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初夜 1
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滞りなくエリーナがフォード公爵のところに嫁ぐ準備は進められた。
純白のウエディングドレスに身を包んだエリーナは、今にも緊張でどうにかなりそうだった。
目立つことが好きではないエリーナは結婚式はしなくてもいいと思っていた。
だがフォード公爵側はそうはいかず、教会で盛大に行うことを余儀なくされたのだ。
結婚式を迎えるまでの間も、フォード公爵は足繁くエリーナのもとに顔をだした。
エリーナのために作られた純白のドレスはフォード公爵が用意してくれたものだ。
エリーナが緊張しないように会う時間を少しずつ増やしていき、結婚式前には二人で食事までできるようになっていた。
だけどほとんどフォード公爵のリードに助けられている感じだ。
少し体調が悪いだけでもエリーナを気遣ってくれて、休ませてくれる。
結婚式場の教会もこの街で一番大きく素敵な教会だ。
フォード公爵の優しさを無駄にしないためにも、今日は絶対に倒れない、と心に誓う。
二人は大勢の参列者が見守る中、儀式を行った。
こんなに大勢の前に出たことがないエリーナの足は震えている。それでいて、履きなれていない十センチ近くはある細いピンヒールの白のパンプスが足をおぼつかなくさせていた。
フォード公爵に腕を添えて彼の顔をみると、大丈夫だというように優しく微笑まれてそれだけで安心した。
最前列にはエリーナの花嫁姿をみて、泣きじゃくるカフラが映り面はゆくなる。
司祭の前に二人で立ち、老齢の司祭が言葉を述べる。
「カール・フォード。エリーナ・ネーデイブを生涯伴侶として愛し、護ることを誓いますか」
「誓います」
はっきりと迷いのない口調でフォード公爵は口にして、続いて司祭はエリーナに向けて述べた。
「エリーナ・ネーデイブ。カール・フォードを生涯伴侶とし、一生愛することを誓いますか?」
「誓います」
声は震えていたけれどどもらずに言えたことにほっとした。
続いて指輪の交換がなされ、エリーナは震える指でフォード公爵の太くごつごつとした薬指に指輪をはめる。
フォード公爵もそっとエリーナの手を取り左薬指に指輪をはめた。
「では、誓いのキスを」
お互い向き合い、フォード公爵がエリーナのヴェールをそっと剥がす。フォード公爵の青い瞳が優しくエリーナを見据えた。
ー誓いのキスをするときは私の目だけをみていればいい。
と事前に言われた通り、エリーナはその綺麗な瞳だけを見つめた。
ふっとフォード公爵が緩く笑み、そしてそっと触れるだけの誓いのキスを交わしたのだった。
参列者からおめでとう! お幸せに! という声があふれ、教会中が祝福に満ちていた。
結婚式とそのあとのパーティーが終わり、ようやく長かった一日が終わった。
二人は近くのホテルに部屋をとっていた。
ここからフォード公爵の屋敷までそう遠くはないが、一日気を張り詰めていたエリーナを気遣ってすぐに休めるように手配してくれたのだ。
今夜がはじめて、フォード公爵と一緒に過ごす夜だった。
緊張のあまり豪華なホテルだということも頭には入ってこなかった。
今日はずっと一緒にいたけれどほとんど二人きりにはなっていない。
二人きりになるなり、フォード公爵の目が熱っぽくエリーナを見据える。
「今日一日気を張り詰めていて疲れただろ?」
「い、いえ。大丈夫です。フォード公爵様が支えてくださったので」
フォード公爵の手がエリーナの頬にそっと手を這わせて優しく言う。
「頬が熱い。熱がでたか? それともこれからのことを考えて熱くなってる?」
意味深な投げかけにエリーナは目を丸くして否定した。
「い、いえ。これはアルコールのせいですっ」
とはいってもほとんど飲んでいない。エリーナはお酒すら飲んだことがなくて、ワインを半分飲んだだけで限界だったのだ。
「そういうことにしておこうか」
ふっとフォード公爵が笑んで、思い出したかのように口にした。
「エリーナ。今夜から私のことはカールと呼べ。いつまでも夫に対してフォード公爵様ではおかしいだろう」
「す、すみません……カ・カール……様」
消え入りそうな声でそう口にするのがやっとだった。名前一つ呼ぶのにこれでは、これから先が思いやられると不安になっていると、フォード公爵は優しくエリーナの頭にポン、と手を乗せた。
「まあ、すぐにとは言わない。君のペースで呼んでくれればいいがー」
ふとそこでフォード公爵-改めカールは少し切羽詰まった口調で言った。
「こちらは我慢できない。君のウエディングドレス姿が綺麗すぎてー。ずっと触れたくてたまらなかった」
