傾く方へ

seitennosei

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傾く方へ。

混乱した頭。

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頭上から降り注ぐシャワー。
少し熱めのお湯で自身を戒める。
色々考えなければならない事はあるのだけれど、呆然としてしまい思考が纏まらない。
「凄かった…。」
思わず独りごちてしまう程にさっきのアレは凄かった。
木内さんは一体何者なのか?
だけど、木内さんが特別ご立派なモノを持っている感じではなかった。
テクニックも普通…と言うか、テクニックもクソもない程性急過ぎて判断できる材料が無い。
そうなるとやっぱり一番の原因は木内さんの匂いだろう。
あれを嗅いでから私は可笑しくなった。
もしや、これが俗に言う相性?
遺伝子レベルで相性の良い人物は体臭に惹かれ合うとよく聞く。
じゃあ、木内さんと私がこれに該当すると言う事なのか?
だとしたら惹かれ合うなんて生易しいものではなかった。
嗅いで嗅がれた途端。
濡れて、勃って、入れて、出してって…。
まるで動物だった。
一度達してからの記憶があやふやだけれど、随分と乱れていたのは覚えている。
木内さんも普通じゃなかったと思う。
いや、通常の彼のセックスの様子なんて知らないので、今まで自分が出会ってきた男性と比べてになるけれど…。
やっぱりさっきの木内さんはちょっと異常だったと思う。
おぼろげだけどどさくさに紛れ首元を噛まれた気がする…。
ふと気になって鏡の曇を拭った。
クリアになった所に私の身体を写り込ませると。
「…何これ…。」
首から鎖骨にかけて夥しい数のキスマークがついているではないか。
そして二箇所ほど歯型の様なアザまで出来ている。
「あの野郎…。」
彼女でもない女を無理矢理押し倒しただけでなく、こんなマーキングまで施すなんて。
何処まで無責任なんだ。
本能に忠実なのも大概にして欲しい。
明日も仕事なのに。
ストールで隠れるかな?
カタッ
微かな物音にハッとする。
同時に漂っていた濃い湯気がビュッと後ろに流れて行き、入れ違いで冷気が身体を包んだ。
胸を隠して振り返る。
全裸の木内さんが浴室に入ってきて扉を閉めるところだった。
「ちょっと!何なんですか!?」
そう叫んだけれど、返答を待つよりも先に理解してしまった。
また喰われると。
木内さんのアレが元気に上を向いている。
さらに、もう既にゴムまで装着している用意周到さ。
まさか。
「またやる気ですか?ここで?」
「…。」
彼は何も言わない。
ただ真っ直ぐこちらを見て進んで来る。
細いのに薄らと腹筋の浮いた身体。
女性の様なキメの細かい白い肌に、濃くはないけれど黒々としたアンダーヘアが映える。
そのコントラストが強烈で、やけに生々しく感じた。
男性の荒々しさはなく、少年の様な無垢さもない。
そして女性のそれとは違う色気があって、この人は本当に人間なんだろうかと疑う程に浮世離れした雰囲気があった。
私は直視していられず顔を逸らして後退る。
「もう止めましょ?こんな事。さっきの事も忘れましょう?」
無言の木内さんは、強く私の肩を掴むと身体を反転させ壁に押さえ付けてきた。
浴室の壁に胸が潰され苦しい。
熱いシャワーで火照った身体に壁の水滴が冷たく滴った。
「痛っ…、木内さん!」
また無理矢理自由を奪われ、うなじを舐められる。
抗えない匂い。
シャワーのお湯とは違う物で自分の中心が潤うのを感じた。
粘膜が這う感触と荒い息がうなじに掛かり、身体の芯がまた疼き出す。
「やめっろ…。クズぅ…。」
フッと鼻で笑われた。
突き上げる様な動きで、後ろから擦り付けられる。
固くて熱いモノが、私の入口や手前の突起の上を無遠慮に滑り回った。
キュンと中が動く。
ダメなのに入れて欲しい。
「エロいなー、ほんと。お尻突き出して誘ってんの?」
「突き出してない!誘ってない!」
「はー、可愛い…。」
まるで合図の様に、木内さんは手を腰に回してきた。
挿れられると構えるよりも先に、やっと挿入ってくると期待に胸が鳴る自分に失望する。
くちくちと遊んでいた先端が、強い意志を持ったみたいに押し入ってきた。
「やぁあっ。」
「はっ…。いきなり…締めすぎ。」
木内さんが珍しく苦しそうにしている。
意思に反して締め付けてしまうのだからどうしようもない。
ゆっくりと進み、奥まで到達した所で一度止まると、逸るのを落ち着ける様に馴染むのを待つ。
木内さんが身体を密着させてきた。
壁に着いている私の手に手を重ね乗せ、もう片腕でウエストを包んで引き寄せる。
そしてうなじに吸い付きながらため息混じりに囁く。
「ユリ…。」
ぎゅっと胸が苦しくなった。
切なそうに名前を呼ばれ、益々木内さんへの感情が分からなくなっていく。
少しずつ、全身を揺する様に下から突き上げる動き。
「ユリの中、ほんと良い…。…はー、俺だけ?」
「わかんなっ…っ。」
抗えない快感の中何とか意識を保つ様、フルフルと首を横に振り続ける。
「きうちさんの匂い…かぐとっ、ん。あたまバカになる…。」
「あー…俺も…。なんも分かんなくなる…。」
やっぱり、2人ともお互いの匂いにやられているんだ。
だってこんなの普通じゃない。
好きじゃないのに振り払えない。
そして快感で思考が阻害され、身体がこの人を特別なのだと錯覚してしまう。
後ろから零れ聞こえる吐息に喉が詰まる程切なくなる。
こんな事絶対良くない事なのにどうしても止まれない。
不意に爪先立ちで突っ張っていた足が滑った。
「ああぁっ。」
弾みで奥を強く押され急に強い波がくる。
あまりの刺激に膝がわなわなと震え、自力で立っていられない。
お腹を支えてくれていた木内さんの手に力がこもり、子宮のあたりを外からも刺激され中が痙攣しだした。
「んんっ。…っは…ぁ。」
「っ、ユリっ…。」
二人でその場に崩れ落ちる。
座り込む時も木内さんは抱き締めて支えてくれていた。
打ち付けるシャワーの刺激でゾクゾクと身が落ち着かない。
呼吸で互いの肌が擦れるだけでも過敏に反応してしまう。
また私だけ先に達してしまった。
きっとこれでは終わらない。
そう続く事を恐怖に思いつつも何処かで期待している自分もいて。
混乱した頭の中でいよいよ自分の気持ちが完全に分からなくなった。
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