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漫画喫茶。
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医薬品メーカーの営業として就職した。
お客さんから怒られたり、成績やら新規開拓やら、気にしないといけない事が沢山あって毎日大変ではあるけど、その分色々と忘れられて気が紛れた。
大学の終わり頃から、もう無理矢理オネーサンを忘れるのは止めようと決め、他の女の人を見るのも止めた。
いつか自然に好きになれる人ができればその時にって思い、肩の力を抜いて生きる様にしたんだ。
入社して数ヶ月、「そろそろ落ち着いたろ?飲むぞ!」と竹田兄から招集がかかった。
竹田と竹田兄と木内さん。
いつものメンバーだ。
中学生の頃は、オネーサンの事もあって木内さんの顔を見るのが本当に嫌だった。
それでも何度も顔を合わせていると、木内さんは会う度彼女が変わり、しかもその度に『最初の彼女は良かった。』とか言っていて、この人は何処までも俺と同じだなって思って憎めなくなった。
今では勝手に同志のように思っている。
木内さんはまさか自分の最初の彼女と、俺の忘れられない人とが、同一人物とは露ほども思っていないだろうけど…。
ある程度飲んで二次会はカラオケか?なんて言いながら4人で繁華街を歩いていると、少し離れた所を歩く一人の女性に目がいった。
めちゃくちゃ背が高いとか、絶世の美女とかじゃないのに、何故か目がとまって離せない。
それはオネーサンだった。
10年以上会っていないし、こんな人混みの中なのに、何故か直ぐに分かった。
大学からこっちの方に出てきているらしいとは聞いていたけど、どうしてこんな時間にこんな場所に居るんだろう?
彼氏と一緒かもしれない。
そう思って暫く周辺を窺うもどうも様子が可笑しい。
連れはなく一人の様だけど、格好が真面目なオネーサンらしくない気がして。
そして疲れていそうで元気もなくて…。
彼氏と何かあったのだろうか。
いつの間にか足を止めていた俺に対し、ずっと先を行っていた3人が振り返る。
「おい、どうした?」
「あ、はい。」
フラフラと漂う様にゆっくりと進むオネーサン。
もう正直カラオケ所ではない。
去年後悔した時の気持ちが蘇る。
どうして俺は何もしなかったんだろうって。
あんな思いは二度としたくない。
今オネーサンに会えたのには絶対に何か意味がある。
俺はオネーサンに声を掛ける決意をした。
とりあえず3人の元へ小走りで向かう。
「すみません。腹痛くて…。俺今日は電車無くなる前に帰りますね。」
「おい、大丈夫か?一人で帰れるか?」
相変わらず優しい竹田兄。
吐いた日に自転車で送ってくれた背中を思い出す。
「大丈夫です。3人は楽しんで下さい。竹田。カラオケならこの前お前がアプリ登録してたとこが安いよ。駅挟んで反対のあそこ。」
「おー、確かに金曜夜も使えるクーポンあるわ。具合悪ぃのにサンキューな。」
気遣うフリで3人を成る可く遠くへ行かせる。
特に木内さんには今のオネーサンを絶対に見せたくない。
ごめんなさい、木内さん。
抜け駆けします。
「じゃあ、また。」
そう適当に挨拶し、オネーサンが歩いていった方へ向かい全力で走る。
幸い直ぐに見付ける事が出来た。
丁度ビルの中に入っていく後ろ姿。
追い掛けて俺も入るとオネーサンの姿は既になかった。
目の前にあるエレベーターの表示を見る。
ランプは今まさに3階で止まったところだった。
壁にあるテナント案内。
3階は漫画喫茶だ。
俺はエレベーターのボタンを押した。
お客さんから怒られたり、成績やら新規開拓やら、気にしないといけない事が沢山あって毎日大変ではあるけど、その分色々と忘れられて気が紛れた。
大学の終わり頃から、もう無理矢理オネーサンを忘れるのは止めようと決め、他の女の人を見るのも止めた。
いつか自然に好きになれる人ができればその時にって思い、肩の力を抜いて生きる様にしたんだ。
入社して数ヶ月、「そろそろ落ち着いたろ?飲むぞ!」と竹田兄から招集がかかった。
竹田と竹田兄と木内さん。
いつものメンバーだ。
中学生の頃は、オネーサンの事もあって木内さんの顔を見るのが本当に嫌だった。
それでも何度も顔を合わせていると、木内さんは会う度彼女が変わり、しかもその度に『最初の彼女は良かった。』とか言っていて、この人は何処までも俺と同じだなって思って憎めなくなった。
今では勝手に同志のように思っている。
木内さんはまさか自分の最初の彼女と、俺の忘れられない人とが、同一人物とは露ほども思っていないだろうけど…。
ある程度飲んで二次会はカラオケか?なんて言いながら4人で繁華街を歩いていると、少し離れた所を歩く一人の女性に目がいった。
めちゃくちゃ背が高いとか、絶世の美女とかじゃないのに、何故か目がとまって離せない。
それはオネーサンだった。
10年以上会っていないし、こんな人混みの中なのに、何故か直ぐに分かった。
大学からこっちの方に出てきているらしいとは聞いていたけど、どうしてこんな時間にこんな場所に居るんだろう?
彼氏と一緒かもしれない。
そう思って暫く周辺を窺うもどうも様子が可笑しい。
連れはなく一人の様だけど、格好が真面目なオネーサンらしくない気がして。
そして疲れていそうで元気もなくて…。
彼氏と何かあったのだろうか。
いつの間にか足を止めていた俺に対し、ずっと先を行っていた3人が振り返る。
「おい、どうした?」
「あ、はい。」
フラフラと漂う様にゆっくりと進むオネーサン。
もう正直カラオケ所ではない。
去年後悔した時の気持ちが蘇る。
どうして俺は何もしなかったんだろうって。
あんな思いは二度としたくない。
今オネーサンに会えたのには絶対に何か意味がある。
俺はオネーサンに声を掛ける決意をした。
とりあえず3人の元へ小走りで向かう。
「すみません。腹痛くて…。俺今日は電車無くなる前に帰りますね。」
「おい、大丈夫か?一人で帰れるか?」
相変わらず優しい竹田兄。
吐いた日に自転車で送ってくれた背中を思い出す。
「大丈夫です。3人は楽しんで下さい。竹田。カラオケならこの前お前がアプリ登録してたとこが安いよ。駅挟んで反対のあそこ。」
「おー、確かに金曜夜も使えるクーポンあるわ。具合悪ぃのにサンキューな。」
気遣うフリで3人を成る可く遠くへ行かせる。
特に木内さんには今のオネーサンを絶対に見せたくない。
ごめんなさい、木内さん。
抜け駆けします。
「じゃあ、また。」
そう適当に挨拶し、オネーサンが歩いていった方へ向かい全力で走る。
幸い直ぐに見付ける事が出来た。
丁度ビルの中に入っていく後ろ姿。
追い掛けて俺も入るとオネーサンの姿は既になかった。
目の前にあるエレベーターの表示を見る。
ランプは今まさに3階で止まったところだった。
壁にあるテナント案内。
3階は漫画喫茶だ。
俺はエレベーターのボタンを押した。
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