傾く方へ

seitennosei

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傾く方へ。

言い訳。

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暫くたって落ち着く頃、木内さんは私を抱きかかえ立ち上がった。
私は無抵抗に受け入れる。
そしてそのまま身体を拭く事も髪を乾かす事も許されずにベッドまで運ばれた。
「今の内に謝っておく…。ごめん。」
「…え?」
ボタボタとシーツに垂れる無数の水滴。
その上にうつ伏せに横たえられ、全身がヒヤリと冷える。
腕で上体を起こしながら木内さんの方へ振り返ると、丁度入口に先端が宛てがわれる所だった。
こちらの視線に気付き顔を上げニヤリと口元を歪めると、木内さんは「そのままこっち見てて。」と囁きながら腰を進めてきた。
身体全体をベッドに押さえ付けられ、ピタリと重なる様にのしかかられる。
首だけで振り向いている私の顎を手で優しく固定すると、また食べるみたいな濃い口付けをしてきた。
何も考えられなくなってしまう。
ゆっくりと押し上げられ堪らず唸る様な声が漏れるも、それごと木内さんに飲み込まれる。
後ろから両腕を使って抱きしめてきた。
どうしてそんなに愛おしそうに扱うのか。
酷い始まり方だったのに。
全然好きじゃないのに。
木内さんに優しくされると胸が苦しくなった。
ただ気持ち良い方に流されている私なんて適当にすれば良いのに。
身体に引き摺られて心まで勘違いしそうになる。
「やだっ…。」
私は首を振って長いキスから逃げた。
木内さんは鼻で笑うとまた私のうなじに吸い付く。
最後に残った頭だけは必死に否定するけど、気付けば壱哉の事も凛さんの事も考えなくなっていた。
木内さんが最低な人だったから、私は嫌がるふりが続けられる。
まだ彼氏に捨てられて、よく知らない男に強引に襲われた可哀想な女で居られる。
今はそうやって自分に言い訳をしておきながら、私は与えられる快楽を甘受していた。
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