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傾く方へ。
着信。
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ヘアーミストを叩き付けてから1週間。
その間目まぐるしく変わる状況に着いて行くのがやっとだった。
壱哉の心変わりから始まり、木内さんとの出会い。
だけど1番忙しいのは私の気持ちだ。
壱哉を想って悲しくなったり、怒りが湧いたり。
そうかと思えば、木内さんに振り回されて急に全てどうでも良くなってみたり。
公園で話して以来壱哉から連絡はない。
来月までの期限付きとはいえ、一応お付き合いは継続されている筈なのに。
こんなに放置されたのは付き合って以来初めての事だ。
私に後ろめたさを感じて気まずいのだろうか。
それとも、もう全く興味を無くし連絡をする発想さえなくなってしまったのか。
どちらにしろ人として大切にされていない事は確かで。
嫌がらせだけが目的で彼女の座にしがみついているのもそろそろアホらしくなってきた。
どうせ壱哉はもう私の元へは戻らないだろうし、戻ってきた所で私は壱哉を許せるわけも無い。
割り切るにはまだ時間が足りないけれど、冷静になるには十分だ。
全部終わらせてスッキリしたい方へ気持ちが傾いてきている。
自室のベッドに寝転び天井を見上げる。
少し開けている窓から吹き込む風に揺れる照明の紐を眺める。
来月と言わず早いところこちらから別れを告げよう。
そう思い手探りで枕元のスマホに手を伸ばす。
仕事中にサイレントモードにしていたままのスマホが新着メッセージを知らせ静かに光っていた。
見慣れた名前。
木内さんだ。
壱哉とは対照的で、あれ以来木内さんからはマメに連絡が来ている。
殆どが壱哉と凛さんに関する内容だけれど、極稀に『おはよー』や『今日出勤?』等の、お前は一体私の何なんだ?とツッコミたくなる様な内容もあった。
木内さんもきっと寂しいのだろう。
そんな他愛の無いメッセージが届く度どこか嬉しいと思ってしまう自分がいて、彼のやり場のない寂しさに共感出来てしまった。
虚しい傷の舐め合いだって必要な時もある。
それに彼は私と違い今回だけでなく、凛さんといる長い間常にこの寂しさを感じていたのだから、初めてできた同士に浮かれているのも仕方がないのだと納得してしまう。
だからこそ悔やまれる。
木内さんと身体を重ねてしまった事が。
不思議なもので、一度でも寝ると情が芽生えてしまう。
それは付き合っていようがいまいが、もっと言えば元々の好意があろうと無かろうと。
生理的に受け付けない訳でない限り寝るくらいは容易い事だ。
それなのにその低いハードルを越えてしまえば途端に愛着が湧いてしまうのだから恐ろしい。
この先きっと、私はもう木内さんを拒絶する事は出来ないだろう。
10分ほど前に既に届いていたメッセージを開く。
『起きてる?』
『寝れねー』と続けて二通来ていた。
今の時刻は深夜0時41分。
返信に迷う。
この10分の間に眠ってしまっているかもしれない。
短い文面を何度も読み返しながら悩んでいると、シュポっと新たなメッセージが。
『既読付いたな』
『無視か』
思わず笑ってしまう。
私からメッセージが返って来ない間、わざわざ既読が付くのかをこまめに確認していたのか。
不覚にも可愛いなどと思ってしまった。
それを隠して敢えて素っ気なく返す。
『なんですか?』
即座に返ってくるメッセージ。
短い言葉でラリーが続く。
『暇』
『はー、そうですか』
『通話』
『は?』
『通話していい?』
「え…。」
シュポシュポとリズミカルなやり取り。
そこで唐突に発せられた『通話』の文字に対し、リアルで声が出てしまった。
通話?
木内さんと?
今?
