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傾く方へ。
イルカちゃん。
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ユリがいなくなった。
最初はたまたま見かけないだけかと思ったけれど、店舗の前を通っても見かけないので店長会で仲良くなった、ユリの上司であるみっちーに聞いてみた。
「池田さんなら横浜に異動したよ。」
異動?
驚きで固まった。
そんな私を不思議そうに見てみっちーは続ける。
「凛ちゃん知らなかった?池田さんと仲良かったよね?」
「あー、うん。でも最近は会えてなくて…。」
「急だったからね。新店の副店長だよ。凄い出世。池田さんよくやってくれてたから居なくなって私も寂しいけど…。でも応援しないとね。」
「そう…だね。」
何でも来月にリニューアルオープン予定のビルに入るらしい。
それくらいの情報しか手に入らなかった。
慌ててメッセージを送ってみても既読がつかない。
ブロックされているのだろう。
私のせいで居なくなったんだ。
ユリは優しいから、身を引いてしまったんだ。
私はユリとみーを引き離したかったけれど、ユリに居なくなって欲しいなんて思っていなかった。
家に行けば会えるのかもしれないけれど、私はユリの家を知らない。
みーに聞けば分かるだろうけど…。
そこまでしてユリに会ってなんて言うの?
拒絶しているのが答えだろう。
会ったってもうどうしようも無い。
ユリは今どうしているの?
私をどう思っているのかな?
なんて考えても私はユリの事を何も知らないという結論にしか至らない。
それを今更思い知った。
イルカちゃんを抱っこしながら横になる。
数日前にユリがここに来てくれた時の事を思い出した。
彼女は呆れていたし怒ってもいたけれど、私の話を最後まで聞いてくれて、朝まで一緒にいてくれた。
隣に誰かが居てあんなに熟睡出来たのはいつぶりだろう。
きっと子供の頃?違う、高校から専門に掛けての頃?それ以来か…。
私はママの事を思い出した。
ユリは体型も顔も全く違うのに、何となくママと重なった。
柔らかくて可愛くて。
小さな頃はそんなママの腕の中で眠っていた。
ユリと居るとその時の優しい時間が蘇る。
だから私はユリに執着してしまうんだ。
みーもそうだ。
私の初恋の人である二人目のパパに空気感が似ている。
だから失いたくない。
私は二人に私を見ていて欲しい。
でもそれももう無理なんだと分かっている。
ママと二人目のパパと三人で行った水族館で買ってもらったイルカちゃんに問い掛ける。
「どうしたら良い?」
勿論ぬいぐるみから応えが返ってくる事なんてない。
けれどただのボタンで出来た空虚な目の筈が、何だか私を哀れみ蔑んでいる様に見えて。
「イルカちゃんだけは受け入れてよ…。」
そう零して一人で泣いた。
最初はたまたま見かけないだけかと思ったけれど、店舗の前を通っても見かけないので店長会で仲良くなった、ユリの上司であるみっちーに聞いてみた。
「池田さんなら横浜に異動したよ。」
異動?
驚きで固まった。
そんな私を不思議そうに見てみっちーは続ける。
「凛ちゃん知らなかった?池田さんと仲良かったよね?」
「あー、うん。でも最近は会えてなくて…。」
「急だったからね。新店の副店長だよ。凄い出世。池田さんよくやってくれてたから居なくなって私も寂しいけど…。でも応援しないとね。」
「そう…だね。」
何でも来月にリニューアルオープン予定のビルに入るらしい。
それくらいの情報しか手に入らなかった。
慌ててメッセージを送ってみても既読がつかない。
ブロックされているのだろう。
私のせいで居なくなったんだ。
ユリは優しいから、身を引いてしまったんだ。
私はユリとみーを引き離したかったけれど、ユリに居なくなって欲しいなんて思っていなかった。
家に行けば会えるのかもしれないけれど、私はユリの家を知らない。
みーに聞けば分かるだろうけど…。
そこまでしてユリに会ってなんて言うの?
拒絶しているのが答えだろう。
会ったってもうどうしようも無い。
ユリは今どうしているの?
私をどう思っているのかな?
なんて考えても私はユリの事を何も知らないという結論にしか至らない。
それを今更思い知った。
イルカちゃんを抱っこしながら横になる。
数日前にユリがここに来てくれた時の事を思い出した。
彼女は呆れていたし怒ってもいたけれど、私の話を最後まで聞いてくれて、朝まで一緒にいてくれた。
隣に誰かが居てあんなに熟睡出来たのはいつぶりだろう。
きっと子供の頃?違う、高校から専門に掛けての頃?それ以来か…。
私はママの事を思い出した。
ユリは体型も顔も全く違うのに、何となくママと重なった。
柔らかくて可愛くて。
小さな頃はそんなママの腕の中で眠っていた。
ユリと居るとその時の優しい時間が蘇る。
だから私はユリに執着してしまうんだ。
みーもそうだ。
私の初恋の人である二人目のパパに空気感が似ている。
だから失いたくない。
私は二人に私を見ていて欲しい。
でもそれももう無理なんだと分かっている。
ママと二人目のパパと三人で行った水族館で買ってもらったイルカちゃんに問い掛ける。
「どうしたら良い?」
勿論ぬいぐるみから応えが返ってくる事なんてない。
けれどただのボタンで出来た空虚な目の筈が、何だか私を哀れみ蔑んでいる様に見えて。
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そう零して一人で泣いた。
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