綺麗な青い瞳がー欲情に揺らいでいる。
エリーナは身を固くしてカールの口づけに答えた。
純白のウエディングドレスに身を包んだエリーナは、今にも緊張でどうにかなりそうだった。
目立つことが好きではないエリーナは結婚式はしなくてもいいと思っていた。
だがフォード公爵側はそうはいかず、教会で盛大に行うことを余儀なくされたのだ。
結婚式を迎えるまでの間も、フォード公爵は足繁くエリーナのもとに顔をだした。
エリーナのために作られた純白のドレスはフォード公爵が用意してくれたものだ。
エリーナが緊張しないように会う時間を少しずつ増やしていき、結婚式前には二人で食事までできるようになっていた。
だけどほとんどフォード公爵のリードに助けられている感じだ。
少し体調が悪いだけでもエリーナを気遣ってくれて、休ませてくれる。
結婚式場の教会もこの街で一番大きく素敵な教会だ。
フォード公爵の優しさを無駄にしないためにも、今日は絶対に倒れない、と心に誓う。
二人は大勢の参列者が見守る中、儀式を行った。
こんなに大勢の前に出たことがないエリーナの足は震えている。それでいて、履きなれていない十センチ近くはある細いピンヒールの白のパンプスが足をおぼつかなくさせていた。
フォード公爵に腕を添えて彼の顔をみると、大丈夫だというように優しく微笑まれてそれだけで安心した。
最前列にはエリーナの花嫁姿をみて、泣きじゃくるカフラが映り面はゆくなる。
司祭の前に二人で立ち、老齢の司祭が言葉を述べる。
「カール・フォード。エリーナ・ネーデイブを生涯伴侶として愛し、護ることを誓いますか」
「誓います」
はっきりと迷いのない口調でフォード公爵は口にして、続いて司祭はエリーナに向けて述べた。
「エリーナ・ネーデイブ。カール・フォードを生涯伴侶とし、一生愛することを誓いますか?」
「誓います」
声は震えていたけれどどもらずに言えたことにほっとした。
続いて指輪の交換がなされ、エリーナは震える指でフォード公爵の太くごつごつとした薬指に指輪をはめる。
フォード公爵もそっとエリーナの手を取り左薬指に指輪をはめた。
「では、誓いのキスを」
お互い向き合い、フォード公爵がエリーナのヴェールをそっと剥がす。フォード公爵の青い瞳が優しくエリーナを見据えた。
ー誓いのキスをするときは私の目だけをみていればいい。
と事前に言われた通り、エリーナはその綺麗な瞳だけを見つめた。
ふっとフォード公爵が緩く笑み、そしてそっと触れるだけの誓いのキスを交わしたのだった。
参列者からおめでとう! お幸せに! という声があふれ、教会中が祝福に満ちていた。
結婚式とそのあとのパーティーが終わり、ようやく長かった一日が終わった。
二人は近くのホテルに部屋をとっていた。
ここからフォード公爵の屋敷までそう遠くはないが、一日気を張り詰めていたエリーナを気遣ってすぐに休めるように手配してくれたのだ。
今夜がはじめて、フォード公爵と一緒に過ごす夜だった。
緊張のあまり豪華なホテルだということも頭には入ってこなかった。
今日はずっと一緒にいたけれどほとんど二人きりにはなっていない。
二人きりになるなり、フォード公爵の目が熱っぽくエリーナを見据える。
「今日一日気を張り詰めていて疲れただろ?」
「い、いえ。大丈夫です。フォード公爵様が支えてくださったので」
フォード公爵の手がエリーナの頬にそっと手を這わせて優しく言う。
「頬が熱い。熱がでたか? それともこれからのことを考えて熱くなってる?」
意味深な投げかけにエリーナは目を丸くして否定した。
「い、いえ。これはアルコールのせいですっ」
とはいってもほとんど飲んでいない。エリーナはお酒すら飲んだことがなくて、ワインを半分飲んだだけで限界だったのだ。
「そういうことにしておこうか」
ふっとフォード公爵が笑んで、思い出したかのように口にした。
「エリーナ。今夜から私のことはカールと呼べ。いつまでも夫に対してフォード公爵様ではおかしいだろう」
「す、すみません……カ・カール……様」
消え入りそうな声でそう口にするのがやっとだった。名前一つ呼ぶのにこれでは、これから先が思いやられると不安になっていると、フォード公爵は優しくエリーナの頭にポン、と手を乗せた。
「まあ、すぐにとは言わない。君のペースで呼んでくれればいいがー」
ふとそこでフォード公爵-改めカールは少し切羽詰まった口調で言った。
「こちらは我慢できない。君のウエディングドレス姿が綺麗すぎてー。ずっと触れたくてたまらなかった」
綺麗な青い瞳がー欲情に揺らいでいる。
エリーナは身を固くしてカールの口づけに答えた。
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