましょう」
「え、ええ……」
エリーナは白色に淡い水色を重ねたドレスを着ていた。裾には何重ものフリルがあしらわれていて、ふわりと広がっており少し歩きづらい。
このドレスはカールがエリーナのために用意してくれたものだ。
エリーナはつい先日の会話を思い出していた。
「パーティーですか?」
「ああ。君をお披露目するパーティーだ。ただ君は私の隣で笑っていてくれればいい」
最初聞かされたときは自分に務まるか不安だったけれど、でも、ようやくカールの妻として役に立てる時が来たのだ。
「その日は私の友人や大勢の貴族仲間が来る」
「だ、大丈夫ですっ! カール様のご友人やお仲間に気に入られるように頑張ります」
気合いを入れるエリーナに対して、カールはどこか不安そうな面持ちをしていた。
(やっぱり私に務まるか不安に思ってるのよね)
大勢の人の前に出るのははじめてのことだけれど、エリーナは隣にカールがいてくれるだけでも安心できる。
ホールにたどり着くとそこにはすでに大勢の客人がいた。
それぞれお酒を手に談笑をしている人々を眺め、エリーナはくらりと目眩がしそうになった。
「来たか、エリーナ……」
エリーナに気づいたカールがピタリと足を止め、驚きの眼差しでエリーナを見つめている。
「あ、あの? あ。ど、どこかおかしいところでもありますか?」
エリーナは慌てて自分の姿をもう一度確認してみると、カールが慌てて否定した。
「ああ。違うんだ。すまない。ただ、私の想像以上によく似合っていて……綺麗だよ」
褒められてエリーナはかっと頬を染める。
「あ、ありがとうございます……」
数秒の沈黙の後やけに明るい声が割って入った。
「これはこれは。エリーナ夫人。ようやくあなたにお目にかかれて光栄です。期待を裏切らず、見目麗しい」
「あ、あの……」
陽気に話しかけてくる男性にエリーナは戸惑っていると、カールが煩わしそうにため息を吐いた。
「近すぎだ、ライ」
ぱっとエリーナから引き離されたライは、軽く肩をすくめた。
「これは失礼を。あなたに会えるのを楽しみにしておりました。カールの友人でライ・アレクサンドル公爵です。ライと気軽に呼んでくださいね」
ニッコリと爽やかな笑みを見せ、握手を求められる。
エリーナの心臓はバクバクとしていたが、気付かれないように深呼吸をして笑顔で握手をした。
「初めまして。この度はわざわざお越しくださりありがとうございます。ごゆっくり楽しんでいってくださいね」
挨拶を終えると会場中の視線がエリーナに集中していた。
「ほー。あれが噂の夫人か? 綺麗だな」
「まぁ、あの方がフォード公爵様の夫人ですって?」
「噂では暗くて弱々しい夫人だと聞いていたがー」
噂の的になっているわーみんなが見てる ー?
「エリーナ。大丈夫か?」
「え、ええ。平気です」
いけない。よけいな心配をかけないようにしなければ。
それからエリーナとカールはそれぞれ客人に挨拶をしていた。
エリーナを物珍しい物でもみるかのような視線に怖気つきそうになるが、その度にカールの優しい眼差しが大丈夫だと言ってくれるような気がして、エリーナは終始笑顔で対応できた。
これだけの人を集めるカールの人材にエリーナは改めて感心する。
「体調、大丈夫?」
「アレクサンドル公爵様」
窓際に立ちぼーっとしていたらライに声をかけられた。
カールは政治家だという男性と真剣にはなしをしているようで、エリーナは隅で控えていたのだ。
「え、ええ。大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」
「アレクサンドルなんて堅苦しく呼ばないでよ。ライでいいから」
ぱちん、とウインクするライに、エリーナはどう返していいものか戸惑ってしまう。
「あ、あの……」
「あははっ、本当に可愛い反応」
ライは声を上げて笑っている。カールとは正反対の性格のようだと思っていたら、ふとライの顔つきが真面目なものになる。
声を潜めてエリーナに言った。
「色々と気をつけた方がいいよ。君はもう注目の的なんだから」
「えー?」
どういうことだろうと疑問に思ってライを見上げると、その後ろでカールが怖い顔つきで睨んでいてエリーナはドキッとする。
「ライ。何してる?」
「あはは。やだなー。ボーッとしてたから気分でも悪いのかと心配したんだよ」
大仰に肩をすくめるライにカールは嘆息してエリーナに向き直った。
「まったく。油断も隙もない。エリーナ。私はまだここにいるが、そろそろ戻るか?」
「え、ええ。そうね」
「ではユリアと戻るがいい」
エリーナは頃合いを見計らってユリアとホールを後にした。
廊下を少し歩いてエリーナはその場に倒れそうになる。
「エリーナ夫人!? 大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫。疲れがでただけですわ」
ライの言葉が少し気になったけれど、とりあえず大きな役割を果たせることができてほっとした。
「お、おかしくないかしら、ユリア」
