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山賊に遭遇しました。
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アムカに入って十三日経ち、国境まであと少しというところで私達は一台の馬車が山賊に襲われているのに遭遇した。
助けないわけにもいかず、私はレオンに山賊を追い払ってくれるように頼んだ。
『わかったー』
レオンが山賊達の中に突っ込んで行くと、彼らは叫び声を上げ慌てて逃げ出した。
私はジーンと一緒に、襲われていた馬車に近づいた。
馬車の周りにはこと切れた騎士が三人転がっていた。
もう少し早く通りかかっていれば、助けられたかもしれない……。
何とも言えない思いで私が騎士達を見つめていると、ガタンという音が馬車の方から聞こえた。
私がそちらを向くと、馬車の扉が開いていて、中から目の覚めるような美少年が現れたのだった。
少年は倒れている騎士達の姿を見ると顔を青ざめさせた。
それから私を見て「お前は賊の仲間か?!」と言った。
「違う! 私は通りかかった冒険者よ!」
私がそう言うと、少年はホッとしたように顔を緩め、それから私に「賊はどうしたんだ?」と訊いた。
「私の従魔が追い払ったわ」
「そうか……」
少年はそう言って考えこんでしまった。
私はそういえば、と周りを見回した。
山賊を蹴散らしていたレオンが見当たらない。どこに行ったのだろう。
「レオンー!」
私が大声で呼ぶと、少年がビクッとしてこちらを見た。
驚かしてしまったようだ。
『あるじー、追い払ったよー』
レオンの声が聞こえて見回すと、遠くからこちらに向かって来ているのが見えた。
山賊を追いかけてまで遠くに追い払ったようだ。
私は戻って来たレオンを撫でて「ありがとうね」と褒めた。
それから私達をガン見している少年を振り返り、「怪我はない?」と訊いた。
「あ、ああ、怪我はない」
「それで、これからどうする?」
「……悪いが、ロゼス王国まで護衛を頼めないだろうか」
「わかった。ロゼス王国まで送るわ」
行き先は同じだし、国境も近い。
それに、このまま放って行くわけにもいかない。
幸い、馬車と馬は無事だし……と思ったところで、私は御者はどうしたのかと思い至った。
御者は死んでいた。矢で射殺されたようだ。
ということは、私が御者をやらなくてはならないのか。
無理だ。やったことない。
「私は御者やったことないから、できないんだけど……」
「そうか。では馬車は捨てるしかないな」
少年はあっさり決断を下した。
貴族らしい少年が御者などやったことないのは明白だ。その決断は正しい。
けれど私にはアイテムボックスがある。
「私のアイテムボックスに入れればいいよ」
「そうか。助かる」
「この騎士さん達もアイテムボックスに入れて行くね」
「……ああ、そうだな」
そうして私は馬車と騎士達をアイテムボックスに仕舞い、出発の準備を始めるのだった。
助けないわけにもいかず、私はレオンに山賊を追い払ってくれるように頼んだ。
『わかったー』
レオンが山賊達の中に突っ込んで行くと、彼らは叫び声を上げ慌てて逃げ出した。
私はジーンと一緒に、襲われていた馬車に近づいた。
馬車の周りにはこと切れた騎士が三人転がっていた。
もう少し早く通りかかっていれば、助けられたかもしれない……。
何とも言えない思いで私が騎士達を見つめていると、ガタンという音が馬車の方から聞こえた。
私がそちらを向くと、馬車の扉が開いていて、中から目の覚めるような美少年が現れたのだった。
少年は倒れている騎士達の姿を見ると顔を青ざめさせた。
それから私を見て「お前は賊の仲間か?!」と言った。
「違う! 私は通りかかった冒険者よ!」
私がそう言うと、少年はホッとしたように顔を緩め、それから私に「賊はどうしたんだ?」と訊いた。
「私の従魔が追い払ったわ」
「そうか……」
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私はそういえば、と周りを見回した。
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「レオンー!」
私が大声で呼ぶと、少年がビクッとしてこちらを見た。
驚かしてしまったようだ。
『あるじー、追い払ったよー』
レオンの声が聞こえて見回すと、遠くからこちらに向かって来ているのが見えた。
山賊を追いかけてまで遠くに追い払ったようだ。
私は戻って来たレオンを撫でて「ありがとうね」と褒めた。
それから私達をガン見している少年を振り返り、「怪我はない?」と訊いた。
「あ、ああ、怪我はない」
「それで、これからどうする?」
「……悪いが、ロゼス王国まで護衛を頼めないだろうか」
「わかった。ロゼス王国まで送るわ」
行き先は同じだし、国境も近い。
それに、このまま放って行くわけにもいかない。
幸い、馬車と馬は無事だし……と思ったところで、私は御者はどうしたのかと思い至った。
御者は死んでいた。矢で射殺されたようだ。
ということは、私が御者をやらなくてはならないのか。
無理だ。やったことない。
「私は御者やったことないから、できないんだけど……」
「そうか。では馬車は捨てるしかないな」
少年はあっさり決断を下した。
貴族らしい少年が御者などやったことないのは明白だ。その決断は正しい。
けれど私にはアイテムボックスがある。
「私のアイテムボックスに入れればいいよ」
「そうか。助かる」
「この騎士さん達もアイテムボックスに入れて行くね」
「……ああ、そうだな」
そうして私は馬車と騎士達をアイテムボックスに仕舞い、出発の準備を始めるのだった。
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