タルパと夜に泣く。

seitennosei

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タルパと夜に泣く。

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「はっ…。」
耳元で漏らされた清太郎の吐息が色っぽくて。
そんな声が自分からも出てしまうのが恥ずかしくて必死に口を噤んだ。
「…っ、手毬…。愛してる。」
そう囁きながら押し入ってくる熱。
締まるような弱い抵抗感だけ伴ってズリズリと中が満たされていく。
心も満たされる。
胸が多幸感で溢れた。
これが、本当に好きな人を受け入れるという事なんだ。
清太郎の言う通りこの体勢では悶える程気持ちの良いところに嵌るわけではないけれど、強い愉悦に身体が支配された。
グッ…グッ…と、一定の間隔で緩く腰が押し付けられる。
「ふっ…ふっ…」
それに合わせて鼻から息が漏れてしまう。
「声…我慢してんのか?」
「は、恥ず…かしっ、いから…。ごめ、なさい…。」
もう恐怖や不安はそれ程無い。
挿入で終わりではないけれど、ここまで繋がれた事にも安堵している。
その筈なのに。
この期に及んでもまだ自身を完全には曝け出せない事に申し訳なく思ってしまう。
「はっ…、何で謝るんだ?恥ずかしいの…可愛いのに。」
「…か、可愛く…なぃ…。」
「可愛いよ…。アナの時もアンタは可愛かった。何でも臆せず受け入れてくれて…、躊躇いなく触れてきて。そういう自然体なのもすげぇ可愛かった。けど…、元気で明るい『手毬ちゃん』が少しずつ女になっていくところが俺はずっと見たかったんだ。…今、ホントにめちゃくちゃ可愛い…。」
そう語る間も腰は押し付けられていて、段々と自分の中の形が変わっていくのを感じ取っていた。
耳を擽る言葉が。
清太郎の想いが嬉しくて。
心と連動するみたいに身体も反応が変わり始める。
「ふ…、ぁっ、あ…」
堪えきれずに飛び出した嬌声。
清太郎は私から腕を離すとベッドに手をつき上体を起こした。
身体に距離が生まれた事が寂しくて。
私は懇願するように手を伸ばしたけれど。
不意に左手が清太郎の右手に捕まった。
「ごめん…やっぱ顔見てしたい…。」
繋いだ手をベッドに押し付けると私の応えを待たないで清太郎は動き出す。
「や、あっ…。」
先程よりも深い角度で奥に届いた。
「あっ、あ、んぁ…」
「はっ、可愛い…。たまんねぇ…。」
一突きされる毎に私は悶え、一突きする度に清太郎の表情は恍惚としていく。
正体が無くなってしまいそうで新たな恐怖が芽生えそうになるけれど。
左手にある温もりが私を正気に戻してくれる。
清太郎の小説を読んで思い出したあの日の事。
あれから今までずっと…。
私が忘れていた間も、寂しくて馬鹿げた事をしていた時も、皆死んでしまって一人になったと思っていた時も、どれだけ離れていてもこの手はずっと繋がれていたのかもしれない。
私は独りじゃなかったのだ。
目を細め愛おしそうにこちらを見つめる清太郎。
愛おしさに胸が潰れそうになる。
そうして本当の意味で自覚してしまった。
今私は世界でたった一人の特別な人に奥深くまで入り込まれているのだと。
もう隠す事はなにもない。
全てこの人にあげたい。
「はっ、はっ…」
呼吸が浅く速くなる。
何かを察した清太郎は動きを強くした。
今まで気にならなかった照明の眩しさを急に感じ始め、そのまま目の前が真っ白に眩んでいく。
瞬間、全身が強ばり息が詰まる。
続けて清太郎のモノをキツく締め上げた。
それはまるで離れたくないと言っているみたいで。
私は全てを清太郎にあげたいと思うのと同じだけ、私も清太郎の全てを欲しいと思っていたんだ。
「っ…ばかっ、急に…きっつ…」
情けない声をあげながら清太郎も少し遅れて果てる。
もう数え切れない程肌を重ねていて。
その度に味わっていた筈なのに。
私の中で脈動している清太郎が愛おしくて愛おしくて仕方がない。
手を伸ばし髪を撫でると。
肘を着いて私に覆い被さり優しいキスをくれた。
もう何度目か分からないけれど、幸せが溢れて溺れそうだ。
肩で息をしながら見つめ合う。
最後まで出来た事にも感動していて。
込み上げる衝動を留めておけなくて。
力一杯清太郎を抱き寄せる。
応えるように強く抱き返してくれた。
「ごめんな。上手くタルパできなかった…。」
「いいの。清太郎のままが良いから。」
「そうか…それなら良かった…。」
まだ落ち着かない。
熱の引かない火照った身体。
ちゅっと音をたてて清太郎が私の耳を舐めてきた。
ビクッと肩が上がる。
背中を撫でる手もまだいやらしくて。
余韻というよりは別の意志を感じる。
ウエストを滑る手。
「んっ…な、なんで?」
「ん?何が?」
とぼけた言い方。
心做しか私の中にいる清太郎が硬度を取り戻している気もする。
敏感になっている皮膚の上を這い回る感覚。
ビクビクと身体が跳ねてしまう。
「今…終わったのに…」
「最後までするんだろ?」
「だから…っ最後まで…したじゃん。」
「ははっ、手毬は入れて出せば最後だと思ってたのか?」
胸を押して顔を覗くと清太郎は愉悦に満ちた表情をしていた。
ひくっと私の中のモノも反応する。
「疲れて眠るまでが最後だろ?」
「ちょっ、ま、待って待って。」
私はもっとゆっくりと噛み締めたかったのだ。
初めて私のままで好きな人と繋がれた事とか。
初めて行為中に達した事とか。
本当に清太郎と想いが通じ合った事とか。
そんな間もなくこのまま二度目の行為に突入したらまたわけが分からなくなってしまう。
慌てて身体を起こし逃げの姿勢をとる。
身を引くとズルっと引き出された膣から精液が零れシーツに落ちた。
取り敢えずベッドから抜け出して何か拭く物を取りに行こう。
そう思い四つ這いの姿勢で清太郎に背を向けた時。
「へ?わっ?」
グイッと両手で腰を引っ張られ抱き寄せられてしまった。
そのまま膣口にまた熱いモノがあてがわれる。
「まってまって!シーツ!拭かなきゃ!」
「いい。後で洗う。」
「言う事聞いて!タルパなるって言ったじゃん!」
「でも俺のままで良いって言っただろ?」
「ぁ…、も、ばかぁ…。」
にゅるにゅると滑る先端。
ダメだと思っているのに擦りあげられる度に中が疼いた。
「だいたいさ…手毬だってアナだった時俺の言う事なんて聞かなかったしな。」
顔は見えないけれど、声で楽しんでいるのが伝わってくる。
いつ、何が清太郎のスイッチを押してしまったのか。
「あーあ、腰落ちてきたな…。あー…ホントに可愛い。…大丈夫だからな?どんなんなっても受け止めるからな?」
気遣うようでいて嬉しそうなのが見え隠れしている。
今ふと、初めてアナとして清太郎とセックスをした時に言っていた言葉を思い出した。
『普段女性性を感じさせないようにしている女がさ。俺の手で俺の前でだけグズグズに感じてたら…滅茶苦茶エロいと思わねぇ?』
言われた当時はあまりピンときていなかったけれど。
つまりこういう事かと今納得してしまった。
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