「とってもお綺麗ですわ。エリーナ夫人」
鏡の前で何度もおかしなところがないか確かめる。
「さ、ホールへむかいましょう」
「え、ええ……」
エリーナは白色に淡い水色を重ねたドレスを着ていた。裾には何重ものフリルがあしらわれていて、ふわりと広がっており少し歩きづらい。
このドレスはカールがエリーナのために用意してくれたものだ。
エリーナはつい先日の会話を思い出していた。
「パーティーですか?」
「ああ。君をお披露目するパーティーだ。ただ君は私の隣で笑っていてくれればいい」
最初聞かされたときは自分に務まるか不安だったけれど、でも、ようやくカールの妻として役に立てる時が来たのだ。
「その日は私の友人や大勢の貴族仲間が来る」
「だ、大丈夫ですっ! カール様のご友人やお仲間に気に入られるように頑張ります」
気合いを入れるエリーナに対して、カールはどこか不安そうな面持ちをしていた。
(やっぱり私に務まるか不安に思ってるのよね)
大勢の人の前に出るのははじめてのことだけれど、エリーナは隣にカールがいてくれるだけでも安心できる。
ホールにたどり着くとそこにはすでに大勢の客人がいた。
それぞれお酒を手に談笑をしている人々を眺め、エリーナはくらりと目眩がしそうになった。
「来たか、エリーナ……」
エリーナに気づいたカールがピタリと足を止め、驚きの眼差しでエリーナを見つめている。
「あ、あの? あ。ど、どこかおかしいところでもありますか?」
エリーナは慌てて自分の姿をもう一度確認してみると、カールが慌てて否定した。
「ああ。違うんだ。すまない。ただ、私の想像以上によく似合っていて……綺麗だよ」
褒められてエリーナはかっと頬を染める。
「あ、ありがとうございます……」
数秒の沈黙の後やけに明るい声が割って入った。
「これはこれは。エリーナ夫人。ようやくあなたにお目にかかれて光栄です。期待を裏切らず、見目麗しい」
「あ、あの……」
陽気に話しかけてくる男性にエリーナは戸惑っていると、カールが煩わしそうにため息を吐いた。
「近すぎだ、ライ」
ぱっとエリーナから引き離されたライは、軽く肩をすくめた。
「これは失礼を。あなたに会えるのを楽しみにしておりました。カールの友人でライ・アレクサンドル公爵です。ライと気軽に呼んでくださいね」
ニッコリと爽やかな笑みを見せ、握手を求められる。
エリーナの心臓はバクバクとしていたが、気付かれないように深呼吸をして笑顔で握手をした。
「初めまして。この度はわざわざお越しくださりありがとうございます。ごゆっくり楽しんでいってくださいね」
挨拶を終えると会場中の視線がエリーナに集中していた。
「ほー。あれが噂の夫人か? 綺麗だな」
「まぁ、あの方がフォード公爵様の夫人ですって?」
「噂では暗くて弱々しい夫人だと聞いていたがー」
噂の的になっているわーみんなが見てる ー?
「エリーナ。大丈夫か?」
「え、ええ。平気です」
いけない。よけいな心配をかけないようにしなければ。
それからエリーナとカールはそれぞれ客人に挨拶をしていた。
エリーナを物珍しい物でもみるかのような視線に怖気つきそうになるが、その度にカールの優しい眼差しが大丈夫だと言ってくれるような気がして、エリーナは終始笑顔で対応できた。
これだけの人を集めるカールの人材にエリーナは改めて感心する。
「体調、大丈夫?」
「アレクサンドル公爵様」
窓際に立ちぼーっとしていたらライに声をかけられた。
カールは政治家だという男性と真剣にはなしをしているようで、エリーナは隅で控えていたのだ。
「え、ええ。大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」
「アレクサンドルなんて堅苦しく呼ばないでよ。ライでいいから」
ぱちん、とウインクするライに、エリーナはどう返していいものか戸惑ってしまう。
「あ、あの……」
「あははっ、本当に可愛い反応」
ライは声を上げて笑っている。カールとは正反対の性格のようだと思っていたら、ふとライの顔つきが真面目なものになる。
声を潜めてエリーナに言った。
「色々と気をつけた方がいいよ。君はもう注目の的なんだから」
「えー?」
どういうことだろうと疑問に思ってライを見上げると、その後ろでカールが怖い顔つきで睨んでいてエリーナはドキッとする。
「ライ。何してる?」
「あはは。やだなー。ボーッとしてたから気分でも悪いのかと心配したんだよ」
大仰に肩をすくめるライにカールは嘆息してエリーナに向き直った。
「まったく。油断も隙もない。エリーナ。私はまだここにいるが、そろそろ戻るか?」
「え、ええ。そうね」
「ではユリアと戻るがいい」
エリーナは頃合いを見計らってユリアとホールを後にした。
廊下を少し歩いてエリーナはその場に倒れそうになる。
「エリーナ夫人!? 大丈夫ですか?」
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