ドラゴン観察日記

早瀬 竜子

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トカゲ?

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 森に薬草採りに行った帰り、私は何かに躓いて転んだ。
 足元を見たら、卵が一つ転がっていた。
 何の卵だろうと手を伸ばしたら、卵が揺れた。

「!」

 私は驚いて手を引っ込めた。それからジッと観察する。
 卵にはヒビが入っていた。私が蹴飛ばしたせいかもしれない。
 もしかして、このままじゃ死んじゃうかも。
 割れた所を糊でくっつけたらどうだろう? それともこのまま見なかったことに……。
 迷っていると卵が大きく揺れて、中からコツコツ音がした。

「生まれる……?」

 どうしよう。変なものが出てきたら。
 とりあえず隠れよう。

 木の陰に移動してから様子を見る。
 あ、そうだ!
 思いついて、大きめの石を拾う。ヤツが攻撃してきた時のために、撃退する準備もしておこう。
 準備万端、さあいつでもいいぞと見ていたら、ようやく卵が割れ始めた。

 ……トカゲ?

 割れた卵から顔を出したのは、角の生えた真っ白なトカゲだった。

 そのまま見ていると、トカゲがバランスを崩しながら卵から飛び出てきた。
 ……飛んだのだ。すぐに落ちたが。

 ――そのトカゲには羽が生えていた……。




「珍しいトカゲ……」

 トカゲなら危険はないだろうと近づいてみる。
 すぐそばにしゃがんで見ていると、トカゲは私の足元の匂いを嗅ぐような仕草をしてから顔を上げた。

 あ、可愛い……!

 縦長の瞳孔の黄色い目が、不思議そうに見つめている。そのキョトンとした様子が愛らしかった。

「お前、親はどうしたの?」

 話しかけると、トカゲはキュ? と鳴いて首を傾げた。

「~~可愛い……!」

 あまりの可愛さに指で小さな角を撫でると、トカゲは猫のように頭を擦りつけてきた。

「可愛い!」
「キュ」

 トカゲが返事をするように鳴く。それがまた可愛かった。
 ゆっくりと手で掬って抱き上げると、トカゲは甘えるように体を擦りつけてきた。

「キューちゃん家に帰ろうね」

 トカゲの頭を撫でながら立ち上がって、私は家に帰るべく歩き出した。
 頭の中は、母に何と言ってこのトカゲを飼う許可を貰おうかと、それだけでいっぱいだった。
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