上 下
3 / 46

捨てられました。

しおりを挟む
 やばい。見捨てられた。
 そう気づいたのは、ドラゴンがいなくなってから(たぶん)二日後のことだった。

 もっと早く気付けって感じだけど、私は赤ちゃんだから眠ってばかりいて、親が帰って来ないことに気づいたのがついさっきだったのだ。

 お腹すいた……。
 こんなことになるなら、あの時無理にでもウサギを食べるんだったと後悔したけど、今更どうにもならない。
 時間だけが過ぎて、空腹感は増すばかりだ。

 ――また死んじゃうのかな……。
 それならそれでいいような気がした。
 今度生まれ変わったら、また前世のお父さんとお母さんの子供になりたいと思った。



 私は夢の中を漂っていた。
 ああ、夢魔に戻れた。そう思った。

 夢の中を渡り歩き、人間の精気を取り込んでいく。
 身体が満たされていくのを感じた。

 そうして私は眠りながら精気を得る生活を続け、すくすくと成長していった。
 同時に、夢の中の人間達を見てここが地球とは違う世界だということを思い知らされたのだった。
 やっぱり異世界転生。
 私はドラゴンだったのだ。

 そして生まれて数年がたった頃、私は自然に人型に変身できるようになっていた。
 それからは、昼は洞窟を出て森の中で果物を取って食べ、夜は夢の中で精気を取り込む生活を送るようになった。

 そうして数年が経ったある日、私はこの世界の現実で初めて人間に出会ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...