[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜

くみ

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    やってしまったー。


    カールはひどく後悔していた。


    エリーナを何度も抱いた翌日、エリーナは熱を出してしまった。


    医師によると疲労によるものらしく、あまり無理をさせないことと言われた。


    その疲労の原因が自分にあることは百も承知だ。


「エリーナ」


「は、はいっ」


    ビクッとエリーナの細い肩が揺れる。カールは少し傷つきながらも冷静に言った。
 

「今夜はこの後客人が来ることになっている。たぶん深夜までかかるだろうからエリーナは気にせずに自室で寝ていてくれ」


 「で、でしたら私もご挨拶致します。何かできることもあれば……」


    エリーナなりに夫人としての役目をしようとしてくれているのだろう。

 
「エリーナは休んでいてほしい。体がまだ辛いだろう?」


    かっとエリーナの頬が赤くなり俯いてしまう。


「気持ちは嬉しいよ。エリーナが元気な時にまた頼みたいが、今は休んでほしい」


「わかりましたー」


    食事を終えたエリーナはあからさまに肩を落として、自室に戻っていった。


    納得がいかないような顔をしていたが、わざと気づかないふりをしてしまった。


    またもあの夜からカールはエリーナと夜を過ごしていない。


    エリーナは触れてこないことをまた自分のせいだと思っているかもしれない。


 「はあ……」


 「残念。夫人はもう戻られてしまったか」


    ふいに聞こえてきた声にカールは面倒くさそうに返事をした。


「相変わらず忙しそうだな、ライ」


    今夜の客人である友人のライ・アレクサンドルがおかげさまで、とニッコリと笑顔をみせテーブルに着く。


    ライはカールの酒飲み仲間だ。


    パーティーなどでよく一緒になり、どういうわけか意気投合した。


    明るく気さくで整った顔立ちをしている好青年だ。公爵家で独身。


    舞踏会に行けば言い寄ってくる貴族令嬢は数知れず。本人は結婚する気がないらしいが。


「ようやくお前との時間がとれて嬉しいよ。お前はこっちから連絡しないと放置するからな」


    嫌味っぽくいうライにカールはしれっと言ってのけた。


「新婚だ。気を利かせろ」


「その夫人とはいつになったら会わせてくれるんだ? 」


「結婚式のときにあっただろ」


「遠目にな。そのときに紹介してくれてもいいものを。俺どころか誰にも紹介してないんだろ? お前、過保護にもほどがあるぞ」


「自覚はしている」

    
    エリーナの引きこもり体質はカールにとってもありがたいことだった。


    性欲が強い上に独占欲も強いらしい。


    性欲が強いことは自覚していたが、ここまで独占欲が強いとは思わなかった。


    エリーナはこのままではけないと思っているようだが、カールにとってはこのままでいてほしいと思っている。


    エリーナの目に映る男は夫であるカールだけで十分だ。


    ライに紹介などしたらこの男のことだ。色々とからかうに決まっている。


「それよりも噂になってるぞ? フォード公爵は本当に結婚したのかって。今まで何人の令嬢に言われたことか。偽装結婚じゃないかなんて噂も広まってる」


    普通は結婚したら派手にパーティーをしてお披露目するものだが、カールはエリーナの体調も配慮して一切そういうことはするつもりはなかった。


「お前に惚れてるとある令嬢なんかは、偽造だと決めつけてお前にアプローチをかけようと目論んでる」


    ライが意味ありげに言って、カールは片眉を上げた。


「お、怒るなよ。俺は、変な噂が広がる前になんとかしろって言いたいだけだ。俺がとばっちり受けていちいち面倒くさい」


    カールはエリーナの父であるカフラ男爵から引きこもりで病弱な令嬢がいると聞いて、エリーナに興味を持った。


    その時に縁談話がいくつか来ていて、ほぼ決まりかけているようなものもあったが全て断った。


    そしてすぐに男爵のもとに縁談を持ちかけたのだ。


「まあ恨んでいる令嬢くらいはいるだろうな。だが私にはもうエリーナしか見えない」


「お前にそこまで言わせるなんて、ますますミステリアスな夫人に興味が湧いたな」


    感心するライにカールは眉根を吊り上げ睨んだ。


「じょ、冗談だって。ただ俺は忠告にしにきただけだからな。お前に好意を持っていた令嬢の後始末くらいはしとけってことだ」


    確かに。


    逆恨みでもされてエリーナに危害を加える可能性もある。


「女の嫉妬は恐ろしいぞ? 思い出すだけでぞっとする」


「お前は色々な令嬢に手を出すからだろう」


「あはは、まあ、それを言われると」


    節操のない友人に呆れつつ、カールは思案顔でビールを煽った。
    


    

   

    


    


  


    


    

    


    


    



    


    


    


    


    


    


    



    
   


    
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