夢の彼方に生まれ変わって

アムカに入国しました。

　アムカに入った私は、再びレオンに乗って移動を開始した。
　そして時々街や村に泊まりながらロゼス王国との国境に向かっていた。
　ロゼス王国に行ってもレイには会えないかもしれない。
　けれどドラゴンが討伐対象にならずに神獣として崇められている国というのは興味があった。
　ロゼス王国でドラゴンはどのように暮らしているのだろうか。



　その夜、いつものようにレイと夢の中で会い、ロゼス王国にだいぶ近づいたことを告げると、レイはちょっと顔をしかめて悔しそうに「僕も行きたいのに」と言った。

「ハルカに会いに行きたいのに、なんで目が覚めると忘れてしまうんだろう……」
「それは仕方のないことなの」

　夢魔は夢の中でしか会えないもの。夢から覚めると夢魔に関することは忘れてしまう。
　それでも、ロゼス王国のことを覚えていてくれたらと私は何度も言い聞かせる。

「私のことを忘れていてもいいから、ロゼス王国のことは思い出してね」
「やだっ！　ハルカのことも覚えていたい」

　レイは私にしがみついて、「忘れたくない」と言った。
　私も覚えていてほしいけど、それはきっと無理なのだろう。
　レイが安全に生活しているのなら、会うのは夢の中だけでもいい。
　けれどいつまで安全なのかわからない。
　ロゼス王国以外では、ドラゴンは討伐対象になっているのだから。

「ハルカに会いたい……」
「……ロゼス王国で待ってるね」
「絶対、会いに行く」
「うん。待ってる」

　この約束も何度目だろうか。
　いつか、果たされる時が来るといいな。
　そう思いながら夢が終わるまで、私はレイと一緒に過ごすのだった。