大いに戸惑う。
それでも嫌だとは思わなかった。
寧ろ胸が鳴っている。
あの日覚えさせられた木内さんの声が脳内に蘇る。
堪らず漏らした吐息。
悪戯っぽく囁く「可愛い」。
悪態を吐く私を鼻で笑った時の息遣い。
見た目に似合わず、低く落ち着きのあるそれで私の胸を苦しめる。
私、木内さんの声も好きだな…。
その声が今から聞けるのか…。
『いいですよ』
メッセージを返した。
そして間を開けずに着信する。
画面には『木内 稔』と表示されていた。
その間目まぐるしく変わる状況に着いて行くのがやっとだった。
壱哉の心変わりから始まり、木内さんとの出会い。
だけど1番忙しいのは私の気持ちだ。
壱哉を想って悲しくなったり、怒りが湧いたり。
そうかと思えば、木内さんに振り回されて急に全てどうでも良くなってみたり。
公園で話して以来壱哉から連絡はない。
来月までの期限付きとはいえ、一応お付き合いは継続されている筈なのに。
こんなに放置されたのは付き合って以来初めての事だ。
私に後ろめたさを感じて気まずいのだろうか。
それとも、もう全く興味を無くし連絡をする発想さえなくなってしまったのか。
どちらにしろ人として大切にされていない事は確かで。
嫌がらせだけが目的で彼女の座にしがみついているのもそろそろアホらしくなってきた。
どうせ壱哉はもう私の元へは戻らないだろうし、戻ってきた所で私は壱哉を許せるわけも無い。
割り切るにはまだ時間が足りないけれど、冷静になるには十分だ。
全部終わらせてスッキリしたい方へ気持ちが傾いてきている。
自室のベッドに寝転び天井を見上げる。
少し開けている窓から吹き込む風に揺れる照明の紐を眺める。
来月と言わず早いところこちらから別れを告げよう。
そう思い手探りで枕元のスマホに手を伸ばす。
仕事中にサイレントモードにしていたままのスマホが新着メッセージを知らせ静かに光っていた。
見慣れた名前。
木内さんだ。
壱哉とは対照的で、あれ以来木内さんからはマメに連絡が来ている。
殆どが壱哉と凛さんに関する内容だけれど、極稀に『おはよー』や『今日出勤?』等の、お前は一体私の何なんだ?とツッコミたくなる様な内容もあった。
木内さんもきっと寂しいのだろう。
そんな他愛の無いメッセージが届く度どこか嬉しいと思ってしまう自分がいて、彼のやり場のない寂しさに共感出来てしまった。
虚しい傷の舐め合いだって必要な時もある。
それに彼は私と違い今回だけでなく、凛さんといる長い間常にこの寂しさを感じていたのだから、初めてできた同士に浮かれているのも仕方がないのだと納得してしまう。
だからこそ悔やまれる。
木内さんと身体を重ねてしまった事が。
不思議なもので、一度でも寝ると情が芽生えてしまう。
それは付き合っていようがいまいが、もっと言えば元々の好意があろうと無かろうと。
生理的に受け付けない訳でない限り寝るくらいは容易い事だ。
それなのにその低いハードルを越えてしまえば途端に愛着が湧いてしまうのだから恐ろしい。
この先きっと、私はもう木内さんを拒絶する事は出来ないだろう。
10分ほど前に既に届いていたメッセージを開く。
『起きてる?』
『寝れねー』と続けて二通来ていた。
今の時刻は深夜0時41分。
返信に迷う。
この10分の間に眠ってしまっているかもしれない。
短い文面を何度も読み返しながら悩んでいると、シュポっと新たなメッセージが。
『既読付いたな』
『無視か』
思わず笑ってしまう。
私からメッセージが返って来ない間、わざわざ既読が付くのかをこまめに確認していたのか。
不覚にも可愛いなどと思ってしまった。
それを隠して敢えて素っ気なく返す。
『なんですか?』
即座に返ってくるメッセージ。
短い言葉でラリーが続く。
『暇』
『はー、そうですか』
『通話』
『は?』
『通話していい?』
「え…。」
シュポシュポとリズミカルなやり取り。
そこで唐突に発せられた『通話』の文字に対し、リアルで声が出てしまった。
通話?
木内さんと?
今?
大いに戸惑う。
それでも嫌だとは思わなかった。
寧ろ胸が鳴っている。
あの日覚えさせられた木内さんの声が脳内に蘇る。
堪らず漏らした吐息。
悪戯っぽく囁く「可愛い」。
悪態を吐く私を鼻で笑った時の息遣い。
見た目に似合わず、低く落ち着きのあるそれで私の胸を苦しめる。
私、木内さんの声も好きだな…。
その声が今から聞けるのか…。
『いいですよ』
メッセージを返した。
そして間を開けずに着信する。
画面には『木内 稔』と表示されていた。
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