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傾く方へ。
何度目か分からない。
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ぐったりとベットに横たわり自室を眺める。
「もっとこっち来ないと落ちるよ?」
そう言って木内さんが後ろから両手を伸ばしてきた。
そのままグッと引き寄せ抱き締められる。
木内さんに包まれしっくりきている自分に笑ってしまいそうになった。
汗ばんだ素肌同士が吸い付いて密着している。
それでも不思議と不快感はない。
初めて木内さんが家に来て以来、3日と空けずに彼はここへ来ている。
いつの間にか凛さんと壱哉が会っている日限定ではなくなっていた。
そして結局会う度にセックスしている。
私は凛さんが変わってくれなかった事を言い訳に木内さんとの逢瀬を続ける事を選んだ。
凛さんが変わらないなら現状を変える必要もない。
彼女が好き勝手振る舞うなら私だって…。
頭ではこのままで良いわけがないと理解していながらもこの時間を手放せないでいた。
「君のさ…。」
耳のすぐ後ろから声が響く。
木内さんはセックス中以外は私を君と呼んでいる。
「何ですか?」
「隣の人ってどんな奴?」
「隣って…この家の?」
「うん。」
ここは角部屋で隣は片側しか存在しない。
木内さんはそこの住人の事を言っているのだろう。
「まあ、挨拶するくらいなんで…顔と名前くらいはお互い知ってるとは思いますけど。どんな人とかまではちょっと…。大学生位の男の子ですけど。」
「ふーん…。」
まるで興味無さそうな声色で返事をする癖に、何か思い当たる事があるかの様に私を包む腕に力を込めてきた。
「木内さん?」
「ん?」
「どうしたんですか?」
「いや…。どうもしないけど…。次からは俺ん家にしような。」
「え?」
驚いた。
木内さんが凛さん以外に興味を示している様子に。
そして次があると明確に言葉にされた事にも。
「本当にどうしたんですか?」
「俺ん家さ、広いし駅から近いんだ。ボロいし汚い木造アパートだけど。部屋は3戸だけで俺ん家以外誰も入ってないし、1階の大家は歳で最近施設に入ったから、昼間大家の息子が通いで管理人してるけど夜は俺の貸切状態。」
「はぁ…、それが何か?」
「君がエロい声出しても問題ないって事。」
「ちょっ、なんですか急に。」
包んでいる腕で私を反転させると今度は正面から抱き締めてきた。
そして耳たぶに吸い付きながら囁く。
「今日もえっろい声出てたな…なぁ?ユリ…。」
名前で呼ばれた。
またする気なんだ。
「今は声我慢しような?」
木内さんは意地悪そうに笑って私の口に手を添えた。
微かに息苦しい。
「むっぅん…」
抗議の声がくぐもって指の隙間から漏れるも、言葉にはならない。
鼻から大きく酸素を吸い込むと、いつもの匂いも流れ込んできた。
頭がクラクラする。
身体が準備をしてしまう。
「あーあ…、だらしない顔しちゃって…。ホント可愛いなぁ。」
そう言った木内さんの顔も余裕が無さそうで。
私は愛しさで胸を締め付けられながら、もう何度目か分からない木内さんを受け入れた。
「もっとこっち来ないと落ちるよ?」
そう言って木内さんが後ろから両手を伸ばしてきた。
そのままグッと引き寄せ抱き締められる。
木内さんに包まれしっくりきている自分に笑ってしまいそうになった。
汗ばんだ素肌同士が吸い付いて密着している。
それでも不思議と不快感はない。
初めて木内さんが家に来て以来、3日と空けずに彼はここへ来ている。
いつの間にか凛さんと壱哉が会っている日限定ではなくなっていた。
そして結局会う度にセックスしている。
私は凛さんが変わってくれなかった事を言い訳に木内さんとの逢瀬を続ける事を選んだ。
凛さんが変わらないなら現状を変える必要もない。
彼女が好き勝手振る舞うなら私だって…。
頭ではこのままで良いわけがないと理解していながらもこの時間を手放せないでいた。
「君のさ…。」
耳のすぐ後ろから声が響く。
木内さんはセックス中以外は私を君と呼んでいる。
「何ですか?」
「隣の人ってどんな奴?」
「隣って…この家の?」
「うん。」
ここは角部屋で隣は片側しか存在しない。
木内さんはそこの住人の事を言っているのだろう。
「まあ、挨拶するくらいなんで…顔と名前くらいはお互い知ってるとは思いますけど。どんな人とかまではちょっと…。大学生位の男の子ですけど。」
「ふーん…。」
まるで興味無さそうな声色で返事をする癖に、何か思い当たる事があるかの様に私を包む腕に力を込めてきた。
「木内さん?」
「ん?」
「どうしたんですか?」
「いや…。どうもしないけど…。次からは俺ん家にしような。」
「え?」
驚いた。
木内さんが凛さん以外に興味を示している様子に。
そして次があると明確に言葉にされた事にも。
「本当にどうしたんですか?」
「俺ん家さ、広いし駅から近いんだ。ボロいし汚い木造アパートだけど。部屋は3戸だけで俺ん家以外誰も入ってないし、1階の大家は歳で最近施設に入ったから、昼間大家の息子が通いで管理人してるけど夜は俺の貸切状態。」
「はぁ…、それが何か?」
「君がエロい声出しても問題ないって事。」
「ちょっ、なんですか急に。」
包んでいる腕で私を反転させると今度は正面から抱き締めてきた。
そして耳たぶに吸い付きながら囁く。
「今日もえっろい声出てたな…なぁ?ユリ…。」
名前で呼ばれた。
またする気なんだ。
「今は声我慢しような?」
木内さんは意地悪そうに笑って私の口に手を添えた。
微かに息苦しい。
「むっぅん…」
抗議の声がくぐもって指の隙間から漏れるも、言葉にはならない。
鼻から大きく酸素を吸い込むと、いつもの匂いも流れ込んできた。
頭がクラクラする。
身体が準備をしてしまう。
「あーあ…、だらしない顔しちゃって…。ホント可愛いなぁ。」
そう言った木内さんの顔も余裕が無さそうで。
私は愛しさで胸を締め付けられながら、もう何度目か分からない木内さんを受け入れた。
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